米国株見通し(8/4週):S&P500予想6050~6350、景気不安で下落警戒
雇用統計ショックで米国の景気不安が高まっている。今週のS&P500種株価指数は下落相場を警戒したい。同指数が原資産の株価指数CFD「米国500」の週間予想レンジは6050~6350。売買ポイントについてIG証券のアナリストが分かりやすく解説。

要点
・7月雇用統計は米労働市場の軟化を示唆した
・7月ISM製造業景気指数も予想を下回り、米国の景気不安が高まっている
・今週のS&P500は下落相場を想定、半導体株の売りを警戒したい
・米国500の週間予想レンジは6050~6350
雇用統計ショック、株高に冷や水、今週の米国株は下落警戒
今週(8/4週)の米国株は下落相場を警戒したい。そう考える理由の一つが雇用統計ショックである。
米労働省が1日発表した7月の雇用統計によれば、非農業部門雇用者数変化が7.3万人増と、ブルームバーグがまとめた市場予想10.4万人増を下回った。5月分は14.4万人増から1.9万人増へ、6月分は14.7万人増から1.4万人増へそれぞれ大幅に下方修正された。
今年に入り3ヶ月平均の雇用者数の伸びが減少の一途にある。5月と6月の下方修正を受け、直近3ヶ月(5〜7月)平均の雇用者数の伸びは3.5万人と、新型コロナウイルス禍後で最低水準となった。
米国 非農業部門雇用者数変化の推移:直近1年間の3ヶ月平均

ブルームバーグのデータで作成
インフレリスクよりも景気リスク、9月利下げ観測が急浮上
1日の米株式市場では主要指数が軒並み下落した。米債市場では、10年債利回りが4.4%付近から4.2%まで急低下した。景気の先行き不安を意識したリスク回避の反応である。
注目したいのが、金融政策の方向性を織り込んで動く米2年債利回りの反応だ。ブルームバーグのデータによれば、1日の米債市場で一時3.665%まで急低下した。27ベーシスポイント(bp)の低下幅は、昨年8月上旬以来の大きさである。
米国2年債利回り 日次の変動幅(bp):2024年7月~2025年8月1日

一方、短期金融市場では、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ確率が90%近くまで跳ね上がった。利下げ判断を巡りパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が慎重な姿勢を維持したことで、前日(7/31)の利下げ確率は40%を下回る状況だった。
7月雇用統計の結果に対する米2年債利回りと短期金融市場の反応は、インフレリスクよりも景気リスクを米FRBが重視せざるを得ない状況に陥る可能性を、早くも市場参加者が意識し始めていることを示唆した。
9月米連邦公開市場委員会(FOMC) 利下げ確率の推移:6月以降

ブルームバーグのデータで作成 / OISに基づく予想確率、8月1日時点
※マイナス:利下げ
半導体株の売りを警戒
雇用統計だけでなく、同日に発表されたISM製造業景気指数も景気の先行き不安を高める内容だった。7月の総合指数は48.0と前月の49.0から低下し、5カ月連続で景気判断の分かれ目(拡大と縮小の分岐点)となる「50」を下回った。
各項目では、先行指標となる新規受注は47.1と小幅に改善はしたが、6カ月連続で50を下回った。雇用指数は43.4と2カ月連続で縮小し、かつ6カ月連続で50を下回った。製造業の雇用が低迷していることを示唆した。
米国 ISM製造業景気指数の推移:過去1年間

ブルームバーグのデータで作成
景気不安の高まりは、4月以降の米株高を支えてきた半導体株の売りを促す可能性がある。すでにその兆候は見られる。米連邦公開市場委員会(FOMC)以降、主力半導体株の売り圧力が高まっていることが分かる。
先週はAI投資に集中しているメタ・プラットフォームズ(META)とマイクロソフト(MSFT)が決算を発表した。いずれもアナリスト予想を上回る好決算で両社の株価は上昇した。
半導体はAIインフラに欠かせない。メタ・プラットフォームズとマイクロソフトの好決算は、AI半導体需要の拡大につながる。それでも半導体株が下落した状況は、4月以降の株高で割高感が意識され始めているサインと考えられる。
このタイミングで景気不安が強まっている。今週の米株式市場では、半導体株がS&P500の調整売りをけん引する可能性がある。
米半導体株の変動率:7月28日~8月1日

ブルームバーグのデータで作成
米国500の週間見通しとテクニカル分析
週間予想レンジの下限:6050
S&P500のトレンドを日足チャートで確認すると、1日の市場で25日線を一気に下方ブレイクした。RSIは急速に低下し50を下回っている。テクニカルの面でもS&P500の下落相場を警戒する局面にある。
同指数が原資産の株価指数CFD「米国500」の週間予想レンジ下限を6050と想定したい。この水準は、4月の安値と7月高値のS&P500フィボナッチ・リトレースメント23.6%戻しに当たる。米国500の4時間足チャートを見ると、サポートラインへ転換する可能性がある水準でもある。
米国500が6050レベルをトライするサインとして、以下でまとめたサポートラインの攻防が焦点となろう。特に、S&P500の50日線や米国500のフィボナッチ・リトレースメントが密集している6100~30ゾーンの攻防に注目したい。このサポートゾーンで相場が反発する場合は、再び上昇相場へ回帰するサインになり得る。
サポートライン
・6200:サポートライン(4時間足)
・6175:半値戻し(4時間足)
・6130:50日線(日足、8/1時点)
・6100:半値戻し(日足)、61.8%戻し(4時間足)
・6050:予想レンジの下限(4時間足)、23.6%戻し(日足)
週間予想レンジの上限:6350
米国500の4時間足チャートにプロットしたRSIとストキャスティクスは、「売られ過ぎ」の水準まで低下している。短期的な相場の反発を意識する局面にある。しかし、上述の株安要因を重視するならば、米国500が反発しても今週はその幅が限定的となることが予想される。
週間の予想レンジ上限をフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準6350と想定し、まずは、原資産のS&P500が25日線を再び上方ブレイクできるかどうかを確認したい。この移動平均線がレジスタンスラインへ転換する場合、米国500は上述のサポートラインを意識する状況が続くと予想する。
一方、S&P500が25日線を完全に突破すれば、米国500は6300を視野に反発することが予想される。この水準はフィボナッチ・リトレースメント38.2%戻しに当たる。半値戻しの6324レベルも突破すれば、予想レンジの上限6350のトライを意識したい。
レジスタンスライン
・6350:予想レンジの上限、61.8%戻し(4時間足)
・6324:半値戻し(4時間足)
・6300:38.2%戻し(4時間足)
・6285:25日線(日足、8/1時点)
S&P500のチャート
日足:4月以降

出典:TradingViewのチャート
米国500のチャート
4時間足:5月下旬以降

出典:IG証券
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。