ドル円、円高急進の可能性 日銀利上げへ 円安進行なら為替介入か
ドル円相場は一時159円台。イラン和平実現への期待が円高材料となった。日銀の16日までの決定会合後に円安が進めば、為替介入の可能性も高まりそうだ。
ドル円相場に円高急進の可能性が出てきた。ドル円相場は日本時間12日午後の取引で1ドル=160円台前半で推移。一時、159円台半ばをつける場面もあり、6営業日ぶりの円高水準といえる。アメリカのドナルド・トランプ大統領が週末にもイラン和平合意が署名されるとの見方を示し、有事のドル買いの巻き戻しが起きたためだ。11日の金融市場では原油価格が下落し、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ見通しも後退。同時に日本銀行の金融政策をめぐっては、15、16日の金融政策決定会合での利上げが確実視されており、いずれも円高要因とみることができる。一方、16日の決定会合後の日銀からの情報発信が追加利上げに慎重だとみなされれば、ドル円相場は円安方向に動く可能性もある。ただ、日銀の利上げ決定後に円安が進めば、日本政府による為替介入によって円高が急進する筋書きも想定され、ドル円相場の今後の見通しをめぐっては円高材料の多さが意識されることになりそうだ。
ドル円相場は一時159.37円 7時間で1円の円高が進行
ドル円相場(USD/JPY)は日本時間12日午後2時6分段階で1ドル=160.24円で取引されている。ブルームバーグによると、午前4時台には159.58円をつけ、3日につけた159.37円以来の円高水準となった。ドル円相場は11日午後9時台には160.59円をつけていたが、7時間程度で1円の円高が進んだ形だ。
トランプ氏が週末の和平合意を示唆 有事のドル買いが後退
円高進行の要因はイラン戦争終結への期待で、有事のドル買いが後退したこと。トランプ氏は日本時間12日午前2時台(米国東部時間11日午後1時台)に、自身のSNSトゥルースソーシャルへの投稿で、和平協議の内容がイランの最高レベルの指導部に承認されたとし、概要や詳細は米国やイスラエル、アラブ首長国連邦(UAE)、パキスタンなど関係各国によっても承認されたと公表。予定していたイランへの攻撃は中止するとした。午前4時台には、トランプ氏が記者団に対して、合意の署名がこの週末にも欧州で行われると述べたとも伝わっている。トランプ氏は11日午後9時台のSNSヘの投稿では「今晩、イランに激しい攻撃を加える」とし、ここ数日にわたるイランへの強硬姿勢を維持していた。
11日のFX市場ではイラン和平が現実味を増してきたことで、円以外の通貨もドルに対して強くなった。ブルームバーグによると、主要通貨の11日のニューヨーク市場の終値の前日比での値動きは、豪ドルの対ドル相場(AUD/USD)が0.71%の豪ドル高、ユーロの対ドル相場(EUR/USD)が0.37%のユーロ高、ポンドの対ドル相場(GBP/USD)が0.37%のポンド高だった。円の対ドル相場は0.39%の円高にあたる水準だった。
原油価格下落でFRBの利上げ見通しは後退 日銀は16日の利上げが確実視
イラン和平が実現すればホルムズ海峡封鎖の解除が近づくとの見方は、原油価格の下落にもつながっている。ブルームバーグによると、原油先物市場の指標価格であるWTI(7月渡し、WTI原油)は11日のニューヨーク市場の終値で前日比2.58%安にあたる1バレル=87.71ドルを記録。日本時間12日午前7時台には85.13ドルまで値を下げている。原油価格下落は物価上昇圧力を弱める要因で、11日の金融市場では前日までは確実視されていたFRBの年内利上げ見通しが後退した。金融市場で見込まれている12月の連邦公開市場委員会(FOMC)後の政策金利の水準は3.806%まで下がり、年内利上げ確率は75%程度と見込まれている。FRBの利上げが遠のいたことはドル円相場にとっては円高要因といえる。
同時に日銀の金融政策に関して16日までの決定会合で利上げが決まるとの見通しが崩れていないことも、円高材料だ。ブルームバーグによると、12日の金融市場で見込まれている16日の利上げ確率は97%。日銀の植田和男総裁は3日の東京都内での講演で、物価の上振れリスクが高まると判断される場合には、「利上げの是非についてしっかりと議論する必要がある」と述べていた。植田氏は10日、肝嚢胞感染症の治療のため9日から2週間程度の入院療養に入ると発表されており、決定会合の議長は氷見野良三副総裁が代行し、会合後の記者会見は内田真一副総裁が行う。
日銀が追加利上げに慎重なら円安も 為替介入実施で円高急進の可能性
一方、日銀の利上げが金融市場の値動きに織り込まれる中、投資家の関心は追加利上げの可能性に向かっている。17日発表の声明文や内田氏の記者会見から様子見ムードが感じられた場合には円安材料とみなされそうだ。ブルームバーグによると、12日午後2時6分の金融市場で見込まれている12月決定会合後の政策金利の水準は1.181%で、年内2回の利上げの確率は82%程度とみられている。
ただ、日銀が利上げを決めたにも関わらず円安が進む事態となれば、日本政府の為替介入が円高急進の引き金を引く可能性が高まりそうだ。ドル円相場では投機筋による円の売り越しが積み上がっており、2024年7月3日から8月5日にかけて1ドル=161円台後半から141円台後半へと円高が急進した局面の再来も予感させる。米商品先物取引協会(CFTC)のデータによると、非商業部門の円の売り越し幅は2日段階で12万9567枚で、2024年7月16日(15万1072枚)以来の高水準となった。
ドル円相場の背景となる日米の長期金利(10年物国債利回り)の差は、FRBが2022年3月から利上げ局面に入る前の水準まで縮まっている。ブルームバーグによると、11日段階の日米金利差は1.784%ポイントで、前日から0.090%ポイント縮小。5月28日につけた2022年3月8日以来の低水準(1.758%ポイント)に近づいている。イラン和平が実現すれば、有事のドル買いの巻き戻しが続き、日本と米国の金利差がかつてなく縮まっているという金融市場の状況が円高材料として意識されやすくなることも考えられる。
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