原油価格、急落回避 WTIは62ドル台復帰 OPECプラス増産伸びず
WTI(翌月渡し)は上昇傾向。5日に発表されたOPECプラスの増産が見通しを下回ったことが影響した。ただ、過剰供給懸念が消えたわけではない。

原油価格が急落を回避した。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し)は日本時間8日の取引で1バレル=62ドル台で推移。前週末につけていた60ドル台から回復している。原油価格を上昇させたのは、サウジアラビアやロシアなどを含むOPECプラス内の8か国が5日に発表した11月の増産幅が市場の見通しよりも小さかったこと。OPECプラスの増産姿勢が強まっていれば、過剰供給懸念が原油価格を急落させる可能性もあったが、警戒感は後退したといえそうだ。またロシア産原油の市場への流入が抑え込まれるとの観測も原油価格を押し上げる要因といえる。ただ、原油市場での過剰供給が続くとの見通しは完全に崩れたわけではない。米エネルギー情報局(EIA)は7日発表の短期エネルギー見通し(STEO)の中で米国の原油生産量の見通しを上方修正しており、原油価格への下落圧力も維持されていそうだ。
WTIは62ドル台で推移 週末の60ドル台から反発
WTI(翌月渡し、WTI原油)は日本時間8日午前11時13分段階で1バレル=62.23ドルで取引されている。ブルームバーグによると、WTIは2日から3日にかけては60ドル台半ばで取引される場面もあったが、上昇傾向が出ている。

OPECプラス8か国の11月の増産幅は日量13.7万バレル 事前報道を下回る
原油価格上昇の要因は、OPECプラスによる増産が想定ほどの大きさにならなかったことだ。サウジやロシアなどのOPECプラス内の8か国は5日、11月の生産量について前月比で日量13.7万バレル引き上げると発表。増産幅は10月分と同じ大きさだった。11月の増産幅をめぐっては日量50万バレルという水準が事前に報じられ、原油価格の下落が加速する可能性もあったが、予想よりも小さな増産幅は原油価格にとっての上昇圧力として働いた。8か国の決定を受けた週明け6日のWTIの終値は前日比1.33ドル高の1バレル=61.69ドルとなった。

また原油市場ではウクライナとの戦争を続けているロシアの原油の国際市場への流入が抑えられるとの見方も続いている。ウクライナはロシアの石油精製施設にドローンによる攻撃を加えており、ロシア国内の燃料価格が上昇。ロシア政府は9月30日、自動車燃料の輸出を12月31日まで延長すると発表し、同時にディーゼル燃料の輸出禁止も12月31日まで実施する方針を示した。さらに、米国のドナルド・トランプ大統領がロシアのウクライナとの和平交渉に消極的な姿勢を批判する中、米国と欧州連合(EU)が足並みをそろえてロシア産原油の市場からの締め出しを図る可能性も原油価格にとっては上昇圧力といえる。
EIAは米国の原油生産量の見通しを上方修正 8日発表の在庫量でWTIの下落も
ただ、原油市場では原油の過剰供給が今後も続くとの見方は維持されている。EIAは7日に発表したSTEOの中で、2025年の米国の原油生産量の見通しを日量1350万バレルとし、従来の日量1340万バレルから引き上げた。2026年についても従来の日量1330万バレルから日量1350万バレルに上方修正している。EIAは、世界的な原油供給の拡大と北半球の需要がピークを迎える夏を過ぎたことで、「世界の原油在庫は予想よりも大きく積み増され、今後数か月の原油価格を下落させる」としている。
こうした中、原油市場の関心はEIAが8日午前10時30分(日本時間8日午後11時30分)に発表する週次の原油在庫量に集まりそうだ。EIAは1日に発表した声明文で、政府機関一部閉鎖の期間中でも原油在庫統計などの発表を継続するとしていた。ブルームバーグがまとめた事前予想によると、3日段階の原油在庫量(戦略備蓄除く)は1週間前比で35.0万バレル増加と見込まれている。発表される結果が予想よりも大きくなれば、原油需要の弱さが在庫の積み増しにつながったとの見方が、WTIを下落させる可能性もありそうだ。

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