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ドル円、円高材料増加 159円 イラン終戦と日銀利上げの見通しは?

ドル円相場は159円台。イラン戦争や米国経済、日銀の金融政策などで円高圧力が増してきた。ただ、見通しには不透明感もある。

ドル円、円高材料増加 159円 イラン終戦と日銀利上げの見通しは? 出所:ブルームバーグ

ドル円相場で円高材料が増えてきた。ドル円相場は日本時間29日午後の取引で1ドル=159円台前半で推移。直近の2週間はほぼ横ばいの値動きとなった。要因のひとつは、イラン戦争の終結が現実味を増してきたこと。28日にはアメリカとイランが終戦に向けた停戦延長で暫定合意したと報じられ、「有事のドル買い」は勢いを失っている。また米国では経済成長減速の可能性も出ており、やはりドル高の流れを弱めた。同時にドル円相場では、日本銀行の金融政策をめぐる円高材料も浮上。日銀が重視する基調的な物価上昇に高まりの兆しが出ており、今後、金融市場で日銀の6月利上げ見通しが強まる可能性もある。ただ、イラン戦争が実際に終結に向けて動き出すかどうかは不透明で、日銀の利上げへの期待も大きく強まっているとはいえない。このためドル円相場の当面の値動きは小幅な値動きが続く可能性もある。

ドル円相場は159円台前半 直近2週間は横ばいの値動き

ドル円相場(USD/JPY)は日本時間29日午後1時23分段階で1ドル=159.35円で取引されている。ブルームバーグによると、ドル円相場は18日に2週間半ぶりの159円台をつけた後の約2週間、158円台半ばから159円台半ばにかけての値動きが続いている。

ドル円相場の推移の主な出来事のグラフ

60日間停戦延長で暫定合意報道 ドル買いの流れ弱まる

ドル円相場が横ばいとなっている背景には、イラン戦争終結への期待がありそうだ。米インターネットメディアのアクシオスは米国東部時間28日午前10時台、米国とイランが終戦に向けた60日間の停戦延長で暫定合意に達したと報道。イランは30日以内にホルムズ海峡に敷設した機雷を除去し、船舶の自由な通航に向けた準備を整えるなどとした。暫定合意に対するドナルド・トランプ大統領の最終的な承認は出ていないというが、和平の現実味が増していることは確かなようだ。

こうした中、28日のFX市場では有事のドル買いの勢いが弱まり、円や豪ドル、ユーロ、ポンドがドルに対して強くなった。28日のニューヨーク市場の終値を、トランプ氏がイランとの協議について「最終段階にある」と述べる前日にあたる19日終値と比較すると、豪ドルの対ドル相場(AUD/USD)は0.79%の豪ドル高、ユーロの対ドル相場(EUR/USD)は0.40%のユーロ高、ポンドの対ドル相場(GBP/USD)は0.37%のポンド高となっている。円の対ドル相場は0.11%の円安だ。

円、ユーロ、ポンド、豪ドルの対ドル相場の推移のグラフ

米国の成長率が下方修正 想定通りの物価上昇と合わせて円高材料に

また28日の金融市場では、米国の経済成長の弱さも注目された。28日朝に発表された2026年1-3月期GDP改定値で実質成長率が前期比年率1.6%とされ、速報値の2.0%より低くなったためだ。改定値では個人消費の成長率が1.4%となり、速報値の1.6%から下方修正されたことなどが影響した。さらにGDP改定値と同時に発表された4月の個人消費支出(PCE)物価指数の伸び率は、総合指数が前年同月比3.8%、食品とエネルギーを除いたコア指数が3.3%。いずれもブルームバーグがまとめた市場予想通りの結果だった。米国経済の想定以上の弱さと、物価上昇率が予想に沿った内容だったことは、ドル円相場における円高材料といえそうだ。

アメリカの実質GDP成長率と寄与度の推移のグラフ
PCE物価指数の伸び率の推移のグラフ

日銀公表の物価指標で4月の物価上昇が加速 予想インフレ率も2%超えが継続

同時にこのところの金融市場では、日本の物価上昇をめぐる円高材料も浮上している。日銀が26日に公表した消費者物価のコア指標によると、4月の消費者物価指数から生鮮食品と制度変更などの特殊要因を除いた指標の伸び率は前年同月比2.8%で、3月の2.5%から物価上昇が大きく加速した。半面、エネルギー価格も取り除いた指標の伸び率は2.2%で、前月の2.6%よりも低くなっているものの、日銀が目標とする2%超えの水準となった。物価上昇率の強さは、日銀を利上げへと後押しする円高材料だ。

日銀公表の物価指標の伸び率の推移のグラフ

さらに金融市場では予想インフレ率の大幅な上昇も起きている。ブルームバーグによると、長期金利(10年物国債利回り)から10年物物価連動国債の利回りを引いたブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は19日に2.328%を記録。11日までの2.000%前後から大きく跳ね上がり、2004年4月以降のデータで過去最高となった。その後も2.2%超の水準が続いている。通常の国債の価格は投資家の物価上昇予想の影響を受けるのに対して、物価連動国債の価格は物価上昇予想の影響を受けないため、利回りの差は投資家が予想する物価上昇率の大きさが反映されると位置づけられる。

日本のブレークイーブン・インフレ率の推移のグラフ

日銀の植田総裁は予想インフレ率を注視 日銀の6月利上げ確率は78%に

日銀の植田和男総裁は4月28日の金融政策決定会合後の記者会見では、中長期の予想インフレ率について日銀が物価上昇率の目標とする2%に近づいているとしつつ、高い水準が定着しているとの自信は持てないと言及。中長期の予想インフレ率がはっきりと上昇して基調物価が上振れするリスクに注意し、「そうならないように政策を適切に発動していきたい」と述べていた。その後、植田氏は5月19日、フランスで行われた主要7か国(G7)財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で、BEIについて「ちょっと上振れているところがある」と述べた。

このため、日銀の政策金利の見通しをめぐっては、6月15、16日の金融政策決定会合での利上げへの期待がさらに強まることも考えられそうだ。ブルームバーグによると、29日午後1時23分の金融市場で見込まれている6月決定会合後の政策金利の水準は0.923%で、現状よりも0.173%ポイント高い水準。利上げ確率は78%と見込まれている。

金融市場で見込まれている日銀の政策金利の推移のグラフ

イラン和平の実現には不透明感 ドル円相場は横ばいが続く可能性も

ただ、イラン戦争終結への期待はトランプ氏の情報発信によって大きく後退する可能性もある。ブルームバーグによると、JDヴァンス副大統領は28日夕方、代表取材に対して、トランプ氏が戦争終結の覚書に署名するかどうかについて「明確に答えることは難しい」と発言。イランの核開発の扱いなどについて相違が残っていることを示唆した。スコット・ベッセント財務長官も28日、記者団に対して「すべては大統領の判断次第だ」と述べている。

また日銀の利上げについても期待が高まりきらない可能性もある。金融市場では6月利上げへの期待が出る一方、12月末までの追加利上げの確率は64%程度で、5月20日段階での100%を超える確率から低下しているためだ。このためドル円相場の当面の値動きをめぐっては、イラン戦争終結や日銀の利上げペースを見極めようとする様子見ムードが強まる展開も考えられそうだ。


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