原油価格、下落圧力に強さ　WTIは66ドル　ロシア原油への不安後退

原油価格に対する下落圧力が続いている。原油先物市場の指標価格であるWTI（翌月渡し）は日本時間16日午前は1バレル＝66ドル台で推移。14日につけた69ドル台から値下がりが進んだ。アメリカのドナルド・トランプ大統領がウクライナ情勢をめぐり、ロシア産原油を原油市場から締め出す方向性を示したことは原油価格の上昇要因となったが、勢いは続いていない。原油市場ではトランプ氏がロシアへの全面的な強硬姿勢に転じたわけではないともみられており、原油の過剰供給が進むとの見通しが維持されている。また、原油需要には弱さも感じられ、やはり原油価格を下押しする要因として働いている。

WTIは66ドル台　停戦合意後最高値の69ドル台から下落　

WTI（翌月渡し、WTI原油）は日本時間16日午前10時38分段階で1バレル＝66.93ドルで取引されている。ブルームバーグによると、WTIは6月23日に78.40ドルをつけた後、トランプ氏がイスラエルとイランの停戦合意を発表したことを受けて、翌24日には64.00ドルまで急落した。こうした中で7月14日につけた69.65ドルは停戦合意発表後の最高値だったが、足元では改めて66ドル台まで下落している形だ。

トランプ氏がロシアに強硬姿勢　ウクライナへの長距離ミサイル供給は否定

WTIが14日に69ドル台をつけた背景にあるのはトランプ氏のロシアに対する圧力だ。トランプ氏は14日、記者団を前に、ロシアがウクライナとの停戦に50日以内に応じなければ、100％程度の2次関税を課す可能性があると言及。ロシア産原油を輸入するインドや中国に高関税をかける枠組みが想定されているもようで、ロシア産原油が原油市場から締め出されるとの思惑が広がった。トランプ氏は北大西洋条約機構（NATO）を通じてウクライナに防空システム「パトリオット」を提供するといった軍事支援に踏み切るとも表明している。

ただ、トランプ氏は15日には記者団に対して、ロシア国内の軍事施設を攻撃可能な長距離ミサイルをウクライナに供給する計画は否定。原油市場ではトランプ氏がロシアに対する一方的な強硬姿勢に転じたわけではないと受け止められた。ブルームバーグによると、WTIは15日には1バレル＝66.22ドルをつける場面もあった。

原油の過剰供給は継続の見通し　米国の原油在庫にも注目

原油供給をめぐってはサウジアラビアやロシアなどOPECプラス加盟8か国が5日に増産ペースの加速を発表しており、原油価格への下落圧力として働いている。米エネルギー情報局（EIA）は8日に発表した短期エネルギー見通し（STEO）で「世界的な原油在庫の大きな積み上がり」が継続的に価格を下押しするとの見通しを示していた。

こうした在庫の積み上がりは原油市場での需要の弱さを示す指標でもある。EIAが9日に発表した4日段階での原油在庫（戦略備蓄除く）は1週間前比で707万バレルの増加。ブルームバーグがまとめた市場予想の160.0万バレルの減少と比べれば、想定を大きく上回る在庫の積み増しとなった。米国の原油在庫は6月27日段階でのデータでも、予想を覆す上積みとなっており、2週連続で需要の弱さが感じられた形だ。EIAは16日午前10時30分（日本時間16日午後11時30分）に11日段階での在庫量を発表する予定で、結果次第で原油価格への下落圧力が強まる可能性がありそうだ。