TSMCの16日の2026年4-6月期決算は今後の見通しが焦点。大手ハイテク各社の投資意欲の低下が感じられれば、世界的な半導体株下落も見込まれる。
半導体受託製造の台湾積体電路製造(TSMC)が16日に行う2026年4-6月期決算発表は人工知能(AI)ブームの見通しの異変が示されるかが注目される。TSMCは最先端半導体の供給元となっているNVIDIA(エヌビディア)などを顧客に持つ、AIブームの基盤を支える存在。13日に発表した6月の総収入は好調な結果で、4-6月期の総収入はTSMCが3カ月前に示した業績予想範囲の上限付近となったもようだ。一方、AIブームの今後の見通しをめぐっては、AI開発企業同士の価格競争が始まっているとみられ、各社がサービス能力の拡充をペースダウンさせるシナリオもちらつく。こうした中、TSMCが16日に示す業績の見通しが期待外れに終われば、半導体株企業の業績への期待が後退し、世界の株式市場における半導体株安の引き金を引く懸念もありそうだ。
TSMCは台湾時間の16日午後2時(日本時間16日午後3時)から決算会見を開く。決算資料は会見の30分前に公表される見通しだ。
TSMCが決算発表に先駆けて13日に公表した6月の台湾ドルベースでの総収入は前年同月比67.9%増の4426.80億台湾ドル。6月の台湾ドルの対ドルレートで換算すると139.97億ドルとなり、4-6月期の総収入は前年同期比33.0%増の402.03億ドルと試算できる。TSMCは4月16日の前回(1-3月期)決算発表に際し、4-6月期の総収入は390億-402億ドルの範囲になるとの見通しを示しており、予想範囲の上限付近での着地になったようだ。
また、ブルームバーグがまとめた事前予想では、TSMCの4-6月期の米国預託証券(ADR)ベースでの1株当たり利益(EPS)は前年同期比51.8%増の3.75ドルになる見通し。前四半期の64.6%増からは成長が減速するものの、利益が1.5倍になる急成長が見込まれている形だ。
TSMCのADRベースでの株価(TSM)の10日の終値は前日比0.65%安の434.11ドル。前回決算発表前日にあたる4月15日終値との比較では15.73%高となっている。ただ、10日終値は6月30日につけた最高値(477.57ドル)からは9.10%安で、値上がりの勢いには陰りが出ていた。
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ブルームバーグによると、TSMCの直近の株価と今後12か月の予想1株当たり利益から算出される株価収益率(PER)は10日段階で26.0倍。前回決算発表前日の24.4倍からやや割高感が高まっているうえ、株式市場でAIブームが本格化した2023年以降の平均値(18.1倍)を大きく超えている。アナリストが提示する目標株価の平均は486ドルで足元の水準よりも12%ほど高い。29人のアナリストのうち28人は買い、1人は維持を推奨している。
TSMCの16日の決算発表はAIブームの動向を占う意味合いがある。TSMCはAI開発やサービス展開に不可欠な最先端半導体を開発するエヌビディアなどを顧客に持ち、エヌビディアから半導体を購入する大手ハイテク各社とも情報交換しながら経営の舵取りを続けているためだ。
TSMCの魏哲家(シーシー・ウェイ)CEOは前回4月16日の決算会見で、大手ハイテク各社の動向を元に、AI関連の半導体需要は「極めて頑強だ」と繰り返し、AI関連の収入の2024年から2029年までの伸び率は年率換算で50%台半ばから後半になるとの見通しを維持していた。魏氏は同時に、TSMCの2026年通期の総収入の成長率の見通しを「30%超」に上方修正し、イラン戦争の悪影響が懸念される中でも、AIサービスの普及を背景にした業容の拡大に自信を示した。
ただ、TSMCの「顧客の顧客」である大手ハイテク各社が展開するAIサービスをめぐっては競争環境の変化も起きている。複数のAIモデルを単一のアカウントで利用できるサービスを展開している「OpenRouter(オープンルーター)」が6月30日に公表した、6月のAI別の利用量(14日段階)のデータでは、アルファベット(GOOGL)の子会社であるグーグルのAIのシェアが10.7%となり、1月段階の24.6%から急落。同様にオープンAIのシェアも12.5%から7.4%へと低下した。代わって躍進したのは、中国のAI開発企業「DeepSeek(ディープシーク)」のAIで、シェアを1月の9.1%から6月の18.1%へと倍増させている。ディープシークの利用料金は、アルファベットなどと比べて大幅に安く、利用者の人気を集めているとみられる。こうした中、メタ・プラットフォームズ(META)のマーク・ザッカーバーグCEOは、最新AIモデルを開発者向けに有料で公開するにあたり、利用料金をオープンAIなどの25%程度に抑えるとした。
AI開発企業同士の価格競争が始まる中、投資家の間では大手ハイテク各社がこれまで積み重ねてきた設備投資額に見合うだけの利益を確保できるかどうかへの不安が高まる。アマゾン・コム(AMZN)、マイクロソフト(MSFT)、アルファベット、メタの4社だけでも2026年の設備投資額は前年比73.2%増の7100億ドルに達する見込み。各社が資金調達のために相次いで社債を発行した結果、4社の3月末時点の長期負債残高の合計(6200億ドル)は前年同期比60.0%増となっており、財務状況への懸念にも火が付きかねない。
こうした中、TSMCの魏氏が16日に示す見通しに慎重さが感じられれば、大手ハイテク各社が設備投資の積み増しを見直しているとの連想が、世界の半導体株にとっての逆風として働く可能性がある。AIサービスが2023年以降、急激な進歩と成長を続けてきたことは、関係各社の経営環境が悪い方向へと急変するリスクも感じさせ、株主の不安は高まりやすい状況にあるといえそうだ。
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