ドル円、円安圧力鮮明 日銀は利上げ見通し強調 為替介入現実味増す
ドル円相場は159円台。日銀の決定会合後の円高は一時的に終わった。円がさらに弱含めば、為替介入による円高急進の現実味が増す。
ドル円相場で円安圧力の強さが印象づけられた。ドル円相場は日本時間28日午後に一時、1ドル=158円台後半まで円高が進んだものの、その後は159円台後半まで円安が進行。日本銀行が28日までの金融政策決定会合後、利上げ見通しを強調したにも関わらず、円高の流れは一時的に終わったもようだ。日銀の植田和男総裁が記者会見で、経済や物価が日銀の見通しに沿って推移する確度が低下していると述べたことが、利上げの筋道の不確かさを感じさせた。日銀が示した物価指標でも、エネルギー価格を除けば物価上昇が減速しているほか、イラン戦争に伴うホルムズ海峡封鎖が経済の波乱要因であることも、日銀の利上げの確かさを疑わせる材料になったようだ。ただ、植田氏は経済の見通しが不透明でも、景気の大崩れのリスクが低ければ利上げが可能との見解を繰り返し、金融市場では日銀が6月にも利上げする可能性が見込まれている。こうした中、FX市場では主要通貨の中で円だけがドルに対して大幅に弱い状況が続いており、円安のさらなる進行後に日本政府による為替介入でドル円相場が円高に振れる筋書きも現実味を帯びている。
ドル円相場は159円台後半 日銀決定会合後の円高は一時的
ドル円相場(USD/JPY)は日本時間28日午後7時22分段階で1ドル=159.58円で取引されている。日銀は正午すぎに政策金利を0.75%で維持すると発表。9人の委員のうち3人が利上げを主張していたことで、金融市場では日銀が利上げに前向きとの受け止めが広がり、円高が進んだ。ブルームバーグによると、発表直前に159.56円をつけていたドル円相場は午後1時45分には158.96円をつけた。しかしその後は発表前の水準を超えて円安が進み、一時は159.69円を記録している。
日銀は利上げの可能性を強調 植田総裁は「確度は低下」とも
日銀は決定会合の結果と同時に発表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」でも利上げの可能性を強調した。消費者物価の基調的な上昇率については、2026年度後半から2027年度にかけて、物価安定の目標(2%)と概ね整合的な水準になると分析。2026年9月からは利上げで物価上昇を抑え込む必要性が高まるとの見方を示唆した。また、イラン戦争で経済の見通しが不透明になる中でも、企業が賃上げや値上げに積極的になっていることを踏まえれば、「物価上昇率が大きく上振れていくリスクが顕在化し、それがその後の経済に悪影響を及ぼす」可能性があることを強調し、十分に留意する必要があるとした。
それでもドル円相場での円高が一時的に終わった要因は、日銀自身が想定シナリオの実現可能性が低くなったことを認めたことにありそうだ。植田氏は午後3時30分からの記者会見で、物価上昇過熱を警戒する中でも今回の決定会合で利上げしなかった理由について、日銀の見通しに沿って経済や物価が推移する「確度が低下している」と説明。現状維持を支持した6人の委員の意見について、物価上昇について直ちに利上げを決めるほどの緊急度はないと判断した、と述べた。
エネルギー価格を除けば物価上昇率は低下傾向 ホルムズ海峡封鎖も懸念
実際、日銀が28日に発表した物価動向に関する参考指標からは物価上昇が急激に加速しているわけではない様子がうかがえた。3月の消費者物価指数(CPI)の総合指数から、生鮮食品と政策による特殊要因を除いた値の伸び率は前年同月比2.5%で、前月(2月)の2.2%から物価上昇が加速。一方、生鮮食品と特殊要因に加え、エネルギー価格も除いた値でみた伸び率は前年同月比2.6%で、前月の2.7%から物価上昇が減速した。この指標でみた物価上昇率の低下は5か月連続だ。原油高の影響を排除して考えれば、物価上昇圧力は弱まっているとみることもできる。
また、ホルムズ海峡封鎖が日本経済に及ぼす悪影響の大きさも、日銀の利上げの難しさを連想させる円安材料だ。日銀は展望リポートの中で、イラン戦争の影響で「中東向け自動車輸出などに下押し圧力がかかる」ことから、企業の輸出や生産は当面は横ばい圏内の動きになると分析。2026年度の実質GDP成長率は前年度比0.5%になるとの見通しを示し、1月段階の見通し(1.0%)から下方修正した。中東情勢の混乱が長期化した場合には、マイナスの影響が想定以上に大きくなるとも指摘している。経済見通しが不透明な中で、日銀が先走って利上げをすれば、景気を冷やす効果が大きくなりすぎる恐れがある。
日銀は6月利上げの可能性も 円安がさらに進行すれば為替介入に現実味
ただ、日銀が現段階でも近い将来の利上げを見据えていることは間違いない。植田氏は記者会見で、経済や物価が見通し通りに推移する確度が低い場合でも、日本経済が予想から下振れするリスクが大きくならなければ、「利上げが可能になる」と繰り返した。ブルームバーグによると、28日の金融市場で見込まれている次回(6月15、16日)の決定会合後の政策金利の水準は0.895%で、利上げ確率は66%となっている。
日銀が利上げ姿勢を強調する中で、円安がさらに進行すれば、日本政府による為替介入の現実味も増しそうだ。円の対ドル相場の日本時間28日午後7時22分の水準は、イスラエルとアメリカによるイラン攻撃開始前日にあたる2月27日比で2.21%の円安。豪ドルの対ドル相場(AUD/USD)の0.77%の豪ドル高、ポンドの対ドル相場(GBP/USD)の0.05%のポンド高、ユーロの対ドル相場(EUR/USD)の1.02%のユーロ安と比べて、円だけが大きく弱含んでいる状況だ。片山さつき財務相は28日の閣議後記者会見で為替相場の対応について、ゴールデンウィーク中も「ずっと24時間対応だ」と述べ、投機筋の動きを改めて牽制している。
ドル円相場をめぐっては、米連邦準備制度理事会(FRB)が米国東部時間29日午後2時(日本時間30日午前3時)に発表する連邦公開市場委員会(FOMC)の結果も注目される。原油価格の上昇が物価上昇圧力として働く中、FRBが利下げに対する慎重姿勢を感じさせれば、ドル円相場では円安要因として働く可能性があり、かえって日本政府の為替介入による円高急進への緊張感が高まる展開も考えられそうだ。
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