豪ドル急騰、103円台 豪中銀は利上げも視野か 物価上昇過熱懸念
豪ドル円相場は2週間足らずで3円近い豪ドル高。RBAの9日までの理事会が豪ドル高圧力を強める可能性もありそうだ。
豪ドル円相場が急騰している。日本時間8日の取引では1豪ドル=103円台前半をつけ、約1年4か月ぶりの豪ドル高水準を更新。2週間足らずで3円近い豪ドル高が進んだ。豪ドルの強さの背景にはオーストラリアの物価上昇の再燃が意識されている事情があり、金融市場ではオーストラリア準備銀行(RBA)が2026年には利上げに転じるとの見方も出ている。このためRBAが9日までの理事会後の声明文などで、2026年の利上げの可能性を示唆するなどすれば、豪ドルへの上昇圧力はさらに強まりそうだ。一方、豪ドル円相場の今後の見通しをめぐっては、日本銀行が12月利上げを見据えていることが豪ドル安材料として働きうる。RBAの理事会後の情報発信が豪ドル圧力を強めても、日銀の利上げへの期待が豪ドル円相場での豪ドル高の足を引っ張る可能性も否定できない。
オーストラリアドルは一時、103.26円 2週間足らずで2.91円の豪ドル高
豪ドル円相場(AUD/JPY)は日本時間8日正午の取引で1豪ドル=103.05円で取引されている。ブルームバーグによると、8日未明の取引では103.26円をつけ、2024年7月23日(104.36円)以来の豪ドル高水準となった。豪ドル円相場は11月25日につけた100.35円から、9営業日で2.91円の豪ドル高が進んだ形だ。
オーストラリアの物価上昇率は3.8% 豪ドル高要因に
豪ドル高進行の背景にあるのは、オーストラリアの物価上昇の根強さだ。11月26日に発表された10月の消費者物価指数(CPI)の伸び率は、総合指数で前年同月比3.8%となり、ブルームバーグがまとめた市場予想の3.6%を上回る結果。変動率が大きい項目を取り除いた刈り込み平均では3.3%となり、こちらも市場予想(3.0%)を超えた。10月CPIはオーストラリア統計局が新基準で発表する初めてのデータで、前年同月比での伸び率は3月分以降が公表された。新基準での伸び率は旧基準と比べて高くなっており、物価上昇の再燃を感じさせる結果だった。
オーストラリアの物価上昇の強まりを受けて、豪ドル円の対ドル相場(AUD/USD)は大きく上昇した。ブルームバーグによると、5日のニューヨーク市場の終値はCPI発表前日の11月25日との比較で2.64%の豪ドル高。円の対ドル相場の0.46%の円高を大きく上回る強さとなり、豪ドル円相場での豪ドル高につながった。FX市場では11月下旬以降、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ見通しの強まりがドル安傾向を生んでいるが、豪ドルの対ドル相場の強さは円に加え、ポンドの対ドル相場(GBP/USD)やユーロの対ドル相場(EUR/USD)と比べても鮮明だ。
豪中銀は2026年に利上げか 9日までの理事会後の情報発信が焦点
こうした中、金融市場ではオーストラリアの中央銀行にあたるRBAが2026年は利上げに転じるとの見方も広がっている。ブルームバーグによると、金融市場で見込まれている2026年6月の理事会後の政策金利の水準は日本時間8日正午段階で3.775%で、現状の3.600%よりも高い。6月までの利上げ確率は70%程度と見込まれている。RBAは2025年2月に4年3か月ぶりの利下げを決め、その後、5月と8月に追加利下げを決めていたが、早くも利下げが打ち止めになる可能性が出てきた。
豪ドル円相場の今後の見通しは、RBAが8、9日の日程で開いている理事会に際しての情報発信で左右されそうだ。9日午後2時30分(日本時間9日午前12時30分)に発表される声明文や、その後のミシェル・ブロック総裁の記者会見で、物価上昇への警戒感や2026年以降の利上げの可能性への言及があれば、豪ドル高がさらに上昇しそうだ。ブロック氏は前回11月の理事会後の記者会見で、政策金利の水準について「中立的な水準に極めて近い」と述べ、今後は利下げと利上げの両方の可能性があることを示唆していた。
日銀の利上げ見通しは豪ドル円相場での豪ドル高を抑制か 12月利上げ確率90%
一方、豪ドル円相場には日銀の動向をめぐる思惑も影響を与える。ドル円相場(USD/JPY
)は高市早苗政権発足の起点となった10月4日の自民党総裁選挙前から10円もの円安が進んできたが、植田和男総裁が12月1日に18、19日の金融政策決定会合で利上げを検討すると述べたこともあり、足元では円高の流れが出ている。ブルームバーグによると、金融市場では12月決定会合後の政策金利の水準は8日正午段階で0.702%と想定されており、利上げ確率は90%程度が見込まれている。
このためRBAの9日の情報発信が利上げの可能性を感じさせたとしても、日銀の利上げ見通しが豪ドル円相場での豪ドル高の勢いを相殺することも考えらえる。また、RBAが物価上昇への過度な警戒を打ち消したり、ブロック氏の発言が2026年の利上げの可能性を弱めたりした場合には、豪ドル高の上昇にストップがかかる可能性もありそうだ。
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