原油価格、下落傾向変わらず WTIは62ドル台 ウクライナ和平模索
WTIは7月末比で10%安の水準での取引が継続。ウクライナ和平に向けた前進の可能性が材料視されているが、期待には脆さもある。

原油価格の下落傾向が続いている。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し)は日本時間20日の取引で1バレル=62ドル台前半で推移。8月に入ってから10%安の水準となっている。このところの原油市場で材料視されているロシアとウクライナの間の和平協議をめぐっては、仲介役となったアメリカのドナルド・トランプ大統領が両国の首脳と相次ぎ会談。ロシアとウクライナの停戦が実現し、米国によるロシアへの経済制裁が緩和されるとの期待がつながっていることが原油価格を下落させているようだ。また原油需要が減少しているとの見方も引き続き、原油価格の下押し圧力となっている。ただ、ウクライナ和平の実現に向けては今後も曲折が予想され、原油価格の下落が進みにくくなる展開も想定される。
WTIは62ドル台前半で推移 8月に入って10%下落
WTI(翌月渡し、WTI原油)は日本時間20日午前10時20分段階で1バレル=62.07ドルで取引されている。ブルームバーグによると、WTIは7月31日のニューヨーク市場での終値(69.26ドル)から約10%下落しており、値下がりの流れに変化が出ていない。

ロシアとウクライナの和平に期待 ロシア産原油の市場流入増加の思惑
原油価格に下落圧力をかけているのは、ロシアとウクライナの間の和平協議への期待だ。トランプ氏は15日に米国アラスカ州でロシアのウラジミール・プーチン大統領と首脳会談を実施。その後、18日にはホワイトハウスでウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領らとも和平の可能性について協議した。欧米メディアの報道によると、ロシアはウクライナ東部のドネツク州とルハンスク州の割譲を求める一方、戦線の凍結や一部占領地域の返還を提案したもよう。一方、ウクライナは停戦後のロシアによる再侵攻を防ぐため、米国を含む北大西洋条約機構(NATO)各国による関与を求めているという。
ブルームバーグによると、トランプ氏は19日、米ラジオ番組でのインタビューに応じ、プーチン氏とゼレンスキー氏の直接会談の可能性に言及。今後も和平に向けた協議が前進していくとの見方を示した。仮に和平協議が大きく進展することになれば、米国のロシアに対する経済制裁が緩和され、ロシア産原油が市場に流通しやすくなるとの思惑が原油価格への下落圧力を強めることも考えられそうだ。
米国の原油在庫が積み上がり 需要の弱さも原油価格下落要因に
また原油価格をめぐっては引き続き、需要の弱さも材料視されている。米エネルギー情報局(EIA)が13日に発表した週次の原油在庫量(戦略備蓄除く)は8日段階で、1週間前比303.6万バレルの増加となり、ブルームバーグがまとめた市場予想の92.1万バレル減少とは対照的な在庫の積み増しとなった。13日に国際エネルギー機関(IEA)が発表した8月の月報でも、世界の石油在庫が6月まで5か月連続で前月比での増加を記録したとされている。在庫の増加は需要の弱さの現れとみることができ、ブルームバーグによると、13日の原油先物市場ではWTIの終値が前日比0.82%安となった。

こうした中、EIAは20日午前10時30分(日本時間20日午後11時30分)に15日段階での原油在庫量を発表する。ブルームバーグがまとめた事前予想では、1週間前比85万バレルの減少が予想されているが、改めて在庫の積み増しが確認されるなどした場合には、WTIの値下がりにつながる可能性がある。
ウクライナ和平への期待には脆さ 原油価格下落は減速の見通しも
ただ、ロシアとウクライナの間の和平協議への期待が長続きするかどうかは不透明だ。ロシアが要求するドネツク州とルハンスク州の割譲には現時点でウクライナが防衛を続けている地域も含まれているとみられ、ウクライナには受け入れが難しい条件。またウクライナが求めている米国やNATO各国による関与にはロシアが強く反発している。ロシア外務省の報道官が18日に発表した声明は、「NATO軍構成国のウクライナへの派兵を含むいかなるシナリオも断固として拒否する」としていた。
このため原油市場の今後の見通しをめぐっては、ウクライナ和平への期待の後退が原油価格への上昇圧力として働く展開もありえる。同時に原油需要の弱さや、OPECプラス加盟国の増産による下落圧力は続くものの、WTIの値下がりが底打ちになることも想定されそうだ。
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