米CPI、12月コアで減速か　11日発表　S&P500好機？

アメリカで11日に発表される2023年12月の消費者物価指数（CPI）は物価上昇率の低下が前進する可能性がある。食品とエネルギーを除いたコア指数の前年同月比伸び率が2年7か月ぶりの3％台まで下がると予想されているためだ。米連邦準備制度理事会（FRB）による利下げの確度を高める内容だと受け止められれば、S&P500種株価指数の史上最高値更新に向けた追い風になる筋書きも考えられる。ただ、12月CPIをめぐる予想では、総合指数の伸び率は11月よりも高くなるとみられており、利下げ期待が拡大せずにS&P500の反応が限定的になるシナリオも否定できない。

アメリカの12月CPIはコア指数が2年7か月ぶりの3％台予想

米労働省は11日午前8時30分(日本時間11日午後10時30分)に12月CPIを発表する。ロイターがまとめたエコノミストの事前予想では、12月の総合指数の伸び率は前年同月比3.2％となり、11月の3.1％から物価上昇が加速する見込み。一方、コア指数は3.8％となり、11月（4.0％）から低下するとみられている。予想通りの結果になれば、コア指数の伸び率が3％台になるのは、2021年5月（3.8％）以来だ。

コア指数の伸び率は2022年9月の6.6％をピークとして低下傾向が続いてきた。上昇率が3％台に下がった場合は、FRBが目標とする物価上昇率2％に向けたハードルをひとつクリアしたと受け止められる可能性がある。FRBが今年3月にも利下げに踏み切るとの観測を裏付ける結果だとみなされ、足踏みしていた長期金利（10年物米国債利回り）の低下が再開し、株式相場が値上がりで反応する可能性がある。

8日のS&P500は粘り腰で大幅高。エヌビディアは高値更新

米国の株式相場は年明けのスタートダッシュに失敗したものの、8日の取引では粘り腰を発揮した。S&P500（SPX）の8日の終値は前週末終値比1.41％高の4763.54。上昇率は、11月CPIが発表されて物価上昇の減速が確認された2023年11月14日（1.91％）以来の大きさだった。8日の終値は2022年1月3日の史上最高値（4796.56）まであと0.69％に迫る水準だ。

LSEGのデータによると、8日はニューヨーク債券市場で長期金利の終値が前週末よりも0.04％ポイント低い4.002％となり、株式相場の緊張感が和らいだ。高性能半導体の開発を発表したNVIDIA（エヌビディア、NVDA）の株価は8日の終値が前週末比6.43％高の522.53となり、11月20日につけた上場来高値を大きく更新している。

ただし12月CPIの結果が予想通りになった場合でも、総合指数の伸び率の高まりが材料視された場合は株式相場のムードが悪くなる可能性もある。CMEグループのデータによると、3月の連邦公開市場委員会（FOMC）後にFRBの政策金利が現状よりも低くなっていることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間9日午前11時ごろの段階で約60％。2023年12月下旬には75％台に達していたことを考えると、利下げへの過度な期待は薄らいでいる。

FRBのジェローム・パウエル議長は12月の記者会見で想定される次の政策変更が利下げ方向であることを明かしつつも、物価上昇率が2％まで下がっていくことについては確信がないとの立場をとった。12月CPIの結果次第で、金融市場が見積もるFRBの利下げの確度が左右され、S&P500が大きく動く可能性もありそうだ。