原油価格、ロシア産原油が焦点に WTI上昇 対露制裁強化の行方は?
WTI(翌月渡し)は64ドル台をつけ2週間ぶりの高値。ウクライナのロシアの石油精製施設への攻撃が材料視されたが、値下がりに転じる可能性も。

原油先物市場の注目がロシア産原油の行方に集まっている。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し)は日本時間17日の取引で1バレル=64ドル台後半を記録。約2週間ぶりの高値となった。ウクライナによるロシアの石油精製施設に対する攻撃がロシアの原油生産を落とす要因になる可能性が材料視されているためだ。アメリカのドナルド・トランプ大統領がロシア産原油を市場から締め出す方向性を示唆していることも原油価格に上昇圧力をかけている。ただ、トランプ氏が共同歩調をとるよう求めている欧州各国はロシアへのエネルギー依存が続いており、ロシアに対する圧力強化に踏み切れるかどうかは不透明。サウジアラビアやロシアなどで作るOPECプラスの増産も引き続き原油価格の値下がり要因として働いている。原油需要をめぐっては弱さが意識されやすい状況でもあり、原油価格の今後の見通しをめぐっては、WTIが下落に転じるシナリオも想定されそうだ。
WTIは一時、64.76ドル 2週間ぶり高値を記録
WTI(翌月渡し、WTI原油)は日本時間17日未明に1バレル=64.76ドルまで上昇した。ブルームバーグによると、3日につけた65.72ドル以来、2週間ぶりの高値となっている。WTIは5日には61.45ドルまで下落する場面もあったが、値上がり傾向が出てきているようだ。ただ、足元の水準は7月末まで続いてきた65-70ドル程度の水準には届いておらず、WTIは上値が抑えられているとみることもできる。

ウクライナがロシアの石油施設を攻撃 トランプ氏はロシア産の石油購入停止を要求
17日の取引でWTIを値上がりさせたのはロシアの原油生産が抑えられるとの観測。ロイター通信は17日、ロシアの国営パイプライン企業のトランスネフチが国内の原油生産企業に対して、生産を抑制せねばならなくなる可能性があると警告した、と報じた。ウクライナがロシアの石油精製施設にドローン攻撃を行い、精製能力が20%減になる場面もあったことなどが背景にあるという。またウクライナはバルト海に面したロシアのプリモルスク港などへの攻撃も行っていると報じられている。
またトランプ氏もロシアに対する圧力を強める意向を示している。トランプ氏は13日朝、自身のSNSトゥルースソーシャルへの投稿で、北大西洋条約機構(NATO)加盟国へのメッセージとして、NATO各国がロシアからの石油購入を止め、米国と同様の措置を取ることを条件として、ロシアに対する大規模な経済制裁を行う用意があるとした。英紙ガーディアンによると、トランプ氏は訪問中の英国でも16日、ロシアとウクライナ間の戦争を終わらせるためには「欧州はロシアからの石油購入を止めなければならない」と強調した。
欧州各国はエネルギーをロシアに依存 LNGは輸入の19%がロシア産
ただ、欧州各国がロシアへのエネルギー依存を即時に断ち切ることは容易ではない可能性がある。欧州連合(EU)統計局によると、2021年1-3月期の段階でEUの石油輸入の29%がロシア産だったが、2022年2月にロシアがウクライナに侵攻して以降、EUはロシアからのエネルギー輸入を減らしてきた。2025年4-6月期段階で、ロシアからの輸入は全体の2% にとどまっているという。ただ、天然ガスについては輸入の12%がロシア産で、アルジェリア、ノルウェー、英国に次ぐ4番目の輸入元。また液化天然ガス(LNG)では1-3月期の輸入の19%がロシア産で米国に次いで2番目の輸入元だ。
また原油生産をめぐっては、供給過剰が見込まれる状況に変化は出ていない。サウジアラビアやロシアを含むOPECプラスの8か国は7日に10月の生産量を9月比で日量13.7万バレル積み増すと発表。8月と9月の増産幅が日量55万バレル程度だったことと比べれば控えめな内容だったとはいえ、11月以降に増産ペースが上がる可能性もある。ロシア産原油の締め出しを口にするトランプ氏も米国内の物価上昇抑制の観点から原油価格の下落を望んでおり、今後もWTIにかかる上昇圧力が高まっていくとは言い切れない面もある。
原油需要には弱さ 米国の在庫量が想定以上の積み増しなら下落圧力も
さらに原油需要に関しては引き続き弱含みが意識されやすい状況だ。米エネルギー情報局(EIA)が10日に発表した5日時点の原油在庫量(戦略備蓄除く)は1週間前比で393.9万バレル増加。予想されていた在庫の取り崩しとは対照的な在庫の積み増しで、需要の弱まりが感じられた。EIAが17日午前10時30分(日本時間17日午後11時30分)に発表する12日時点の在庫量は、ブルームバーグがまとめた市場予想では176.6万バレルの増加が予想されており、上振れすればWTIに下落圧力がかかる筋書きも考えられそうだ。

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