円高圧力再燃 FRB議長の後任早期発表か PCE物価で加速の見通しも
ドル円相場は144円台。FRB議長の後任人事をめぐる報道が円高要因となった。6月PEC物価とトランプ氏の動向が円高に拍車をかける可能性がある。

ドル円相場で円高圧力が再燃している。ドル円相場は日本時間27日の取引で1ドル=144円台半ばで推移。前日には約1週間ぶりの143円台をつける場面もあり、円高方向の値動きとなっている。円高進行はアメリカのドナルド・トランプ大統領が米連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長の指名を通例よりも早く行うと報じられたことがきっかけ。FRBに利下げを求めているトランプ氏が利下げに積極的な人物を起用するとの見方が長期金利(10年物国債利回り)の低下を招き、日米の長期金利差が縮小している。米国の金利の先安観は、円以外の通貨もドルに対して強くなる効果を生んだ。一方、27日朝に発表された日本の物価関連統計は物価上昇の鈍化を意識させる内容で、円安要因といえる。ただ、FRB議長人事をめぐる思惑は4月に139円台まで円高が進む原因となっただけに、米国で27日に発表される5月の個人消費支出(PCE)物価指数に対するドル円相場の反応も、円高方向に傾きやすくなる可能性がありそうだ。
ドル円相場は一時、143.75円 1日足らずで2円超の円高
ドル円相場(USD/JPY)は日本時間26日午後5時30分ごろに1ドル=143.75円をつけた。ブルームバーグによると、25日夜には145.95円をつけていたことを踏まえれば、1日足らずで2円超の円高が進んだことになる。ドル円相場はその後は円安方向に戻し、27日午前には144.81円をつける場面もあったが、やはり円高水準での取引だといえそうだ。ドル円相場は中東情勢緊迫を背景に23日に148.03円まで円安が進んでいたが、イスラエルとイランの停戦合意が発表され、「有事のドル買い」は続かなかった。

トランプ氏は次期FRB議長を夏にも指名か WSJ報道
円高の背景となったのは2026年5月に任期が切れるFRBのジェローム・パウエル議長の後任をめぐる観測だ。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は日本時間26日午前8時に、「トランプ氏が次期議長を早期指名することを検討している」と報道。トランプ氏が早ければこの夏にも後任指名を公表することがありえるとした。FRBの次期議長の指名は任期終了の3、4か月前に行われるのが通例で、このタイミングでの人事発表は異例の措置だとしている。トランプ氏は25日、FRB議長の候補者は「3、4人いる」と述べ、選考が進んでいる様子を感じさせた。
トランプ氏はこれまで、物価上昇率の低下などを理由に、パウエル氏に繰り返し利下げを要求。しかしパウエルが率いるFRBはトランプ氏が打ち出した高関税などで物価上昇の見通しが不透明になっていることを踏まえ、2025年に入ってから一貫して利下げを見送ってきた。6月17、18日の連邦公開市場委員会(FOMC)まで4会合連続で政策金利を維持している。
アメリカの長期金利は2か月ぶり低水準に 日米金利差は4月上旬以来の小ささ
トランプ氏がFRB議長の後任として利下げに前向きな人物を早期に発表した場合、米国の金利水準が低下していくとの見通しを強める可能性がある。このため米国の金融市場では長期金利が低下。ブルームバーグによると、26日のニューヨーク債券市場での長期金利の終値は4.234%で、5月1日(4.220%)以来、約2か月ぶりの低水準となった。この結果、ドル円相場の背景となる日米の長期金利差は26日終値段階で2.827%ポイントとなり、4月4日(2.806%ポイント)以来の小ささとなった。


東京都区部の6月CPIは予想を下回る伸び率 円安要因に
一方、日本経済をめぐっては円安要因も提供された。27日朝に発表された6月の東京都区部の消費者物価指数(CPI)の中旬速報値は、総合指数と、生鮮食品を除いたコア指数、生鮮食品とエネルギーを除いたコアコア指数の伸び率がいずれも前年同月比3.1%となり、それぞれ前月(5月)の実績から低下。東京都による水道料金の基本料金無償化が影響した。発表された結果はブルームバーグがまとめた市場予想も下回った。

日本銀行の植田和男総裁は17日の金融政策決定会合後の記者会見で物価や経済の見通しについて、米国の高関税政策で日本企業の業績が悪化する可能性を踏まえて「下振れリスクの方が大きい」と説明し、利上げに慎重姿勢を示していた。今回の東京都区部の6月CPIはこうした日銀の分析を裏付ける結果とみることもでき、ドル円相場が円安に戻す一因となった。
トランプ氏のFRB批判は過熱の可能性も 6月PCE物価で円高加速か
ただ、FRB議長の後任をめぐる混乱は4月にも急激な円高を招いており、今後もトランプ氏の言動がFX市場での注目を集めそうだ。トランプ氏が4月17日にパウエル氏を「いつでも遅すぎる」と批判し、トランプ氏がパウエル氏の解任を検討しているとの観測が広がった際は、22日にドル円相場で1ドル=139.89円まで円高が進んだ。
4月のケースではドル安に、米国債価格の下落による長期金利上昇と株安が重なる「米国売り」が起き、トランプ氏はパウエル氏への批判をトーンダウンさせた。これに対して足元の金融市場ではドル安が進みながらも、米国債や株式は買われており、トランプ氏のFRB批判が熱を帯びる可能性もある。
このため27日午前8時30分(日本時間午後9時30分)に発表される5月のPCE物価指数は円高の反応を生みやすい状況だともいえそうだ。発表される物価上昇率が市場予想の範囲内に収まり、過熱感が見られなかった場合には、トランプ氏のSNSでの情報発信などでFRBの利下げに対する期待が増幅され、ドル円相場での円高要因として働くことも想定される。

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