日経平均株価 週間見通し (8/4週):日本225予想3万8600円~4万500円、米景気懸念で下落警戒
雇用統計とISM製造業景気指数を受け、米国の景気懸念が高まっている。来週の日経平均株価は下落相場を警戒したい。日経平均株価の株価指数CFD「日本225」の週間予想レンジは3万8600円~4万500円。売買ポイントについてIG証券のアナリストが分かりやすく解説。

要点
・雇用統計ショックで米国の景気懸念が高まる、9月の利下げ確率が急上昇
・来週の日本株は下落相場を警戒、半導体関連株が重石となる可能性あり
・米半導体株の強気地合い失速も日本株の売り要因に
・日本225の週間予想レンジは3万8600円~4万500円
米雇用統計ショック、来週の日本株は下落警戒
来週の日経平均株価は下落相場を警戒したい。そう考える理由の一つが、米雇用統計ショックである。
米労働省が1日発表した7月の雇用統計によれば、非農業部門雇用者数変化が7.3万人増と、ブルームバーグがまとめた市場予想10.4万人増を大きく下回った。5月分は14.4万人増から1.9万人増へ、6月は14.7万人増から1.4万人増へそれぞれ下方修正された。
今年に入り3ヶ月平均の雇用者数の伸びが減少の一途にある。5月と6月分の下方修正を受け、5〜7月の就業者の伸びは平均で3.5万人と、新型コロナウイルス禍後で最低水準となった。
米非農業部門雇用者数変化:3ヶ月平均の推移、直近1年間

ブルームバーグのデータで作成
雇用統計ショックは、各市場を揺るがした。1日の米株式市場では主要指数が軒並み下落した。強気相場を支えてきた主力のハイテク株売りを受け、ナスダック総合指数は前日比472.32(2.24%)安の大幅下落となった。米債市場では10年債利回りが4.4%付近から4.2%まで急低下した。また、金融政策の方向性を織り込んで動く2年債利回りは、ブルームバーグのデータによれば一時3.665%まで低下する局面が見られた。5月1日以来の低水準である。
注目は短期金融市場の反応だ。9月米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ確率が90%近くまで跳ね上がった。早期の利上げを巡りパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が慎重姿勢を維持したことで、前日の利下げ確率は40%を下回る状況にあった。
これら市場の反応は、米FRBが早期利下げに向けて舵を切らざるを得ない状況に陥ることを各市場の参加者が早くも意識し始めていることを示唆している。
9月米連邦公開市場委員会(FOMC) 利下げ確率の推移:6月以降

ブルームバーグのデータで作成 / OISに基づく予想確率、8月1日時点
※マイナス表記:利下げ
ISM製造業景気指数も市場参加者の景気懸念を強めた。7月は48.0と前月の49.0から低下した。5カ月連続で景気判断の分かれ目(拡大と縮小の分岐点)となる「50」を下回った。
構成項目では、先行指標となる新規受注が小幅に改善したが、6カ月連続で50を下回った。肝心の雇用指数は43.4と前月の45からさらに低下し、製造業の雇用が低迷していることを示唆した。
1日の米経済指標で景気懸念が高まったことは、来週の日本株の重石となろう。
米国 ISM製造業景気指数の推移:過去1年間

ブルームバーグのデータで作成
不穏な国内半導体関連株の動き、米景気不安で調整売り加速か
来週、日本株の下落要因としてもう一つ注目したいのが、半導体関連株の動きである。東京エレクトロン(8035)は7月31日、26年3月期の連結純利益が前期比18%減の4440億円と、一転最終減益となる見通しを示した。また、年間の配当予想も従来の618円から133円減額し485円(前期は592円)とした。8月1日の市場では決算を嫌気した売りが膨らみ、同社の株価は一時制限値幅の下限(ストップ安水準)となる前日比5000円(18%)安の2万2330円まで下落した。
他の半導体関連株の強気地合いも、7月第3週以降失速している。ディスコ(6146)は高値圏で売り買いが交錯。その他の主力銘柄に至っては、調整売りのムードが強まっている。アドバンテスト(6857)は先月29日、2026年3月期の連結純利益予想を前期比37%増の2215億円とし、従来予想の1790億円(前期比11.1%増)から上方修正した。しかし株価の割高感を払拭できず、先週は11%の下落で終えた。8月7日に決算を控えるレーザーテック(6920)の株価も週次で11%下落した。
国内半導体関連株のチャート:年初来

ブルームバーグのデータで作成
米半導体株の強気地合いも急失速、景気懸念による下落警戒
米国の主力半導体株の強気地合いが後退している。その最初のきっかけとなったのが、利下げを巡るパウエルFRB議長の慎重姿勢だった。そして追い打ちをかけたのが、1日の米経済指標で景気不安が高まったことだ。
先週の変動率を確認すると、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)以外の主力半導体株は下落して終えた。エヌビディア(NVDA)は0.13%高と横ばいだった。
先週はマグニフィセントセブンに名を連ねる大手ハイテク企業が続々と決算を発表した。メタ・プラットフォームズ(META)とマイクロソフト(MSFT)は決算が好感され株価が上昇した。マイクロソフトは31日の市場で時価総額が4兆ドルを超え、エヌビディアに続き世界2社目の「4兆ドルクラブ」入りを果たした。AI事業に集中投資しているこれらハイテク企業の好決算を受けても半導体株が売られた状況は、4月以降の株高で割高感が意識されやすい状況にあることを示唆している。
このタイミングで7月の雇用統計とISM製造業景気指数が米国の景気懸念を高めた。景気懸念は、来週の米半導体株の調整売りを促す可能性があろう。米半導体株の売りで東京エレクトロンなど値がさ株の下落が続く場合は、日経平均株価の重石となろう。
米半導体株 週間変動率:7月28日~8月1日

ブルームバーグのデータで作成
日本225の週間見通しとテクニカル分析
週間予想レンジの下限:3万8600円
ブルームバーグのデータによれば、日経平均株価のPBRは7月24日に1.5倍へ上昇する局面が見られた。株高トレンドが始まった2023年以降の平均1.36倍を超え、昨夏の暴落時の1.57倍付近まで上昇している。PBRの水準もまた、来週の下落相場を警戒する要因の一つである。
日経平均株価 PBRの推移:2024年以降

ブルームバーグのデータで作成
日経平均株価の株価指数CFD「日本225」の週間予想レンジの下限を2つのフィボナッチ・リトレースメントの水準、61.8%戻しと76.4%戻しが重なる3万8600円と想定したい。
3万9000円台の攻防では、以下にまとめた3つのサポートラインの攻防に注目したい。3万9780円と3万9250円はフィボナッチ・リトレースメントの攻防となる。3万9000円はサポートラインへ転換する可能性がある。
筆者の想定を超える下落で日本225が3万8600円を完全に下方ブレイクする場合は、3万8000円を視野に下落幅の拡大を警戒したい。
サポートライン
・3万9780円:半値戻し
・3万9250円:半値戻し / 61.8%戻し
・3万9000円:サポート転換の可能性あり
・3万8600円:週間予想レンジの下限、61.8%戻し/ 76.4%戻し
・3万8000円:サポートライン
週間予想レンジの上限:4万500円
将来の市場に対する投資家の心理を反映するVIX指数は1日、警戒水準とされる「20」まで上昇した。上述した米国市場の動きも考えるならば、投資家の心理が悪化している。従って来週日本225が反発しても、以下にまとめたレジスタンスラインでは戻り売りを意識したい。
VIX指数のチャート:日足 今年3月以降

ブルームバーグのデータで作成
米FOMC後の高値と安値の半値戻しの水準が4万510円に当たる。従って4万500円の水準を来週の日本225の予想レンジ上限と想定したい。このラインを目指すサインとして、同じフィボナッチ・リトレースメントの23.6%戻し4万100円、38.2%戻し4万330円の攻防に注目したい。
レジスタンスライン
・4万500円:週間予想レンジの上限、半値戻し
・4万330円:38.2%戻し
・4万100円:23.6%戻し
日本225株価指数のチャート
4時間足:5月以降

出典:IGチャート
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