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米国株、最高値でも見通しに暗さ S&P500週次続伸 エヌビディア失速

S&P500は週次0.36%高。3週続伸で最高値付近を維持した。株価上昇の裾野は広がっているものの、大手ハイテク株の不調も目立っている。

Source: ブルームバーグ

Written by

小雲 規生

小雲 規生

シニアファイナンシャルライター/Senior Financial Writer

作成日

アメリカの株式市場の値上がりが続いた。S&P500種株価指数の14日の終値は1週間前比で0.36%高。3週連続の値上がりで最高値付近を維持した。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ見通し後退を受けて、株価上昇への楽観が続いている形だ。8月に入ってからの米国株の値動きをS&P500のセクター別指数でにみると、11セクター中の10セクターが値上がりしており、株高の裾野の広がりが感じられる。ただ、人工知能(AI)ブームに沸いてきた半導体株はNVIDIA(エヌビディア)を含めて勢いに欠ける値動き。大手ハイテク各社の株価も不調で、AIサービス拡大のための投資負担の重さが悪材料になっている構図に変わりはない。金融市場ではS&P500の8000台乗せを予想する声が増えているものの、2026年の下半期の上昇率は上半期からは減速しそうで、AIブームの変調がS&P500の今後の見通しを暗くしている形だ。

S&P500は週次0.36%高 最高値付近を維持

S&P500(SPX)の14日の終値は前日比では0.17%安の7785.76。週次での0.36%高は小幅ながらも3週続伸となった。イランとオーマンによるホルムズ海峡をめぐる協議が前進していると伝わったことや7月雇用統計に過熱が出なかったことが好材料になった前週(3-7日)の週次3.58%高の流れを引き継いでいる。S&P500は13日つけた7798.99で、4営業日ぶりに最高値を更新していて、14日も高値圏を維持したといえる。

S&P500とアメリカの長期金利の推移のグラフ

物価上昇懸念が後退 米国市場の株価上昇に裾野の広がり

S&P500の値上がりを後押ししたのは、物価上昇懸念の後退だ。12日に発表された7月の消費者物価指数(CPI)は物価上昇の過熱感を示さない内容。また13日発表の7月の卸売物価指数(PPI)の伸び率が前年同月比4.7%となり、5月の5.9%をピークとした低下傾向が維持されたことも好材料となった。さらに14日に発表された7月の小売売上高が前月比0.6%減となり、9か月ぶりのマイナスとなったことも、物価上昇への懸念を弱めている。こうした中、14日の金融市場ではFRBの利上げ見通しの後退が進み、9月15、16日の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ確率は32%程度となった。

米国の小売売上高の前月比伸び率の推移のグラフ

米国株式市場の上昇基調はS&P500の11セクター別指数の値動きからも感じられる。ブルームバーグによると、11セクター別指数の14日の終値を7月末の水準と比較すると、公益事業セクターを除く10セクターが値上がりした。値上がりセクターの数は6月は6セクター、7月は7セクターに留まっていたが、8月に入って値上がり業種が一気に広がった感がある。

S&P500の11セクター別指数の月次騰落率のグラフ

エヌビディアは上昇の勢いが失速 循環取引への疑念が重荷

ただ、14日までの週次の値動きでは、AIブームが追い風となってきた半導体株の勢いが欠けている。エヌビディアの株価(NVDA)は14日までの週次で0.54%高で、週次での値上がりを確保したものの、前週の週次11.56%高から失速し、26日の2026年5-7月期決算発表に向けて期待が高まる展開とはならなかった。週初めの10日に、大手金融機関と共同で、エヌビディアの顧客企業によるAIインフラ投資を手助けするための5000億ドル超の金融パッケージを組成することが明らかになり、「循環取引」への疑念で株価が前週末比2.86%安となったことが尾を引いた結果だ。半導体株ではブロードコム(AVGO)が週次8.13%安、半導体製造装置のアプライド・マテリアルズ(AMAT)も週次5.93%安となっていて、米国上場の半導体株の値動きを示すフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は週次0.49%高に留まった。

エヌビディア、AMD、インテル、アーム・ホールディングスなどの株価の推移のグラフ

大手ハイテク各社も不調 設備投資負担や利上げ警戒が悪材料に

また、S&P500への影響度が大きい「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社の株価も不調だ。14日までの週次の取引ではアマゾン・コム(AMZN)が週次4.31%安、アルファベット(GOOGL)が週次2.37%安、アップル(AAPL)が週次2.36%安となるなど、エヌビディアとテスラ(TSLA)を除く、7社中の5社が値下がりしている。

アルファベット、エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・コム、マイクロソフト、アップル、テスラの株価の推移のグラフ

大手ハイテク株の株価の足かせとなっているのは、AIサービス拡充のための負担の重さだ。AIクラウド事業を手が得るコアウィーブ(CRWV)やネビウス・グループ(NBIS)の好決算が材料視された12日の取引では、エヌビディアなどの半導体株が上昇した半面、コアウィーブと長期契約を結んでいるメタ・プラットフォームズ(META)などの株価が下落した。コアウィーブの収益向上の裏側には、メタなどによる支出の拡大が潜んでいるとの見方があったもようだ。BITA社が7社の株価に基づいて算出する「マグニフィセント・セブン指数」(MAGSEVEN)は12日、エヌビディアの上昇にも関わらず前日比0.34%安となり、S&P500の足を引っ張った。

マグフィニセント・セブン指数は、7月CPIで物価上昇の過熱感が出ることへの警戒感があった10日と11日も合計で1.62%安だった。FRBが物価上昇抑制のために利上げに踏み切る可能性が、各社が今後も必要に迫られるとみられる社債発行などによる資金調達のコストを上げるとの懸念を膨らませた。実際には、CPI発表後にFRBの利上げ見通しは低下したものの、今後も重要経済指標の発表の度に大手ハイテク株に下落圧力がかかり、S&P500の重荷となる可能性がある。

S&P500の2026年下半期は上昇ペースダウンとの予想 見通しに暗さ

こうした中、金融市場では、S&P500の2026年下半期の上昇は、上半期ほどの強さにはならないとみられている。ブルームバーグのまとめによると、32人のストラテジストが14日段階で示しているS&P500の2026年末の水準の平均値は7894程度。この場合、下半期の上昇率は5.26%高となり、上半期の9.55%高からは減速するとの見立てだといえる。7月以降に予想を示した14人のストラテジストの中では10人が8000台を予想しているが、実際に8000に到達した場合でも下半期の上昇率は6.68%高に留まる。

株式市場にとってFRBの利上げ見通しの後退が好材料となる中でも、これまでS&P500を牽引してきた半導体株や大手ハイテク株の勢いは、AIブームをめぐる循環取引への疑念や設備投資額の重さで削がれている。同時にホルムズ海峡の開放が進まないという世界経済にとっての逆風が続いていることもあり、最高値に到達したS&P500の今後の見通しは晴れ渡っているわけではないようだ。

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