金価格 来週の見通し:強気地合い維持か、米財政懸念が下支え
22日に反落した金価格だが、本日東京時間に3,300ドル台を回復する場面が見られ強気地合いを維持している。トランプ減税による財政悪化の懸念とドル安が支援材料となっている。来週も強気地合いを想定したい。週間の予想レンジは3,164~3,435ドル。

記事の要点
・金価格は3,300ドルを挟んで強気地合いを維持している
・米国5年物CDSの急拡大、米金利の高止まり、米ドル安は金価格の支援材料となろう
・来週の経済指標で米ドルは反発する可能性がある。しかし一過性の動きで終わるだろう
・来週も金価格は強気地合いを維持か。週間の予想レンジは3,164~3,435ドルを想定
金価格、レジスタンスラインで反落も強気地合いを維持
22日の国際商品市況でNY金の先物価格(6月物)は前日比18.5ドル(0.6%)安の1トロイオンス=3,295.0ドルで取引を終えた。4営業日ぶりに反落した。
スポットの金価格(以下では金価格)は、22日のIGコモディティレポートで取り上げたレジスタンスラインで反落した。しかし、21日線がサポートラインとなり下落幅は限定的だった。MACDはゼロラインを維持し上向くムードにある。モメンタムもゼロラインを上回ってきた。23日の東京時間は買い優勢にあり、3,300ドル台を回復している。金価格は地合いの強さを維持している。
スポット金価格のチャート:日足 2月以降

出所:TradingView
トランプ減税 米下院を通過、財政悪化を意識する市場
米連邦議会下院は22日、減税の延長を含む大型法案を賛成215、反対214の僅差で可決した。所得減税の恒久化、州・地方税(SALT)控除上限の引き上げ、チップと残業代に対する税額控除の適用が柱となる。減税は景気対策となる一方、財政懸念を強める諸刃の剣である。
トランプ米大統領が相互関税を発表した先月以降、米国債の5年物クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のスプレッド(プレミアムの料率)は、40ベーシスポイント(bp)前後から56bpへ拡大する局面が見られた。CDSは国や企業の債務不履行のリスクを測る指標であり、信用リスクが高まればCDSスプレッドは拡大する。一方、米債市場では10年債利回りが4.5%台で高止まりしている。ブルームバーグのデータによれば、30年債利回りは22日の市場で5.1%へ到達する局面が見られた。
これら市場の動きを考えるならば、現在は減税による財政懸念で市場がリスク回避に動く可能性を意識する状況にある。
米国 5年物CDS:年初来

ブルームバーグのデータで筆者が作成
米国債の長期ゾーン利回り:年初来

ブルームバーグのデータで筆者が作成
財政の悪化を懸念する「悪い金利の上昇」は、米ドル安を促している。米ドルの大まかなトレンドを示すドル指数(DXY)は50日線で反発が止められ、短期レジスタンスラインを形成している。直近は、節目の100ポイントを下回る水準で推移している。米ドル安は金価格の下支え要因となっている。
ドル指数のチャート:日足 2月以降

出所:TradingView
金価格 来週の見通しとテクニカル分析
上値抵抗線(レジスタンスライン)
金価格のトレンドを日足チャートで確認すると、21日線がサポートラインとなり一目雲の上限より上の水準で推移している。RSIは「50」付近にあり上昇の過熱感は見られない。米財政懸念が意識されている状況も考えるならば、来週の金価格は強気地合いを維持すると予想する。
本レポート掲載時点で金価格は、22日のIGコモディティレポートで取り上げたレジスタンスラインを意識する状況にある。最高値3,500ドルを基点としたこのラインは、トライアングルの上限でもある。ゆえに、このレジスタンスラインの突破は強烈な買いシグナルとなろう。このラインは来週、3,325ドルから3,300ドルのレンジで推移する。
金価格がレジスタンスライン(トライアングルの上限)を完全に上方ブレイクする場合は、1時間足チャートのフィボナッチ・リトレースメントの攻防に注目したい。5月6日の高値であり、かつ全戻しの水準でもある3,435ドルを来週の予想レンジ上限と想定したい。
・3,435:5月6日高値、全戻し、来週の予想レンジ上限
・3,361:76.4%戻し
・3,355:61.8%戻し
・3,325:レジスタンスライン、トライアングルの上限
下値抵抗線(サポートライン)
来週27日に5月消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード)、30日に4月個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)と5月ミシガン大学消費者態度・期待インフレ率(確報値)が発表される。内容次第で米ドルの買い戻し要因になり得る。
経済指標で米ドルが反発する場合は、金価格の下落要因となろう。しかしトランプ米政権の政策-相互関税によるインフレ再燃の可能性、減税による財政悪化の懸念が単月の経済指標で後退することはないだろう。ゆえに、米経済指標で金価格が下落する局面は、押し目買いの好機と考えたい。
金価格の下落局面では、3つの移動平均線の攻防に注目したい。本レポートの掲載時点では、いずれも3,200ドル台で推移している。特に昨日の反落を止めた21日線、5月14日以降日足ローソク足の実体ベースで相場をサポートしている50日線の攻防に注目したい。
金価格が50日線を下方ブレイクする場合は、日足チャートのフィボナッチ・リトレースメント61.8%戻しの水準3,164ドルをトライする可能性がある。このテクニカルラインは5月の調整売りを止めた経緯がある。また、来週は日足の一目雲の下限も重なって推移する。ボラティリティの拡大を警戒し、重要なテクニカルラインが重なる3,164ドルを来週の予想レンジの下限と想定したい。
・3,276:21日線
・3,253:10日線
・3,229:50日線
・3,164:61.8%戻し、予想レンジの下限(日足)
※移動平均線の水準:5月23日のレポート配信時点
金価格のチャート
日足:4月以降

出所:TradingView
1時間足:4月以降

出所:TradingView
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。