原油価格下落進行 WTIは60ドル台 OPECプラス増産前倒し見通し
WTIは28日も60ドル台を記録。OPECプラスが3度目の増産前倒しを決めるとの見通しが材料視されている。イラン情勢改善への期待も下落要因だ。

原油価格の下落が進んでいる。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し)は日本時間28日未明の取引で一時、1バレル=60ドル台を記録。1週間前につけていた64ドル台からの下落傾向が続いている。サウジアラビアやロシアなどOPECプラス内の8か国が31日に3度目の増産前倒しを検討すると報じられていることが値下がり圧力として働いている。またアメリカとイランとの核協議に前向きな動きが出ていることも原油供給の増加を予感させる材料。さらに米国の原油在庫量は原油需要の弱さを示しており、原油価格には下落要因が積み重なっている形だ。一方、米国のドナルド・トランプ大統領がウクライナ情勢をめぐり、ロシアのウラジミール・プーチン大統領への批判を強めていることは原油高の材料となりえる。ただ、OPECプラスの増産への前向き姿勢は今後も続いていく可能性があり、原油市場の下押し圧力としての影響度が大きくなりそうだ。
WTIは一時、60ドル台に 1週間前の64ドル台から下落
WTI(翌月渡し、WTI原油)は日本時間28日午前0時40分ごろに1バレル=60.26ドルをつけた。ブルームバーグによると、23日につけた60.02ドルには届かなかったものの、下落の流れが続いている形だ。原油市場では21日、イスラエルがイランの核施設に対する攻撃を準備しているとの報道が材料視され、一時、64.19ドルをつける場面もあったが、6%超の値下がりとなった形だ。

OPECプラスは3度目の増産前倒しを検討 計画よりも6か月前倒しのペース
原油価格下落の背景となっているのは、OPECプラス内8か国による増産の動きだ。サウジやロシアなどの8か国は31日に、当初の予定を1日前倒ししてオンライン会合を開き、7月の生産量について協議する見通し。ブルームバーグは22日の段階で、8か国が日量41.1万バレルの増産を検討していると報じていた。報道通りであれば、7月の生産量は日量3178.6万バレルとなり、2024年12月5日に発表された段階的増産計画で予定されていた2026年1月の水準に6か月前倒しで到達する形だ。

8か国は4月3日と5月3日にも増産計画の前倒しを決め、原油価格に下落圧力をかけてきた。ブルームバーグによると、サウジアラビアは割当量以上に原油を生産しているカザフスタンなどに不満を抱いているといい、8か国全体として増産を進めて原油価格を下げることで、割り当て以上の生産のメリットを打ち消す狙いがあるとみられている。
イランの核協議は合意へ前進? 米国の原油在庫積み上がりも価格下落要因に
また、イラン情勢をめぐっては米国とイランの間の核協議に前向きなムードが出てきた。米国のスティーブ・ウィトコフ中東特使とイランのアッバス・アラグチ外相は23日にイタリアで協議を実施。トランプ氏は25日、記者団に対して「非常に良い協議だった」と述べた。アラグチ氏は協議前、ソーシャルメディアのXへの投稿で、ウラン濃縮を認められるのであれば合意の可能性があるとの見方を示し、「決断の時だ」としていた。米国とイランが核協議で合意できれば、イランに対する経済制裁が緩和される筋書きが原油供給の増加を連想させ、原油価格を下落させることも考えられる。
さらに原油市場では需要の弱さも下落圧力として働いている。米エネルギー情報局(EIA)が21日に発表した16日段階の原油在庫量(戦略備蓄除く)は1週間前比で132.8万バレルの増加。ブルームバーグがまとめた市場予想では110.0万バレルの減少が見込まれていたが、想定外の在庫積み増しとなった形だ。在庫の積み上がりは原油需要の弱さの表れといえ、原油価格の値下がり要因として意識されている。

トランプ氏はプーチン氏を批判 ウクライナへのミサイル攻撃「気に入らない」
一方、ウクライナ情勢は原油価格を上昇させる材料となってきた。トランプ氏は27日正午前、自身のSNSトゥルースソーシャルへの投稿で、プーチン氏について「火遊びをしている!」と批判。「もしも私がいなければ、ロシアには多くの本当に悪い出来事が起きていただろうことをプーチンは気づいていない」とした。
トランプ氏は25日にも記者団に対し、ロシアがウクライナの首都キーフなどに対するドローンやミサイルによる攻撃をしかけていることについて「プーチンはロケットを都市に撃ち込み、人々を殺している。まったく気に入らないことだ」としていた。トランプ氏は19日にプーチン氏と電話会談した際には、停戦に楽観的な見方を示していたが、状況は一変したようだ。
米議会では対ロシア経済制裁法案に支持 原油価格上昇要因にも
米国が今後、ロシアに対する追加の経済制裁などの対応をとった場合には、ロシア産原油の輸出が難しくなるとの思惑が原油価格上昇を招く可能性がある。米国議会では超党派の82人の議員団からロシアに対する経済制裁を定める法案が提出され、ロシアの原油などを輸入した国に対して500%の関税を課すことも盛り込まれている。共和党のリンゼイ・グラム上院議員は27日に公開した文書で、「中国やインドが安い原油を購入することを止めれば、プーチン氏の戦争機構はガタつきながら動きを止めるだろう」としている。
ただ、足元の原油市場では間近に迫ったOPECプラスへの関心が高く、原油価格の下落が意識されやすい状況。OPECプラス内の8か国による増産前倒しが今後も続くとの見方が浸透していけば、原油価格の下落がさらに進むことも想定される。
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