テスラ、マスク氏効果で株価急騰 9月すでに26%上昇 急落リスクも
テスラの株価は9月に入って26%上昇。マスク氏への巨額報酬が評価された結果だ。一方、販売不振は続いており、割高感は4年半ぶりの大きさとなっている。

電気自動車(EV)大手テスラの株価が急激に回復している。テスラの株価の9月に入ってからの上昇率は16日の終値段階で約26%高。テスラの株価は大手ハイテク株の中で出遅れが目立っていたが、追い上げが続いている。テスラの取締役会がイーロン・マスクCEOに対する巨額の報酬パッケージを株主に提案したことなどが、マスク氏が経営に留まることへの期待を高めた結果だ。ただ、テスラのEV販売は依然として不振に見舞われており、株価の本格回復の環境が整っているとはいえない。業績の改善が見込めないままでの株価上昇は割高感を約4年半ぶりの水準まで押し上げており、テスラの株価の値動きは引き続き、急落リスクと背中合わせといえそうだ。
テスラの株価は9月に入って26.28%高 不振の巻き返しが続く
テスラの株価(TSLA)の16日の終値は6日続伸の前日比2.82%高。9月に入ってからの11営業日で26.28%高という急騰を演じている。テスラの株価は8月末段階では2024年末比17.33%安で、マグニフィセント・セブンと呼ばれる7社の中で最低の成績。しかし16日終値段階では4.40%高となっており、iPhone(アイフォン)17の発表内容が予想の範囲内に収まったアップル(AAPL)の4.49%安を追い越し、人工知能(AI)サービス展開での劣勢が懸念されているアマゾン・コム(AMZN)の6.68%高に追いついてきた。

マスク氏に10年間で最大1兆ドル相当の報酬を提案 経営に集中させる狙い
テスラの株価上昇のきっかけは、5日に米証券取引委員会(SEC)に提出された11月6日開催の株主総会で諮られる議案の内容。なかでもマスク氏に10年間で最大約1兆ドル相当の報酬を支払う議案が盛り込まれていることが好材料視された。マスク氏が5月までドナルド・トランプ大統領の助言役を務めるなどしたことは、経営への関与を薄めるとともに政治的な言動がテスラの不買運動につながるデメリットも生んでおり、巨額報酬にはマスク氏を経営に引き留め、集中させる狙いがある。
提出資料によると、マスク氏はすべての報酬をテスラ株の付与の形で受け取る。テスラの時価総額や総収入、利益などに関する12段階の基準を達成するごとにマスク氏にテスラ株が付与され、時価総額が現状の6倍にあたる8.5兆ドルに到達するなどの最終段階をクリアした場合には累計で4億2374万3904株を受け取ることができる。ブルームバーグによると、マスク氏の報酬は約1兆ドルに相当する可能性があるという。
また15日にSECに提出された資料によると、マスク氏は12日にテスラ株を256万8732株取得。ブルームバーグによると、マスク氏の保有株数は5億0936万2808株となり、全体の15.33%に達した。株式市場ではマスク氏が巨額報酬の提案を受け、経営への関与を深める意向を示したとしてやはり好材料視された。
EVの販売不振は継続 米国では10月からの補助金廃止が逆風に
ただ、テスラの株価を下押ししてきたEVの販売不振は解消のめどが立っていない。欧州自動車工業会(ACEA)が8月28日に発表した7月の販売実績では、テスラの欧州での販売台数は前年同月比40.2%減の8837台。中国乗用車協会(CPCA)による9月2日発表の8月の中国での出荷台数でも、テスラは4.0%減の8万3192台だった。また米国市場では9月末でEV購入時の税額控除制度が打ち切られる。足元では駆け込み需要が発生している可能性もあるが、このままでは10月以降の販売に急ブレーキがかかることは必至の情勢だ。

予想株価収益率は4年半ぶりの200倍超え 急落リスクと背中合わせ
販売回復が利益の回復につながる道筋が描けないことから、テスラの株価の急上昇は割高感の強まりを伴っている。ブルームバーグによると、テスラの株価水準と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率(PER)は16日段階で200.6倍となっており、2021年2月9日(202.7倍)以来の高さだ。マグニフィセント・セブン内の他の6社の予想株価収益率が24-33倍に留まっていることを考えれば、テスラの株価が過剰評価されているとの懸念は大きい。

アメリカの株式市場での投資家心理は、米連邦準備制度理事会(FRB)が17日までの連邦公開市場委員会(FOMC)後に発表する政策金利の見通しや、ジェローム・パウエル議長の記者会見の内容で大きく揺らぐ可能性がある。マスク氏の手腕への期待が先行して急回復してきたテスラの株価には急落リスクが潜んでいるともいえそうだ。
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。

こんなに豊富?IG証券のCFD銘柄は17,000以上
外国為替、日本株・外国株、株価指数、債券先物、商品(エネルギー、農産物、貴金属)など多彩な資産クラスをFX取引、CFD、バイナリーオプション、ノックアウト・オプションで提供
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。