ドル円、雇用統計で円高か 大幅悪化で145円も 来週のCPIにも注目
ドル円相場は148円台で推移。5日夜に発表される米国の8月雇用統計は労働市場の弱さが示される見通しで、円高が進む可能性がある。

ドル円相場がアメリカの労働市場に神経を尖らせている。ドル円相場は日本時間5日の取引では1ドル=148円台前半で取引されており、7月下旬から続いてきた146-150円台のレンジの中間点付近で推移。5日夜に発表される8月雇用統計では労働市場の悪化が確認される見通しで、米連邦準備制度理事会(FRB)の9月利下げの確度を高める円高要因になる可能性がある。また、ドル円相場の背景となる日米の長期金利(10年物国債利回り)の差は縮小が続いており、やはり円高が進みやすい環境といえそうだ。一方、FRBの金融政策は物価情勢にも左右されるため、11日に発表される8月の消費者物価指数(CPI)などの結果を見極めたいとの思惑がドル円相場で生じ、円高にブレーキがかかることもありえる。ただ、8月雇用統計で労働市場が大幅に悪くなった場合には円高進行の勢いが増し、145円台に到達するシナリオも想定されそうだ。
ドル円相場は148円台前半 レンジの中間点で雇用統計待ち
ドル円相場(USD/JPY)は5日午後2時8分段階では1ドル=148.20円で取引されている。ブルームバーグによると、3日には149.14円まで円安が進む場面もあったが、7月25日から続いてきた146.21-150.92円の範囲を超える値動きにはつながらず。8月22日に行われたFRBのジェローム・パウエル議長の「ジャクソン・ホール講演」の前と同様、ドル円相場はこれまでのレンジの中間点付近で市場の注目が集まる8月雇用統計の発表を迎えることになりそうだ。

雇用統計は就業者数の伸びが低調な見通し 失業保険申請件数は予想を超える悪さ
日本時間5日午後9時30分に発表される8月雇用統計は、労働市場の悪さが示される見通し。ブルームバーグがまとめた市場予想によると、非農業部門の就業者数は前月比7.5万人増となり、7月の7.3万人増に続く低調な数字になるもよう。失業率も4.3%への悪化が見込まれている。米国の労働市場をめぐっては、4日に発表された失業保険関連統計でも、8月24-30日週の新規失業保険申請件数が23.7万件となって市場予想の23.0万件を超えた。

FRBの9月利下げは確実な見通し 日米の金利差は3年1か月ぶりの小ささ
米国の労働市場の悪化はFRBが景気を下支えするために利下げを行うとの見方を強め、ドル円相場での円高を進みやすくする材料だ。ブルームバーグによると、金融市場で見込まれている9月16、17日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の政策金利の水準は4日段階で4.085%。現在の政策金利(4.25-4.50%、中間値4.375%)から0.29%ポイント低い水準で、利下げが確実視されている。また12月のFOMC後の政策金利の水準に関する予想値も3.724%まで下がっており、年内に2回以上の利下げが行われる可能性が意識されてきたようだ。

FRBの利下げへの期待が強まりは、米国の長期金利の低下としても現れている。ブルームバーグによると、米国の長期金利は4日に一時、4.155%をつけ、5月1日(4.120%)以来の低さとなった。これに対して、日本の長期金利は3日につけた1.635%が2008年10月14日(1.640%)以来、16年10か月ぶりの高さを更新している。この結果、ドル円相場の値動きに影響を与える日米の長期金利差は4日段階で2.571%ポイントという、2022年8月4日(2.518%ポイント)以来、約3年1か月ぶりの小ささとなっており、円高が進みやすい状況だといえる。

11日の8月CPIにも重要性 雇用統計が大幅悪化なら145円台への円台も
一方、足元の米国経済ではドナルド・トランプ大統領の高関税政策が物価上昇圧力として働いており、物価の安定を労働市場の安定と並ぶ使命とするFRBの金融政策判断を難しくしている。パウエル氏は8月22日のジャクソン・ホール講演では労働市場の悪化懸念を根拠に9月利下げの可能性を示唆しつつ、短期的には「物価をめぐるリスクは上昇方向に傾いている」とも言及している。
こうした中、8月雇用統計が労働市場の悪さを示したとしても、FRBの金融政策の方向性は8月の物価動向が確認されるまでは定まりきらないとの見方も成り立つ。このため8月雇用統計発表後に、10日に発表される8月卸売物価指数(PPI)と11日発表の8月CPIの結果を見極めたいとの思惑が働き、ドル円相場での円高が勢いづかないこともありえる。
ただ、雇用統計を受けたドル円相場の円高進行には1年前の前例がある。2024年9月6日発表の8月雇用統計は、非農業部門の就業者数が市場予想を下回り、投資家心理が悪化。失業率が前月から改善するという好材料もあったものの、この日のドル円相場は一時、前日終値から1.67円の円高となる1ドル=141.78円をつけ、1か月ぶりの円高水準を記録した。この事例を踏まえれば、今回発表される今年の8月雇用統計が予想通りの悪い結果だった場合、レンジの下限である146円台前半に向けた円高が想定されそうだ。また、8月雇用統計が市場予想を大きく超える悪さになれば、1年前以上に円高の勢いが増し、レンジの下限を超えて145円台まで円高が進むシナリオも考えられる。
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