原油価格、反発短命 WTIが60ドル台 イランは核合意に前向き?
WTIは15日に60ドル台まで下落。米中関税大幅引き下げ合意後の反発が止まった。供給と需要の両面から下落圧力が重なっていることが要因だ。

原油価格の反発にブレーキがかかった。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し)は日本時間15日の取引で1バレル=60ドル台まで下落。アメリカと中国の関税大幅引き下げ合意後の反発の勢いが失われた。14日に発表された米国の原油在庫量が市場予想に反して急増したことや、日本時間15日朝にイラン要人による核合意への前向きな発言が報じられたことが材料視された。原油先物市場では供給と需要の両面で値下がり圧力が目立つ展開が続いており、今後も下落方向の動きが意識されそうだ。
WTIは15日に60.75ドルまで下落 米中大幅関税引き下げ後の反発が停止
WTI(翌月渡し、WTI原油)は日本時間15日午後4時台に1バレル=60.75ドルをつけた。ブルームバーグによると、WTIは日本時間14日未明には63.90ドルをつける場面もあったが、2日足らずで5%近い値下がりを記録したことになる。8日の米国とイギリスによる関税協議での大枠合意や、12日の米中の関税大幅引き下げ合意が世界経済の見通し悪化に歯止めをかけることで生じた価格上昇の勢いがストップした。

米国の原油在庫が想定外の大幅増加 需要の弱まり示唆
原油先物市場の見通しを最初に変化させたのは、原油需要の弱さを示す経済指標だ。米エネルギー情報局(EIA)が14日に発表した9日時点の原油在庫量(戦略備蓄除く)は1週間前比で345.4万バレルの増加。ブルームバーグがまとめた市場予想が203.2万バレル減少だったことを考えれば、想定外の在庫の大幅増加といえる結果だった。原油在庫の積み増しは需要の弱さを示唆する結果といえる。

イラン最高顧問が核合意に前向き発言 トランプ氏もイランとの交渉に意欲
さらに米国東部時間の14日午後6時半ごろ(日本時間15日午前7時半ごろ)には、米NBCがイラン要人の話として「イランは核合意に署名する用意がある」と報じ、原油供給が上積みされるとの思惑が原油価格の下落要因となった。
NBCはイランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師の最高顧問であるアリ・シャムハニ氏がインタビューに対し、イランに対するすべての経済制裁が即時に解除されるのであれば、核兵器を決して製造しないことを確約するだけでなく、軍事転用可能な高濃縮ウランを廃棄し、ウラン濃縮を民生用レベルにとどめることに合意し、監視のための国際査察を受け入れると説明。今日条件が満たされれば合意文書に署名するかとの質問に、「イエス」と答えたという
イランに対しては米国のドナルド・トランプ大統領も友好的な姿勢をにじませている。トランプ氏は14日、湾岸協力会議(GCC)の首脳会議が開かれているサウジアラビアで演説し、イランがヒズボラやハマスなどへの支援で近隣国に敵対的な立場をとっていると批判。「イランは核兵器を持つことはできない」と強調した。しかし同時に「イランは今よりもはるかに明るい未来を得ることができる」ともしており、「イランと交渉を妥結させたいと考えている」と言及した。
対イラン経済制裁解除の思惑や世界経済の見通し不安が原油価格下落要因に
EIAによると、イランは2023年の原油などの石油生産量で世界9位。世界2位のサウジアラビアや世界3位のロシアなどで作るOPECプラスには参加していない。今後、仮にイランに対する経済制裁が解除されるとの見通しが強まることがあれば、原油供給が増えるとの思惑が強まりそうだ。原油先物市場ではOPECプラスによる増産ペースの加速も材料視されており、供給面からの価格下落圧力が意識されやすい状況といえる。
また世界経済をめぐっては悪化懸念が拭えない。米国は依然として自動車や鉄鋼、アルミニウムに対する25%関税を課しているうえ、個別協議で合意にこぎつけた英国や中国からの輸入品を含め、相互関税の10%の一律部分は課したままだ。こうした異例の高関税が世界経済の重荷となる可能性は消えておらず、原油需要が弱まるとの見通しが価格下落圧力として働いている。
供給と需要の両面から原油価格に下落圧力がかかる中、投資家の原油価格上昇への期待は削がれている。WTIの今後の見通しをめぐっては、供給増大や需要低下を感じさせる材料が出るたびに、下落圧力が強まっていく展開が考えられそうだ。
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