米国株見通し(5/26~30):S&P500予想レンジ5,600~5,970、金利とエヌビディア決算警戒
5月26~30日の週の米国株は、高止まりする米金利にらみの状況が続くだろう。28日のエヌビディア決算では業績見通しが焦点となろう。S&P500の週間予想レンジは5,600~5,970。

記事の要点
・5月26~30日の週のS&P500予想レンジ:5,600~5,970
・米長期ゾーン利回りが上昇中、今週も金利にらみの状況が続くだろう
・28日にエヌビディアが25年2-4月期決算を発表する、焦点は業績の見通しにある
米国株の上昇にブレーキ、トランプ氏の関税発言でアップル週次7.6%安
5月19~23日の週の米国株は下落して終えた。米国株式市場の時価総額の約80%をカバーするS&P500は2.6%安と4月第1週以来の下げ幅となり、主要3指数のなかで最も下落した。ダウ平均やナスダック指数も2%超の下落で終え、株価の上昇にブレーキがかかった。
トランプ米大統領は米東部時間23日午前7時すぎに、アップル(AAPL)が米国内でiPhoneを生産しなければ少なくとも25%の関税を払うことになると、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。この日アップルの株価は3%安となった。週間では7.6%安と、マグニフィセントセブンのなかで最も下落した。
米株価指数 週間の変動率:2025年以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成
高止まりの米金利、身構える米国株
米国株の上昇が失速した主因は、米長期ゾーン利回りの上昇にある。10年債利回りは4.5%台で高止まりし、一時は2月中旬以来およそ3ヶ月ぶりに4.6%へ到達する局面が見られた。30年債利回りは5.1%まで上昇した。ブルームバーグのデータによれば、2023年10月以来の高水準である。
トランプ米政権が推し進める相互関税とそれによるインフレ再燃の可能性、そして大型減税による財政悪化の懸念が米長期ゾーン利回りの上昇要因となっている。これらの懸念は短期間で後退するものではない。ゆえに26~30日の週の米国株も金利の上昇リスクに直面する状況を警戒したい。
米長期ゾーン利回り:日足 2023年以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成
30日に4月の米個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)がある。ブルームバーグがまとめた市場予想では、トレンドを示す前年同月比でインフレが鈍化する見通しにある。ゆえに、予想外に上振れしインフレの粘着性を示す内容となれば、米長期ゾーン利回りの上昇要因となろう。米金利の上昇は米国株の下落要因となろう。
一方、PCEデフレーターが総じて予想の範囲内ならば、金利の上昇を抑制する要因になり得る。だが、現在の金利上昇がトランプ政策に起因する以上、単月のインフレ指標で米金利が低下しても、金利のリスクはくすぶり続けることが予想される。
米国 個人消費支出価格指数:直近1年間

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤の棒グラフとドット:4月の予想(24日時点)
28日にエヌビディア決算、投資家の期待に応える業績見通しを示せるか?
焦点は業績の見通し
28日の引け後に、米半導体大手のエヌビディア(NVDA)が2025年2-4月期(第1四半期 / 1Q)の決算を発表する。ブルームバーグがまとめたアナリスト予想では、売上高が前年同期比66.53%増の433.70億ドル、1株利益(EPS)は0.88ドル(前年同期は0.61ドル)が見込まれている。だが、EPSは前の四半期の0.89ドルを下回る見通しにある。
売上高と1株利益の推移:2022年以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤の棒グラフ:1Qのアナリスト予想、5月25日時点
売上高全体の9割を占めるまでに成長したデータセンターの収益は、前年同期比74.11%増の392.85億ドルが見込まれている。だが、前四半期比では10.41%増と、2024年5~7月期以来10%台での成長にとどまる見通しである。
データセンター売上高の推移:2022年以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤の棒グラフ:1Qのアナリスト予想、5月25日時点
決算の焦点は、他のハイテク企業と同じく業績の見通しとなろう。ブルームバーグがまとめた2025年5-7月期(第2四半期)のアナリスト予想では、売上高が前年同期比54.42%増の463.90億ドル、1株利益は1.01ドル(前年同期は0.68ドル)が見込まれている。データセンターの売上高は、前年同期比59.51%増の419.06億ドルが予想されている。
2025年5-7月期の業績見通し

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 5月24日時点
エヌビディア(NVDA)には追い風が吹いている。トランプ米大統領と大手半導体企業の幹部が今月13日にサウジアラビアを訪問した。エヌビディアは最新AI半導体「GB300グレースブラックウェル」をサウジ政府系ファンド傘下で人工知能(AI)スタートアップ企業のヒューメインに1万8,000基を納入し、かつ今後5年間で数十万基規模のエヌビディア製AI半導体を搭載したインフラを構築する計画もあるという。サウジアラビアの訪問に先立ち米商務省は、AI半導体の輸出規制を全面的に見直す方針を示した。
また、米ブルームバーグ通信は14日、トランプ米政権がアラブ首長国連邦(UAE)向けに、エヌビディア製の最先端半導体100万基以上の輸入を認める取引について検討していると報じた。
株価の見通し
ブルームバーグのデータによれば、エヌビディア(NVDA)の予想PERは30.04倍。2024年以降の平均30.15倍まで再び上昇し、競合のアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の27.58倍を上回る。
株価は4月7日の安値86.62ドルからフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準137.43ドルまで急反発する局面が見られた。しかしRSI(相対力指数)はデッドクロスへ転じ、MACD(移動平均収束拡散法)もこの動きに追随するムードにある。28日の決算で業績見通しが投資家の失望を誘えば、短期間で上昇幅が拡大した反動で、エヌビディアの株価は調整売りに直面することが予想される。このケースでは、20日線と50日線の攻防に注目したい。成長懸念で50日線を下方ブレイクする場合は、フィボナッチ・リトレースメントの攻防が焦点となろう。
一方、エヌビディアが投資家の期待に応える力強い業績見通しを示すことができれば、株価上昇の期待が高まろう。このケースでは76.4%戻しの水準137.43ドルの突破と、2月18日の高値143.44ドルのトライを想定したい。後者のレジスタンスラインを突破すれば、1月7日の取引時間中に付けた高値153.13ドルが視野に入ろう。
エヌビディアの株価チャート:日足 年初来

S&P500の週間展望とテクニカル分析
週間の予想レンジ下限は5,600
トランプ米政権の政策方針を考えるならば、インフレ再燃と財政悪化に対する懸念が短期で終息する可能性は低い。ゆえに今週のS&P500は金利上昇の懸念を意識する流れが続くと思われる。金利のリスクに加えて投資家の期待を下回るエヌビディアの決算が重なれば、情報技術セクターがS&P500の下落をけん引する展開が予想される。
相場の過熱感を示すRSI(相対力指数)は買われ過ぎの水準へ到達後、低下基調へ転じている。MACD(移動平均収束拡散)もデッドクロスへ転じつつある。いずれの動きも反発地合いの勢いが後退していることを示唆している。テクニカルの面でもS&P500の下落を警戒したい。
以下に注目のサポートラインをまとめた。目先の焦点は、サポートラインへ転換する兆しがある5,700の維持となろう。週間の予想レンジ下限は5,600レベル。5,639はフィボナッチ・リトレースメント38.2%戻しの水準にあたる(4時間足)。5,600のすぐ下には50日線が上昇している(日足)。また、5,580台はサポートラインへ転換する兆しが見られる(4時間足)。5,600前後は、テクニカルの面で強固なサポートゾーンを形成することが予想される。
・5,752:20日線(日足)
・5,700:サポートライン(4時間足)
・5,639:38.2%戻し(4時間足)
・5,600:予想レンジの下限(日足)
・5,585:50日線(日足)
※移動平均線の水準:5月23日時点
週間の予想レンジ上限は5,970
5月消費者信頼感指数などの経済指標で景気不安が一時的に後退する場合は、S&P500の下支え要因となろう。エヌビディア(NVDA)が投資家の期待を上回る業績見通しを示すことができれば、金利リスクを相殺し、S&P500は以下でまとめたレジスタンスラインをトライする展開が予想される。
週間の予想レンジ上限は節目の水準5,970レベル。先週20日に付けた高値の水準(5,973)である。パラボリックSARで買いシグナルが点灯する場合は、一目転換線と5,900のトライを想定したい。筆者の予想を超えてS&P500が反発すれば5,973を突破し、節目の6,000を視野に上昇幅が拡大する可能性が出てくる。
・6,000:節目の水準(日足)
・5,973:予想レンジの上限、5月20日の高値(4時間足)
・5,900:レジスタンスライン
・5,868:一目転換線(日足)
※転換線の水準:5月23日時点
S&P500のチャート
日足:2月以降

出所:TradingView
米国500のチャート
4時間足:4月以降

出所:IGチャート
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