米国株見通し(6/4):ナスダック100、1.5%高で強気維持、ISM指数と雇用統計で22,000視野
6月相場入りの米国株。主要3指数は5月からの強気地合いを維持している。ナスダック100は前週末比1.5%高にある。ISM非製造業景気指数と雇用統計次第で節目の22,000が視野に入る。6日までの予想レンジは21,000-22,160。詳細はレポートを参照。

記事の要点
・6月相場入りした米国株、関税懸念を抱えたまま強気地合いを維持している
・ナスダック100の焦点は節目の22,000ポイントの突破
・経済指標にらみ、5月ISM非製造業景気指数と同月雇用統計に注目
・ナスダック100の予想レンジ:21,000-22,160ポイント
※IG証券ではナスダック100を「米国テク株100」で取引可能

ブルームバーグのデータで筆者が作成
他の市場の動きからも、今の米国株の地合いの強さがうかがえる。
トランプ米大統領は先月30日、鉄鋼とアルミの関税を50%に引き上げることを表明した。2日の国際商品市況では米国のアルミニウム、鉄鋼そして銅の価格が上昇した。資源価格の上昇はインフレ再燃の可能性を高める。4月に米相互関税が発表されて以降、米債市場ではこの懸念が金利押し上げの一因となり、10年債利回りは4.4%台で高止まりしている。20年債と30年債の超長期金利は5%台をうかがう状況にある。昨日は市場予想を上回った4月JOLTS求人件数も米金利の押し上げ要因となった。
米金利のチャート:日足 年初来

ブルームバーグのデータで筆者が作成
NY金相場の動きにも注目したい。3日のIGコモディティレポートで述べたとおり、金相場の上昇期待が高まっている。スポットの金価格は2日、最高値3,500ドルを基点としたトライアングルの上限(レジスタンスライン)を大陽線で上方ブレイクした。昨日は強い経済指標による米ドルの買い戻しで反落したが、5月下旬以降のゴールド買いは米金利の上昇と同じく、トランプ関税によるインフレ再燃を警戒する動きと考えることができる。
本来であれば、インフレの再燃を意識した米金利の上昇は株安の要因である。金価格の上昇は安全資産の需要が再び高まっていることを示唆している。それでも米国株が5月株高の流れを維持している状況は、地合いの強さを示唆している。
スポット金価格のチャート:日足 2月以降

出所:TradingView
経済指標にらみ、5月ISM非製造業景気指数と雇用統計に注目
1日のIG米国レポートで指摘したとおり、今週の米国株はトランプ関税の影響が出始める5月指標で動くことが予想される。
今日はISM非製造業景気指数が発表される。ブルームバーグの市場予想は52.0と、4月の51.6から改善の見通しにある。昨日の4月JOLTS求人件数に続き予想を上回る場合は、米株高の要因となろう。
ISM製造業景気指数は48.5と市場予想の49.5を下回った。非製造業景気指数も予想外に下振れる場合は、調整売りによる反落を想定したい。
ISM指数の動向:過去1年間

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤のドット:5月予想
6日に5月の雇用統計が発表される。米連邦準備理事会(FRB)のウォラー理事は2日のソウル講演で、トランプ政策による失業率の上昇がインフレを一時的に押し下げる見解を示し、年内の利下げを示唆した。
ウォラー理事が言及したことで失業率が米国株の変動要因となる可能性がある。注目は、ブルームバーグ予想の4.2%を上振れる場合である。堅調な労働市場がアメリカの景気を支えている。その土台が揺らぐことを意味する失業率の上昇は、株安の要因になり得る。非農業部門雇用者数変化の下振れも重なれば、米国株の急反落を警戒したい。
だが、失業率の上昇は利下げ期待を高める可能性がある。非農業部門雇用者数変化が予想の範囲ならば利下げ期待の方が意識され、米国株の下落幅は限定的または上昇する展開も想定しておきたい。
米雇用統計 各項目の動向:過去1年間

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤の棒グラフとドット:5月予想
ナスダック100の見通しとテクニカル分析
予想レンジ上限:22,160
冒頭で述べた通り、6月に入りナスダック指数は強気地合いを維持している。注目はナスダック100である。この指数に連動するETF「インベスコQQQトラスト・シリーズ1(QQQ)」とS&P500に連動する主要なETF(VOO、SPY)、および約3,600の銘柄に分散投資できる「バンガード・トータル・ストック・マーケットETF(VTI)」の資金フローの動向をブルームバーグのデータで確認すると、直近1週間はQQQへの資金流入が拡大している。直近1ヶ月ではVOOに次ぐ資金流入となっている。
現在の強気地合いも考えるならば、経済指標次第でナスダック100は下で述べるレジスタンスラインをトライし、節目の22,000ポイントの突破を想定したい。
米国株ETFの資金フローの動向

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 6月3日時点
短期サポートラインの維持もナスダック100が強気地合いにあることを示唆している(日足チャート)。今日以降もこの強気地合いを維持する場合、目先の焦点は節目の22,000ポイントの攻防となろう。このラインを目指すサインとして、米国テク株100(ナスダック100が原資産の株価指数CFD)の5月29日高値21,805ポイントの攻防に注目したい(1時間足チャート)。この水準の上方ブレイクは、節目の22,000ポイントを視野に上昇幅が拡大するサインと捉えたい。強い経済指標は22,000ポイントをトライする材料となろう。
ナスダック100はボラティリティが拡大しやすい状況にある。ゆえに22,000ポイントを上方ブレイクすれば、フィボナッチ・エクステンション100%の水準22,163レベルが視野に入る可能性がある。2月19日に付けた取引時間中の最高値22,222ポイント手前のこのラインを6日までの予想レンジの上限と想定したい。
なお、筆者の想定を超えて22,163ポイントを突破する場合は、22,222ポイントのトライを意識したい。
・22,163:予想レンジの上限、フィボナッチ・エクステンション100%(1時間足)
・22,000:節目の水準(1時間足、日足)
・21,805:5月29日高値(1時間足)
予想レンジ下限:21,000
現在のナスダック100は、22,000ポイントを目指す状況にある。別の見方をすれば、高値の警戒感が意識されやすい状況でもある。関税懸念を抱えての株高であることも考えるならば、急反落の可能性を常に意識したい。5月指標がそのトリガーとなる可能性がある。
ナスダック100の下落局面では、21,000ポイントの維持が焦点となろう。この水準は、5月30日の米国テク株100の安値水準(21,028ポイント)である(1時間足チャート)。また、ナスダック100の21日線が21,022ポイントまで上昇している(日足チャート)。これらテクニカルラインが密集する21,000ポイントを6日までの予想レンジの下限と想定したい。
米国テク株100が21,000ポイントをトライするサインとして、1時間足チャートのフィボナッチ・リトレースメントの攻防に注目したい。23.6%戻しの21,537ポイントと38.2%戻しの21,371ポイントは、サポートラインへ転換する兆しが見られる。サポートラインとして意識された経緯のある61.8%戻し21,103ポイントの下方ブレイクは、予想レンジの下限21,000ポイントをトライするサインと捉えたい。
・21,537:フィボナッチ・リトレースメント23.6%(1時間足)
・21,371:フィボナッチ・リトレースメント38.2%(1時間足)
・21,237:半値戻し(1時間足)
・21,103:フィボナッチ・リトレースメント61.8%(1時間足)
・21,000:21日線、5月30日安値、予想レンジの下限(1時間足)
ナスダック100のチャート
日足:2月以降

出所:TradingView
米国テク株100のチャート
1時間足:4月以降

出所:TradingView
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