ドル円週間見通し (8/4週):145.90~149.40円予想、円安要因が米雇用統計ショック相殺か
今週のドル円は、米雇用統計ショックの余波と円安要因が交錯する展開が予想される。変動幅の拡大を警戒したい。週間の予想レンジは145.90~149.40円。注目の売買ポイントについてIG証券のアナリストが分かりやすく解説。

要点
・雇用統計ショックで9月の米利下げ確率が急上昇している
・景気不安で米金利が急低下、ドル高回帰のムードに冷や水
・円安要因が雇用統計ショックを相殺する展開を想定
・ドル円の週間予想レンジは145.90~149.40円
米雇用統計ショック、一転して9月の米利下げが急浮上
今週のドル円(USD/JPY)も上下に大きく振れる不安定な相場を予想する。そう考える理由の一つが、米雇用統計ショックである。
米労働省が1日発表した7月の雇用統計によれば、非農業部門雇用者数変化が7.3万人増と、ブルームバーグがまとめた市場予想10.4万人増を下回った。5月分は14.4万人増から1.9万人増へ、6月分は14.7万人増から1.4万人増へそれぞれ大幅に下方修正された。失業率は4.2%へ上昇した。
米雇用統計 各項目の推移:直近1年間

ブルームバーグのデータで作成
今年に入り3ヶ月平均の雇用者数の伸びが減少の一途にある。5月と6月の下方修正を受け、直近3ヶ月(5〜7月)平均の雇用者数の伸びは3.5万人と、新型コロナウイルス禍後で最低水準となった。
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労働市場の軟化を示唆した7月雇用統計を受け、金融政策の方向性を織り込んで動く米2年債利回りは、一時3.665%まで急低下した。低下幅は27.5ベーシスポイント(bp)。ブルームバーグのデータによれば、昨年8月上旬以来の大きさである。
米国2年債利回り 日次の変動幅(bp):2024年7月~2025年8月1日

ブルームバーグのデータで作成
短期金融市場では、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ確率が90%近くまで跳ね上がった。利下げ判断を巡りパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が慎重な姿勢を維持したことで、前日(7/31)の利下げ確率は40%を下回る状況だった。
米2年債利回りと短期金融市場の急変動は、7月雇用統計の結果が米FRBの早期利下げの可能性を高めたことを、市場参加者が早くも意識し始めていることを示している。
9月米連邦公開市場委員会(FOMC) 利下げ確率の推移:6月以降

ブルームバーグのデータで作成 / OISに基づく予想確率、8月1日時点
※マイナス:利下げ
高まる景気不安、米ドル高回帰に冷や水
景気不安を高めたのは雇用統計だけでない。同日に米国の供給管理協会(ISM)が発表した7月の製造業景気指数も景気の先行き不透明感を示唆した。7月の総合指数は48.0と前月の49.0から低下し、5カ月連続で景気判断の分かれ目(拡大と縮小の分岐点)となる「50」を下回った。
各項目の結果を見ると、先行指標となる新規受注は前月の46.4から47.1へ小幅に改善した。しかし、6カ月連続で50を下回った。一方、雇用指数は43.4と2カ月連続で縮小し、かつ6カ月連続で50を下回る状況にある。トランプ米大統領の思惑とは逆に、製造業の雇用が低迷している。
米国 ISM製造業景気指数の推移:過去1年間

ブルームバーグのデータで作成
景気不安の高まりは、米金利の低下要因として意識されよう。この状況は、米ドル高回帰のムードに冷や水を浴びせるだろう。
実際、1日の市場でドル指数(DXY)は節目の100ポイント付近で急反落し、日足ローソク足は大陰線となった。レジスタンスラインの突破も「だまし」となり、再び50日線のトライと下方ブレイクが視野に入る。
ドル指数のチャート:日足 年初来

出典:TradingView
円安要因が米雇用統計ショックを相殺か
米金利の低下は日米利回り格差の縮小も促すだろう。米雇用統計ショックの余波が残る可能性も考えるならば、少なくとも今週前半のドル円(USD/JPY)は下値トライを意識したい。
日米利回り格差の動向:4月以降

ブルームバーグのデータで作成
しかし、ドル円の下落局面では急反発を警戒したい。円安要因として政局の不透明感、財政拡張路線への傾斜とそれに伴う「悪い金利上昇」への懸念、そして利上げ判断で日銀が慎重姿勢を維持している状況が、米雇用統計ショックを相殺する可能性があるからだ。
ドル円の週間見通しとテクニカル分析
週間予想レンジの下限:145.90
今週、ドル円(USD/JPY)が下値をトライする局面では、以下にまとめたサポートラインの攻防に注目したい。
週間の予想レンジ下限は145.90レベルを想定。すぐ上の146.00レベルは、レジスタンスラインからサポートラインへの転換が確認された水準である。すぐ下の145.88レベルは、7月1日の安値と8月1日高値のフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準に当たる。
週明け4日の早朝時間に、8月1日の安値147.29レベルを下方ブレイクする局面が見られた。米ドル安・円高基調の流れが続いていることを考えるならば、147.00のトライを想定したい。147.00のブレイクは145.90をトライするサインと捉えたい。
1日の日足ローソク足は大陰線となった。日足チャートのRSIは50割れが目前に迫っており、MACDもデッドクロスへ転じドル円の弱気サインが点灯している。想定を超える下落によりドル円が予想レンジの下限145.90を下方ブレイクする場合は、日足の一目雲の下限の維持が焦点に浮上しよう。今週8日時点でこの下限は144.80台で推移する。
サポートライン
・147.00:サポートライン(45分足)
・146.00:サポートライン(日足)
・145.90:予想レンジの下限、61.8%戻し(日足)
・144.82:一目雲の下限(今週8日時点、日足)
週間予想レンジの上限:149.40
45分足チャートのRSIとストキャスティクスは「売られ過ぎ」の水準にある。下落局面では急反発を警戒したい。ドル円(USD/JPY)の反発局面では、以下にまとめたレジスタンスラインの攻防に注目したい。
週間の予想レンジ上限は149.40レベル。この水準は、現時点での今年高安の半値戻しの水準に当たる。このテクニカルラインのサポート転換は、新たなレジスタンスラインとして浮上した151.00を再びトライするサインとなろう。
ドル円が149.40レベルを目指すサインとして、現在147.90台で推移している10日線の攻防に注目したい。ドル円が10日線を完全に突破すれば148円台の攻防を想定したい。45分足チャートで示した148.15と148.75の2つのラインの攻防に注目したい。いずれの水準もレジスタンスラインへ転換する可能性がある。後者の148.75を突破する場合は、149.00のトライを意識したい。
レジスタンスライン
・149.40:予想レンジの上限、半値戻し(日足)
・149.00:レジスタンスライン(45分足)
・148.75:レジスタンスライン(45分足)
・148.15:レジスタンスライン(45分足)
・147.94:10日線(日足)
ドル円のチャート
日足:2025年以降

出典:TradingView
45分足:7月28日以降

出典:TradingView
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