TSMC、株価見通しに影 供給拡大に懸念 イラン戦争の影響は否定
TSMCの1-3月期決算発表はイラン戦争の不安を打ち消す内容。一方、強すぎる半導体需要は供給網を混乱させかねない不安要素だ。
半導体受託製造大手の台湾積体電路製造(TSMC)が16日に行った2026年1-3月期決算会見は、イラン戦争の短期的な業績への不安を打ち消す内容だった。TSMCは市場予想を上回る4-6月期の業績見通しを示したうえ、2026年通期の成長率見通しも上方修正。魏哲家(シーシー・ウェイ)CEOは、人工知能(AI)関連の半導体需要の強さを繰り返し強調した。またTSMCはイラン戦争に伴うホルムズ海峡封鎖で調達難が懸念されているヘリウムなどについて十分な備蓄があると明言。台湾における電力不足の恐れについても、業績への影響は見込んでいないとした。AIブームの継続見通しが裏付けられる中、16日には日経平均株価とS&P500種株価指数がともに最高値を更新しており、日米の株価は底堅さを増したようだ。ただ、16日の米国株式市場ではTSMC自身の株価は下落。他の半導体製造関連企業の株価も冴えない値動きだった。AI関連半導体への強すぎる需要はサプライチェーンの混乱につながる恐れもあり、投資家の間には警戒感もありそうだ。
TSMCの2026年1-3月期決算は成長が加速 2026年通期の成長率は30%超に上方修正
TSMCが16日に発表した1-3月期決算は、総収入が前年同期比40.6%増の358.98億ドル。前四半期(10-12月期)の25.5%増から成長が加速した。また米国預託証券(ADR)ベースでの1株当たり利益(EPS)は64.6%増の3.49ドルで、やはり前四半期(40.2%増)から成長率が高まっている。総収入はTSMCが10日に発表した台湾ドルベースでの総収入をドル建てに換算した数字(358.37億ドル)とほぼ一致。1株当たり利益はブルームバーグがまとめた直前の市場予想(3.30ドル)を上回った。
またTSMCが決算と合わせて示した4-6月期の総収入の見通しは390億-402億ドル(中間値396億ドル)で、市場予想の381億ドルを上回った。さらに魏CEOは16日の決算会見で、2026年通期の総収入の成長率の見通しを「30%超」とし、前回1月15日の決算会見で示した「30%近い」との見通しから上方修正した。魏氏は、AI関連の半導体需要は「極めて頑強だ」と繰り返し、成長に自信を示した。
2026年の設備投資額は前年比37%増も AI関連需要で積極姿勢
TSMCの成長への自信は設備投資への積極姿勢にも表れている。TSMCの1-3月期の設備投資額は前年同期比10.3%増の111億ドル。2026年通期の設備投資額は520億-560億ドルの範囲の上限に近くなると予想している。560億ドルになった場合は、前年同期比36.9%増にあたり、2025年の37.4%増に続く、積極的な投資加速が見込まれている形だ。
TSMCはイラン戦争の短期的な業績への影響を否定 米国市場では半導体株が上昇
またTSMCの黄仁昭CFO(ウェンデル・ファン)CFOは、ホルムズ海峡封鎖にともなう化学製品の価格上昇などについて「利益に影響を及ぼすかもしれない」としつつ、影響の大きさを判断するには時期尚早と言及。また半導体製造に必要とされるヘリウムなどが調達難に陥るとの懸念については、中東以外の調達先を確保する多様化を進めているうえ、備蓄も十分にあるとし、「短期的な影響は予想していない」とした。台湾の発電の多くが天然ガス火力発電で賄われ、液化天然ガス(LNG)不足が電力不足につながるとの不安についても、台湾政府がLNG調達に尽力していることに触れ、やはり短期的な影響は予想していないとしている。
こうしたTSMCの決算発表を受けた16日の米国株式市場では半導体株が上昇。半導体株の値動きを示すフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は前日比0.97%高となり、12営業日続伸を果たした。SOXへの寄与度が最も大きいNVIDIA(エヌビディア、NVDA)は0.26%安となって12営業日ぶりに反落したが、アドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)は7.80%高で12営業日続伸。ブロードコム(AVGO)も8営業日続伸の0.44%高だった。半導体株の好調を背景に、S&P500種株価指数(SPX)は16日に0.26%高となって、前日に続いて最高値を更新。日本の株式市場でも半導体株の影響度が大きい日経平均株価(N225)が16日の取引で1か月半ぶりに最高値を更新している。
TSMCの株価は3.13%安 半導体製造関連企業の株価は不調
ただ、16日の取引ではTSMC自身の株価(TSM)は前日比3.13%安となって2日続落。半導体製造装置のアプライド・マテリアルズ(AMAT)も1.11%安となり、4日続落となった。オランダの半導体製造装置大手のASMLホールディングの株価(ASML)も16日のユーロネクスト・アムステルダムでの取引で0.60%安となっている。ASMLは15日の決算発表で示した4-6月期の業績見通しが市場予想を下回り、生産能力の拡大が追い付いていない可能性も感じられた。投資家の間ではAI関連の半導体需要の強さが好材料視される一方、イラン戦争に伴う混乱への懸念がくすぶり続ける中、供給力不足の恐れも意識されているようだ。
TSMCにとってはテラファブの登場も不確定要素 半導体製造装置の奪い合い?
TSMCにとっては半導体製造で新たなライバルが登場する可能性も逆風となりえる。電気自動車大手のテスラ(TSLA)や宇宙開発のスペースX、AI開発のxAIを率いるイーロン・マスク氏は3月21日に年間1テラワット(1000ギガワット)相当の計算能力の確保を目指して、自前で半導体の製造を進める「テラファブ」構想を披露。4月7日には半導体製造も手掛けるインテル(INTC)がテラファブ構想への参加を表明した。ブルームバーグは16日、マスク氏が側近を通じて、東京エレクトロン(8035)を含む世界の半導体製造装置メーカーに接触を始めたと報じている。
魏CEOは16日の決算会見でテラファブについても言及。半導体工場の立ち上げには2-3年の時間がかかるとして、短期的な影響を否定したうえで、「TSMCの競争力は非常に高い」と述べて、自信をみせた。ただ、テラファブが実現に向かって動き出せば、半導体製造装置の奪い合いになるといった事態も否定できず、TSMCにとっては経営の難易度が増す展開も考えられそうだ。
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