原油価格、急騰 WTI一時64ドル イラン核施設に攻撃の可能性?
WTIは日本時間21日に一時64ドル台まで急騰。イスラエルがイランの核施設への攻撃を準備していると報じられことが材料視された。

原油価格が国際情勢で揺れている。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し)は日本時間21日の取引で一時、1バレル=64ドル台まで急騰。約1か月ぶりの高値をつけた。イスラエルがイランの核施設への攻撃の準備をしているとCNNが報じたことが材料視された。またイラン側からは核開発をめぐる国際社会との協議の進展に否定的な発言も相次いでおり、イランに対する経済制裁解除が原油供給増につながるとの見通しは後退している。一方、ウクライナ情勢では、アメリカのドナルド・トランプ大統領が停戦への前進を強調しており、原油市場に値下がり材料を提供した。原油価格の今後の見通しをめぐっては、引き続き、世界経済悪化への不安とOPECプラス増産前倒しが下落圧力として働きつつも、イラン情勢急転への懸念が原油価格を下支えすることも考えられそうだ。
WTIは一時、64.19ドルまで急騰 イスラエルがイランの核施設への攻撃準備か
WTI(翌月渡し、WTI原油)は日本時間午前7時15分ごろに1バレル=64.19ドルをつけた。ブルームバーグによると、4月23日につけた64.87ドル以来の高値となる。WTIは20日のニューヨーク市場での終値では62.56ドルをつけていたが、一気に2.6%の上昇を見せたことになる。

原油価格を急騰させたのは、CNNが複数の米情報機関関係者の話として、「イスラエルがイランの核施設への攻撃を準備している」と報じたこと。CNNはイスラエルの指導部が最終判断を下したかは明らかではないとしつつも、「ここ数か月で、イスラエルによるイランの核施設への攻撃の可能性は大きく跳ね上がった」との関係者のコメントを引用している。
イランのハネネイ師は核合意の進展を否定 経済制裁解除への楽観は後退
イラン情勢をめぐっては、イランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師がテレビ演説で、核開発をめぐる米国との協議はまとまらないとの見通しを示したとも20日に報じられている。また、イランのアッバス・アラグチ外務相は16日、ソーシャルメディアのXに「イランはいかなるシナリオの下でも、苦心の末に獲得した平和目的でのウラン濃縮の権利を放棄することはない」と投稿。イランが核合意に慎重な姿勢を示したとして、WTIの値上がり材料となっている。
イランをめぐっては、米NBCが14日に放送したイラン要人のインタビューが核合意に前向きな姿勢を示したと受け止められていた。原油市場では国際社会によるイランへの経済制裁緩和が原油供給の増加につながるとの思惑が広がり、原油価格の下落を招いた。しかしイランがその後にみせた核合意への慎重姿勢と、イスラエルによるイラン核施設攻撃準備報道は、イラン情勢の一層の悪化を予感させ、経済制裁解除への楽観的な見方は後退したようだ。
ロシアとウクライナの協議は前進か 需要減やOPECプラス増産も原油価格下押し
一方、ウクライナ情勢をめぐる動きは原油価格の下落要因となっている。米国のドナルド・トランプ大統領とロシアのウラジミール・プーチン大統領は19日に電話で会談。トランプ氏は会談後、自身のSNSトゥルースソーシャルへの投稿で、「ロシアとウクライナは停戦と、さらに重要な終戦にむけた協議を即時に始めるだろう」と言及。将来的にはロシアと米国の貿易がロシアに巨大な雇用と富をもたらし、ウクライナも復興の過程で大きな恩恵を受けることになるともした。ブルームバーグによると、WTIは19日には1バレル=63.39ドルまで上昇する場面もあったが、トランプ氏の投稿後には62.29ドルまで値下がりした。
また、世界経済の見通し不透明感が続く中、原油市場では需要の弱さも意識されやすい状況だ。米エネルギー情報局(EIA)が21日午前10時30分(日本時間21日午後11時30分)に発表する16日段階での原油在庫量(戦略備蓄除く)が市場予想から上振れれば、原油価格には下落圧力がかかる可能性もある。ブルームバーグによると、16日段階での原油在庫量は1週間前比で110.0万バレル減になると見込まれている。

こうした中、原油価格の今後の見通しは、世界経済の不透明感と国際情勢の不安定化という2つの不確定要素にさされることになる。世界経済悪化への懸念は、サウジアラビアやロシアなどOPECプラス内の8か国が段階的増産のペースを前倒ししていることとあわせて原油価格を下押しするとみられるが、イラン情勢の急激な悪化への不安が原油価格下落のペースを抑える展開も想定されそうだ。
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