ドル円週間見通し(9/1週):145~148円予想、ISM・雇用統計に注目、下落警戒
9月第1週のドル円は145.00~148.00円を予想。ISM指数・雇用統計下振れなら日米金利差の縮小要因に。ドル円は下落警戒。注目のチャート水準についてIG証券のアナリストが分かりやすく解説。

要点
・8月の外為市場では米ドル安が続く一方、円安の圧力が後退した
・今週は米経済指標にらみの状況が予想される、雇用指標に注目
・予想を下回る雇用指標が続けば、ドル安・円高の進行を警戒したい
・ドル円の週間予想レンジは145.00~148.00円
8月の外為市場はドル安継続、円安後退
8月の外為市場は、全てのG10通貨で米ドル安優勢の展開となった。注目すべきは円相場の動向である。北欧通貨を除くG10通貨で円高優勢となり、7月までの根強い円安トレンドに変化の兆しが見られた。米ドル安の継続と円安圧力の後退、この両方の要因は日米の金融政策に対する市場参加者の思惑にあると筆者は考えている。
米ドルの変動率:8月

ブルームバーグの為替データで作成
日本円の変動率:7月/ 8月

ブルームバーグの為替データで作成
今週は米経済指標を注視、ISM指数と雇用統計に注目
9月相場入りした外為市場では、市場参加者の関心が米連邦準備制度理事会(FRB)の政策方針に集中するだろう。
9月16~17日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれる。8月22日のジャクソンホール講演でパウエルFRB議長は、「リスクバランスの変化が政策スタンスの調整を正当化する可能性がある」と述べ、9月利下げの道筋をつけた。
現状、OIS市場では9月FOMCでの0.25%利下げを織り込む状況にある。したがって9月FOMCの焦点は、10月と12月の利下げの可能性を探ることにあろう。OIS市場での10月利下げ確率は50%前後で推移しており、連続利下げに確信が持てない状況にある。一方、12月の利下げ確率は80%台にある。しかし3か月以上も先のことであり、今後も市場の思惑は揺れ動くだろう。
米FRBの継続的な利下げ姿勢に影響を与えるのが経済指標となろう。ジャクソンホール講演でパウエルFRB議長は雇用の下振れリスクに言及した。ゆえに、市場参加者は雇用指標を注視するだろう。
9月1日のレイバーデイ(Labor Day)が明けた後、重要な経済指標が順次発表される。筆者が注目しているのが、8月のISM製造業・非製造業景気指数と雇用統計である。パウエルFRB議長が雇用リスクに言及してきた以上、ISM指数では総合だけでなく雇用にも注目したい。製造業の雇用は今年2月以降、景気判断の分かれ目である「50」を下回る状況が続いている。非製造業(サービス業)は2か月連続で「50」を下回る状況にある。
ISM製造業・非製造業景気指数の動向:過去1年間

ブルームバーグのデータで作成 / 赤ドット:8月予想、レポート掲載時点
5日に8月の米雇用統計が発表される。ブルームバーグがまとめた非農業部門雇用者数変化の市場予想は7.5万人と、7月の7.3万人からほぼ横ばいの見通しにある。失業率は4.3%へ上昇することが予想されている。
ISM指数や雇用統計の他、3日には7月JOLTS求人件数、4日には8月ADP雇用統計も発表される。今週の雇用指標が労働市場の軟化を示唆する内容となれば、米FRBの継続的な利下げ期待を高める要因となろう。特に雇用統計が労働市場の軟化を示す場合はこの期待を高め、米金利の低下と米ドル安を促す要因になり得る。
雇用統計 各項目の動向:過去1年間

ブルームバーグのデータで作成 / 赤棒グラフとドット:8月予想、レポート掲載時点
日銀の利上げ期待、日米利回り格差の縮小、ドル円の下落警戒
OIS市場では、10月金融政策会合での利上げを意識し始めている。現状、その確率は40%台にあり確実とは言えないものの、7月の下旬以降、徐々に利上げ確率が高まっている。
日銀 10月の利上げ予想確率の推移:日次 6月以降

ブルームバーグのデータで作成 / 8月29日時点
国内の債券市場では、各年限の利回りがじわりと上昇している。特に8月以降、金融政策の方向性に敏感な2年債利回りの上昇が拡大し0.9%が視野に入る(8月29日:0.87%)。年内利上げの可能性を意識している動きと捉えることができる。
この状況で、前述した米雇用関連の経済指標が雇用の下振れを示唆すれば、「利下げ期待→米金利の低下」により日米利回り格差のさらなる縮小を促すだろう。利回り格差の縮小は、ドル円(USD/JPY)の下押し圧力を高めるだろう。
ドル円の週間見通しとテクニカル分析
予想レンジの下限:145.00
ドル円(USD/JPY)のトレンドを日足チャートで確認すると、一目の遅行線がローソク足を下回り、RSIは50以下の水準にある。MACDは低下基調を維持しゼロライン付近にある。21日線がレジスタンスラインとして意識されている状況も考えるならば、今週のドル円は下値のトライを意識したい。その要因になり得るのが、前述の米雇用関連の経済指標となろう。
週間の予想レンジの下限は、心理的ラインの145.00レベルを想定。ドル円がこのラインを目指すサインとして、7月安値と8月高値の半値戻しの水準146.80レベル、およびフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準145.83レベルの攻防に注目したい。
8月を通して、前者の146.80レベルがサポートラインとして意識された。一方、61.8%戻しの水準145.83の上には89日線(現在145.93レベル)が推移している。145.80レベルの下方ブレイクは、145.00をトライするサインと捉えたい。
サポートライン:日足チャート
・146.80:半値戻し
・145.93:89日線
・145.83:61.8%戻し
・145.00:週間の予想レンジの下限
予想レンジの上限:148.00
今週の雇用指標が総じて予想を上回る内容となれば、米ドルを買い戻す要因になり得る。しかし、米FRBの利下げが意識されている状況を考えるならば、その動きは限定的となることが予想される。
8月以降、上値抵抗線として意識されている148.00レベルを今週の予想レンジの上限と想定したい。ドル円(USD/JPY)が148.00のラインをトライするサインとして、147.40レベルと147.70レベルの攻防に注目したい(いずれも1時間足チャートを参照)。前者のラインは半値戻しの水準にあたり、現在は21日線も推移する。後者の147.70レベルはレジスタンスラインへ転換する可能性がある。
5日の8月米雇用統計が市場予想を大きく上振れる場合は、瞬間的に148.00レベルを突破する可能性がある。このケースでは、8月下旬にレジスタンスラインとして意識された一目基準線までの反発と、このラインでの反落を意識したい。
レジスタンスライン
・148.56:一目基準線(日足)
・148.00:週間の予想レンジの上限(1時間足、日足)
・147.70:レジスタンスライン(1時間足)
・147.42:半値戻し(1時間足)、21日線(日足)
ドル円の日足チャート:4月以降

出典:TradingView
ドル円の1時間足チャート:8月下旬以降

出典:TradingView
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