アームの株価は決算発表後に急騰。自社製半導体事業の人気が好感された。一方、スマホ市況の不振や生産能力不足は業績の足かせといえる。
イギリスの半導体大手、アーム・ホールディングスの株価上昇の見通しに不透明感が漂っている。アームの株価の4日の終値は前日比で17%超の急騰となったものの、最高値からは36%安の水準。7月29日に行った2026年4-6月期決算発表では、3月に参入を表明した自社製半導体事業の人気が示され、株価上昇のきっかけを作ったが、株価は依然として不振から抜け出せていないとの見方も成り立つ。アームの株価にとって重荷になっているのは、スマートフォン市場の悪化がもたらす成長ペース鈍化への不安。さらに投資家の期待を集める自社製半導体事業も、生産能力を確保できるかどうかという課題に直面しているようだ。アームは中長期的な成長には自信をみせているとはいえ、株価上昇が改めて勢いづくタイミングは先送りになる可能性もある。
アームの株価(ARM)の4日の終値は280.56ドル。4日の取引ではイラン戦争和平への期待を背景とした株式市場全体の上昇ムードに乗って、前日比17.36%高の急騰となった。4-6月期決算発表があった7月29日以降では、決算発表翌日の30日にも7.40%高となっており、8月4日までの4営業日で合計24.75%高となっている。ただ、アームの株価は6月18日の最高値(439.46ドル)から決算発表当日(224.89ドル)までの間は、人工知能(AI)ブームの継続性への不安拡大により、合計48.83%安となっていただけに、勢いが完全に戻ったとはいえなさそうだ。アームの4日の終値は最高値からは36.16%安にとどまっている。
アームの4-6月期決算は総収入が前年同期比22.4%増の12.89億ドルで、前四半期(1-3月期)の20.1%増から成長が加速。調整ベースの1株当たり利益(EPS)は28.6%増の0.45ドルで、こちらも前四半期(9.1%増)よりも伸び率が大きくなった。ブルームバーグがまとめた直前の市場予想は、総収入が12.64億ドル、1株当たり利益が0.40ドル。発表された結果はいずれも予想を上回る好決算だった。
またアームは投資家の注目が集まっている自社製半導体事業の成長性に自信も示している。ルネ・ハースCEOは決算会見で、アームの自社製半導体事業の2027年3月期と2028年3月期の2年間での需要見込みは「20億ドルを超えた」と言及。前回決算発表があった5月以降、米国や中国で複数の顧客を獲得したという。
ハース氏は知的財産(IP)事業についても、NVIDIA(エヌビディア、NVDA)、アルファベット(GOOGL)、アマゾン(AMZN)、マイクロソフト(MSFT)、クアルコム(QCOM)の中央演算処理装置(CPU)にはアームの技術が用いられていると強調。4-6月期のデータセンター関連のロイヤルティ収入は前年同期比で「2倍以上になった」と説明している。アームのロイヤルティ収入は、顧客企業がアームの知的財産を用いて製造した半導体で得た収益に応じてアームが受け取る収入。4-6月期のロイヤルティ収入の実績は22.2%増の7.15億ドルで、前四半期(10.5%増)から成長が加速した。
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ただ、アームが29日に示した7-9月期の業績見通しは低調ともいえる水準に留まっている。総収入は前年同期比21.6%増の13.80億ドルとされ、4-6月期の実績(22.4%増)から成長が鈍化する見通し。ジェイソン・チャイルドCFOは、ロイヤルティ収入の伸び率は「10%台前半」まで低下するとし、メモリ半導体の供給不足や価格上昇を背景としたスマートフォン市況の悪化を要因に挙げた。アームの知的財産は半導体の省電力化に効果を発揮する点への評価が高く、バッテリーの容量に制限があるスマートフォン向けの半導体に活用されてきた。アームは、顧客企業がアームの知的財産を用いた半導体製造の契約を結ぶ際にアームが受け取るライセンス収入については、4-6月期の伸び率が「約30%」になるとしているが、ロイヤルティ収入の不振をカバーしきれないようだ。
さらに投資家の期待を集めている自社製半導体事業も順風満帆とはいえなさそうだ。ハース氏は決算会見で2028年3月期までに見込まれている20億ドル超の需要に対して、10億ドル分については「必要な生産能力を確保した」と表明しつつも、この10億ドルを超える分については前回決算発表以降の約90日間で「必要な供給を行えるとの自信が高まった」と述べるにとどまった。ハース氏はAIブームによる半導体需要の高まりの結果、ウェーハや半導体検査装置などあらゆる関連製品が品薄となっていると説明し、「自前の工場を持っている半導体事業者でも需要に応えきれない状況が続いている」としている。アームは3月に自社製半導体事業への参入を発表した際、生産は台湾積体電路製造(TSMC、TSM)に委託するとしていた。
アームは半導体のサプライチェーン(供給網)に余裕が生まれるのは2029年3月期か2030年3月期になるとし、自社製半導体事業で2031年3月期に150億ドルの収入を得られるとの見通しは崩していない。ただ、世界的な半導体生産能力の不足がアームの自社製半導体事業の成長の足かせになるという構図は当面続いていくとみられ、アームの株価上昇の再加速を難しくする材料といえそうだ。
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