金見通し(5/28):関税懸念後退で米株高、ドル買いの持続性とエヌビディア決算に注目
金価格の上値が重い。トランプ米政権による欧州連合(EU)への50%関税延期で27日の米株価指数が上昇。米ドルが買い戻されるなかで、エヌビディアの決算が株高の要因となれば、金価格はもう一段下落する可能性も。今日以降の見通し。

要点
金価格の上値が重い。27日の市場で先物価格(6月物)は前週末比65.4ドル(1.9%)安の1トロイオンス3,300.4ドルで終えた。スポットの金価格はトライアングルの上限がレジスタンスラインとして意識され上値が重い。トランプ米政権は欧州連合(EU)に対する50%関税の延期を表明した。これを好感し27日の米株価指数は上昇した。米ドルに買い戻しが入るなか、エヌビディアの決算でリスクオンのトレンドが進行すれば、金価格はもう一段の下落を警戒したい。
EUへの関税延期でリスクオン、米ドル買い戻し、金価格下落
トランプ米大統領は25日、欧州連合(EU)に対する50%関税の発動期限を7月9日まで延期すると自身のSNSに投稿した。関税懸念の後退を受け27日のアメリカ株式市場では主要指数が上昇した。株式市場の時価総額の約80%をカバーするS&P500は前週末比2%高で終えた。この日は主力のハイテク株に買いが入り、ナスダック総合指数は2.46%高と主要3指数のなかで最も上昇した。外為市場では米ドルが買い戻された。
リスクオン相場と米ドルの反発は金価格の重石となった。先物価格(6月物)は前週末比65.4ドル(1.9%)安の1トロイオンス3,300.4ドルで終えた。一方、スポットの金価格はトライアングルの上限がレジスタンスラインとして意識され、上値の重い状況が続いている(下のチャート、赤矢印を参照)。
スポット金価格のチャート:日足 今年2月以降

出所:TradingView
エヌビディア決算を警戒、米株高なら金価格はもう一段の下落警戒
28日の引け後に半導体大手のエヌビディア(NVDA)が2025年2-4月期決算を発表する。EUに対する関税延期で米株式市場はリスクオンのムードにある。この状況でエヌビディアの決算がさらに株高(リスクオン)を促す場合、金価格はもう一段の下落する展開が予想される。
そのエヌビディアだが、株価は反発基調にある。27日の米株式市場では主力の半導体株に買いが入り、エヌビディアは前週末比3.2%高で終えた。中国向けに廉価版の人工知能(AI)半導体の発売を計画しているとロイター通信が報じ材料視された。
米オラクルはオープンAIの新データセンター向けにエヌビディアの高性能半導体を約400億ドル相当購入する。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が23日、複数の関係筋の話として伝えた。トランプ米政権による半導体輸出規制の見直し、そして中東諸国とのビジネス拡大など、エヌビディアには追い風が吹いている。決算で投資家の期待を上回る力強い業績見通しを示す場合、同社の株価はレジスタンスラインとして意識されているフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準137.43ドルと2月18日の高値143.44ドルを突破する展開が予想される(いずれも下のチャート、赤矢印を参照)。エヌビディアの上昇はS&P500やナスダック指数の上昇要因となろう。リスクオン(米株高)の進行は金価格の重石となろう。
エヌビディアの株価:日足 年初来

出所:TradingView
米ドルの買い戻し、持続性には疑問
5月の消費者信頼感指数は98.0と、ブルーム情報グ予想の87.1を上回る強い内容となった。強い米経済指標はドルの買い戻し要因となり、27日の外為市場では米ドルがG10通貨で上昇した。EUに対する関税延期に加えて、米国と各国との交渉が進展しているとの報道やトランプ米大統領を含めた要人がその旨の情報を発信すれば、株高に加えて米ドルの買い戻しも進行することが予想される。この点も金価格の重石となろう。
しかし、米ドル買いの持続性には疑問符が付く。この点を示唆したのが、5月第3週の動きである。10日から2日間にわたって行われた米中協議の結果、相互に課していた追加関税を115%引き下げることを決めた。また、一部の関税については90日間停止し協議の継続を決めた。交渉進展の期待によるこの時の米ドル買いは短期で終息した。今後の米中協議は難航する可能性がある。また、EUに対する関税は延期であって、英国のように貿易協定で合意に達したわけではない。関税リスクが完全に後退していない状況を考えるならば、米ドル安の懸念はくすぶるだろう。 米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ姿勢も米ドル安の要因である。
ドル指数(DXY)は3月以降下落幅が拡大している。5月の反発は50日線で止められレジスタンスラインを形成中。調整の買い戻しで米ドルが買い戻されても、これらテクニカルラインで反落する可能性を現時点では意識したい。
ドル指数のチャート:日足 今年2月以降

出所:TradingView
金価格の見通しとテクニカル分析
下値支持線(サポートライン)
23日のIGコモディティレポートでは、金価格が強気地合いを維持すると予想した。現状、金価格は弱気地合いに転じてはいない。しかし。トライアングルの上限が上値抵抗線(レジスタンスライン)として意識されている状況を考えるならばテクニカルの面でも、もう一段の下落を警戒する局面にある。
だが、外為市場では米ドル安トレンドにある。金価格の上値は重いが下落幅が拡大するムードにない。23日のIGコモディティレポートで予想レンジの下限として取り上げた日足一目雲の下限とフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準3,164ドルをトライする可能性は後退している。今日以降は、21日線と日足一目基準線の攻防に注目したい。米ドルの買い戻しと米株高が同時に進行する場合は、50日線と半値戻しのトライを想定したい。直近の状況を考慮し、新たな予想レンジの下限を3,200ドルとしたい。いずれのテクニカルラインも日足チャートを参照されたし。
・3,294:21日線
・3,277:一目基準線
・3,252:50日線
・3,228:半値戻し
上値抵抗線(レジスタンスライン)
金価格は上値の重い状況にある。しかし、本日東京時間に3,300ドルを回復する局面が見られる。上で取り上げたサポートラインを維持する場合は、地合いの強さを市場参加者に印象付けよう。
米ドル買いは一過性の動きに終わる可能性がある。エヌビディア(NVDA)の決算が投資家の失望を誘う場合は米株安が予想される。これらの動きは金価格の反発要因となろう。
今日以降は、以下にまとめたレジスタンスラインの攻防に注目したい。最大の焦点は上値抵抗線(レジスタンスライン)として意識されているトライアングル上限の突破となろう。このテクニカルラインを突破すれば、4時間足のフィボナッチ・リトレースメントの攻防に注目したい。週間予想レンジの上限は、23日のIGコモディティレポートで取り上げた3,435ドルで変わらず。
・3,435:5月6日高値、全戻し(4時間足)
・3,410:76.4%戻し(4/22高値基準、4時間足)
・3,361:76.4%戻し(5/6高値基準、4時間足)
・3,355:61.8%戻し(4時間足)
・3,345:トライアングルの上限(日足)
金価格のチャート
日足:今年の2月以降

出所:TradingView
4時間足:4月以降

出所:TradingView
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