米国株 今週の見通し(6/16-20):S&P500予想5850-6100、中東情勢とFOMC注視
中東懸念が米株高トレンドに冷や水を浴びせた。今週は原油価格と米金利の動向、そしてパウエルFRB議長の会見に注目。S&P500の週間展望と同指数に連動する株価指数CFD「米国500」の取引戦略についてIG証券のアナリストが解説。

記事の要点
・中東懸念が米株高のトレンドに冷や水を浴びせた
・原油高によるインフレ懸念の高まりを警戒、米金利上昇は株安要因に
・米FOMCでは、パウエルFRB議長の政策姿勢に注目したい
・米国500の週間予想レンジは5,850-6,100ポイント
※米国500:S&P500が原資産の株価指数CFD
緊迫化する中東情勢、米株高に冷や水
6月9-13週の米国株は下落して終えた。中東情勢の緊迫化が株高ムードに冷や水を浴びせた。
イスラエル軍は日本時間の13日未明にイランを空爆したと発表した。イランはイスラエルに対して150~200発の弾道ミサイルを放ち報復攻撃を行ったことを発表した。イスラエルとイランの対立激化で中東地政学リスクのレベルが一段階上昇したことで、投資家のリスク回避姿勢が強まった。
米株価指数の週間変動率:6月9-13日

ブルームバーグのデータで筆者が作成
原油高とインフレ再燃の懸念、米金利の上昇を警戒
今週も中東情勢を注視したい。イランのメディアは14日、米英仏によるイスラエル報復攻撃の阻止をけん制した。情勢次第でイランがホルムズ海峡の封鎖に動く可能性がある。過去イランが海峡封鎖を達成したことはない。しかし、輸送タンカーへの威嚇や攻撃が行われる可能性がある。実際にホルムズ海峡で戦闘が発生すれば、供給懸念と船舶の迂回による輸送コストの上昇が、インフレ再燃の懸念を強めよう。
今週、金融市場で注視すべきは原油先物価格と米金利の動きである。13日の市場で原油先物価格(7月物)は前日比4.94ドル(7.3%)高の1バレル=72.98ドルで取引を終えた。イスラエルのイラン攻撃が伝わると、一時77ドル台へ急伸。今年1月以来およそ5カ月ぶりの高値水準まで上昇した。
NY原油先物価格のチャート

出所:TradingView
また、この日の国際商品市況では金(ゴールド)が買われた。先物価格(8月物)は一時3,468.0ドルと、4月に付けた最高値3,509.9ドル以来の高値水準へ上昇した。米株安と同じく投資家のリスク回避姿勢を示す動きである。
対照的に米債市場では2年債利回り、10年債利回り、そして超長期の20年債と30年債利回りが上昇した。本来であればゴールドと同じ安全資産であるはずの米国債に買いが入りやすい状況で、むしろ米国債が売られた(=金利が上昇した)事実は、米債市場の参加者が原油高によるインフレ再燃の方を強く意識したことを示唆している。
コストプッシュ型のインフレは景気に悪影響を与える。今週、「原油高→米金利の上昇」が進行する場合は、最高値圏の攻防にあるS&P500の調整売りを警戒したい。
米FOMC、焦点はパウエル議長の経済見通しと政策姿勢
今週17-18日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれる。今回の会合では政策金利の据え置きが予想されている。したがって焦点は、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長によるインフレと雇用の見通し、そして政策姿勢にある。
利下げ判断の後押し要因
・5月雇用指標:労働市場の軟化を示唆
・5月インフレ指標:消費者物価指数・生産者物価指数が総じて予想以下
・6月期待インフレ率(速報値):5月確報値の6.6%から5.1%へ急低下
※ミシガン大学調査
利下げ判断の慎重要因
・トランプ関税の影響見極め
・中東懸念による原油高→インフレ再燃の懸念
パウエルFRB議長は入手した経済指標を精査し政策を判断する姿勢にある。直近の経済指標を受け、利下げ姿勢に傾く発言があれば、米国株の下支え要因となろう。だが、パウエル議長は利下げの慎重要因を見極める必要がある。先行きの不透明感を理由に早期の利下げに慎重な姿勢を示す場合は、米株安を警戒したい。
なお、短期金融市場では次回の利下げを9月と想定している。その確率は60%台にある(6月13日時点)。
米FRB 政策金利の予想推移

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 6月13日時点
米国500の週間見通しとテクニカル分析
予想レンジ上限:6,100
13日の米国株は、中東懸念を受け主要指数が下落した。だが、米株式市場の時価総額の約80%をカバーするS&P500の下落率は1.13%と他の指数に比べて限定的だった。週間でも0.39%安にとどまった(冒頭のパフォーマンスチャートを参照)。

ブルームバーグのデータで筆者が作成
S&P500が原資産の株価指数CFD「米国500」の動きを4時間足チャートで確認すると、13日の市場で下落幅が拡大したのは、イスラエルによるイラン空爆の第一報が流れた日本時間の午前のみである。それ以降は反発した。この動きはS&P500の地合いの強さを示唆している。RSIは50を上回る水準にあり、終値で節目のライン6,000ポイントを上回った(4時間足チャートを参照)。
上で述べたとおり「原油高→インフレ懸念→米金利の悪い上昇」は調整売りの要因として警戒したい。しかし、13日の原油先物価格の長い上ヒゲは中東の地政学リスクに対する過剰反応だった可能性を示唆している(上の原油先物価格チャートを参照)。イランによるホルムズ海峡への攻撃が懸念されるが、そのリスクの織り込みが急速に進み原油先物価格の上昇が抑制される場合、米国500は節目の6,000ポイントがサポートラインへ転換する可能性がある。
米国500が6,000ポイントを維持する場合、次の焦点は6,070レベルのトライを想定したい。この水準は先週11日の高値水準である。テクニカルの面では、フィボナッチ・エクステンション100%の水準(6,074ポイント)にあたる。6,050ポイントの突破は、このテクニカルラインをトライするサインと捉えたい。
米国500が6,070ポイントを完全に突破すれば、6,100ポイントのトライを想定したい。この水準は2020年3月から2022年10月にかけての高安で算出されるS&P500のフィボナッチ・エクステンション100%の水準(6,118ポイント)にあたる。今週の予想レンジの上限と想定したい。
レジスタンスライン
・6,100:予想レンジの上限(日足)
・6,070:6/11高値、フィボナッチ・エクステンション100%の水準(4時間足)
・6,050:レジスタンスポイント(4時間足)
予想レンジ下限:5,850
米国500が下落する場合は、以下にまとめたサポートラインの攻防に注目したい。週間の予想レンジ下限は5,850ポイントを想定。この水準は5月30日の安値レベルである。
最初の焦点は、節目のライン6,000ポイントの維持となろう。これに成功する場合は、市場参加者に地合いの強さを印象付けよう。このケースでは、上で述べたレジスタンスラインの攻防を意識したい。
米国500が6,000ポイントを下抜ける場合、次の焦点は5,900ポイントの維持となろう。以下にまとめた2つのフィボナッチ・リトレースメントの攻防に注目したい。前者の61.8%戻しは6月13日の安値レベルとともにサポートゾーンを形成する可能性がある。
一方、後者の76.4%戻しは5,900のラインにあたる。このラインの下方ブレイクは、予想レンジの下限5,850をトライするサインと捉えたい。
サポートライン
・6,000:節目のライン(4時間足)
・5,930:フィボナッチ・リトレースメント61.8%(4時間足)
・5,900:フィボナッチ・リトレースメント76.4%(4時間足)
・5,850:5/30安値レベル、予想レンジの下限(4時間足)
米国500のチャート
4時間足:5月下旬以降

出所:IGチャート
S&P500のチャート
月足:2019年以降

出所:TradingView
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