ドル円、高市円安にブレーキ 152円台 米国経済不安でリスク回避も
ドル円相場は152円台まで円高が進行。米国の労働市場悪化が材料視された。為替介入への警戒や米政府閉鎖への懸念が円高を進みやすくしている。
ドル円相場で円安にブレーキがかかった。日本時間午前の取引では1ドル=152円台をつける場面もあり、丸一日で約1.5円の円高が進んだ。アメリカで6日に発表された民間経済指標で労働市場の弱さが示され、米連邦準備制度理事会(FRB)が12月に追加利下げに踏み切るとの見通しが強まったためだ。6日の金融市場では株価も大きく下落しており、リスク回避姿勢の強まりが円買いにつながったとみることもできる。一方、日本経済をめぐっても、日本銀行の12月利上げへの期待が消えていないことが円高要因といえ、日本政府による為替介入も警戒されている。さらに米国経済をめぐっては、米国で史上最長の期間となった政府機関一部閉鎖の悪影響への不安も強まっており、ドル円相場は円高が進みやすい状況にあるといえそうだ。
ドル円相場は一時152.82円 丸一日で1.53円の円高進行
ドル円相場(USD/JPY)は日本時間7日午前12時35分段階で1ドル=153.09円で取引されている。ブルームバーグによると、午前8時台には152.82円をつけ、6日未明に記録した154.36円から1.53円の円高が進んだことになる。ドル円相場では、高市早苗政権の発足を材料視する「高市トレード」で、10月1日の146.59円から11月4日の154.48円まで大きく円安が進んだが、勢いにブレーキがかかった形だ。
米国の10月の人員削減は1年前の2.75倍に FRBの利下げ見通しが拡大
円高進行のきっかけは米国の労働市場に対する不安が示されたことだ。米国の人事サービス会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスが6日に発表した調査によると、米国企業は10月に15万3074人の人員削減を発表しており、1年前の5万5597人から2.75倍に跳ね上がった。9月の5万4064人からも2.83倍になっており、「解雇された人員は次の仕事をすぐに見つけることが難しくなっている」という。
労働市場の弱さはFRBの利下げへの期待を強める円高要因だ。ブルームバーグによると、6日の金融市場で見込まれる12月9、10日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の政策金利の水準は3.696%で、利下げ確率は72%となった。6日の金融市場ではこのほか、S&P500種株価指数(SPX)が前日比1.12%安となっており、米国経済の見通しに対する不安の拡大が投資家のリスク回避姿勢を強め、ドルが売られたとみることもできそうだ。
日銀の12月利上げ確率は48%で横ばい 日米の金利差は再び縮小
一方、ドル円相場での円高には、日銀の12月利上げへの期待消えていないことも影響している。ブルームバーグによると、日銀が12月18、19日に開く金融政策決定会合後の政策金利の水準は、7日午前12時35分段階の金融市場では0.599%と見込まれている。利上げ確率は48%程度で、10月下旬からの横ばい傾向が続く。日銀の植田和男総裁は10月30日の決定会合後の記者会見で、2026年春闘に向けた労使の動きを確認したいとしつつ、労使協議の「初動のモーメンタム」次第では利上げを決める材料になりえるとの立場をとっている。
こうした中、ドル円相場の背景となる日米の長期金利(10年物国債利回り)の差には再び縮小の動きが出始めた。ブルームバーグによると、日米金利差は6日段階で2.404%ポイントとなり、10月28日(2.339%ポイント)以来の小ささとなった。米国の長期金利が11月5日終値の4.160%で頭打ちとなり、日本の長期金利が10月28日の1.638%を底として改めて上昇に転じていることが影響している。
ドル円相場をめぐっては、日本政府による為替介入への警戒もある。片山さつき財務相は4日、高市トレードでの円安進行を念頭に「一方的で急激な動きがみられている」とした。片山氏は10月31日にも「為替相場の過度な変動や無秩序な動きについて高い緊張感をもって見極めている」と述べている。日米長期金利差の縮小傾向が維持されているにも関わらず円安が急進する事態が起これば、日本政府が円買い介入で相場を抑え込むシナリオの現実味も増しそうだ。
米国の政府機関閉鎖は史上最長記録に到達 リスク回避姿勢の強まりが円高を誘発も
さらに、米国経済をめぐっては政府機関一部閉鎖の悪影響への関心も強まってきた。10月1日から始まった政府閉鎖は11月7日で38日目となり、ドナルド・トランプ政権の1期目の2018年12月から2019年1月にかけて記録した35日間を超え、史上最長記録となっている。米運輸省は5日、航空管制官らの人員不足を背景として米国内40の主要空港で運航能力を10%削減すると表明した。低所得者向けの経済支援策や中小企業向けの公的融資でも混乱が続いているといい、米商工会議所のスザンヌ・クラーク会頭は6日、議会あての書簡で「連邦政府が閉鎖されている一日一日が壊滅的な出来事が起きる可能性を高めている」とし、予算成立に向けた早期の合意を訴えている。
米国経済の見通しの不透明感は政府閉鎖で重要経済指標が発表されていないことでも高まっている。今後も金融市場でのリスク回避姿勢が強まれば、ドル円相場で円安材料への反応が大きくなる展開が想定されそうだ。
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