東京エレクトロン、株価回復道半ば 決算1か月で1割高 復活は秋以降?
東京エレクトロンの株価は決算発表から1か月で9%高。回復基調とはいえ、最高値から4割超安の不振だ。秋以降の成長加速が実現するかが注目される。

半導体製造装置大手の東京エレクトロンの株価が勢いづかない。28日の終値は2万3165円で、約1か月前の2025年1-3月期決算発表直前から約9%高。株価は上昇基調にあるとはいえ、約1年前につけた最高値からは4割超安の水準で低迷している。決算発表では2026年3月期の見通しについて投資家の予想を超える数字を示したものの、世界経済の不透明感が拭えない中、株価の完全復活への道のりは遠いといえそうだ。東京エレクトロンは2026年3月期の業績について、下期にあたる10月以降に成長が加速するとみており、株価の本格回復は秋以降になる可能性もありそうだ。
東京エレクトロンの株価は決算発表から1割高 最高値からは4割超安
東京エレクトロンの株価(8035)の28日の終値(2万3165円)は前日比0.13%安で2日続落。1-3月期決算発表の直前につけた4月30日終値(2万1225円)との比較では9.14%高の水準だ。また、4月7日につけた直近の安値(1万7060円)からは35.79%高の水準で、株価は回復基調にあるといえる。

一方、東京エレクトロンの株価は不振から抜け出せているわけではない。4月につけた直近の安値は、1年前にあたる2024年4月3日の最高値(3万9620円)から2万2560円も安い水準。28日の終値はこの下落分の27.1%を回復したにすぎない。最高値からの下落率は依然として41.53%安と大きく、完全復活までの道のりは遠いといえそうだ。
1-3月期決算は堅調な結果 2026年3月期の業績見通しは予想超え
東京エレクトロンが4月30日に発表した1-3月期決算は堅調な内容だった。総利益は前年同期比19.8%増の6554億円、営業利益は26.6%増の1838億円。ブルームバーグがまとめた直前の市場予想は、総収入が6434億円、営業利益が1810億円で、発表された結果はいずれも予想を超える内容だった。

また、東京エレクトロンは2026年3月期の業績見通しについて、総収入が前年同期比6.9%増にあたる2兆6000億円になると公表。金融市場で期待されていた2兆5285億円を上回った。営業利益も4.3%増の7270億円と予想している。東京エレクトロンの河合利樹CEOは30日の決算説明会で「今期も過去最高の売上高および営業利益を見込んでいる」と力を込めた。
世界経済の見通し不透明感は株価の重荷 エヌビディアの決算発表への警戒も
ただ、こうした好決算にも関わらず、東京エレクトロンの株価は決算発表翌日にあたる5月1日の終値では0.07%安と不調。翌2日も0.33%安で、投資家の期待は盛り上がらなった。その後は、アメリカと中国が関税の大幅引き下げで合意したことや、ドナルド・トランプ政権がジョー・バイデン前政権が退陣間際に打ち出した半導体輸出規制の見直し案の撤回方針が示されたことなどが背景となって、東京エレクトロンの株価も反発したが、上値の重さも感じられる。
東京エレクトロンの株価が勢いづかないのは世界経済の不透明感が消えないからだ。トランプ大統領の高関税政策は引き続き、米国を含む世界経済の悪材料になりえる要因。またトランプ政権は半導体大手NVIDIA(エヌビディア、NVDA)が中国向けに開発した半導体を輸出規制の対象に加えており、エヌビディアが日本時間29日早朝に行う2025年2-4月期決算発表では、悪影響の長期化が表面化するおそれもある。株式市場における人工知能(AI)ブームを象徴するエヌビディアの業績への期待が後退すれば、世界の半導体株をめぐる投資家心理を冷やすことも想定される。

中国市場の成長拡大は困難 東京エレクトロンの業績の足を引っ張る材料に
また、東京エレクトロンの主戦場であるWFE(半導体前工程製造装置)市場のうち、4割前後を占める中国市場は2025年の拡大が見込めない状態。東京エレクトロンは2025年3月期の総収入に占める中国向けの比率が39%という高さで、中国市場の見通しの悪さは成長の足を引っ張る要因といえそうだ。

下期にはパソコンやスマホ向けの需要が復活? 株価の本格回復は秋以降か
それでも東京エレクトロンが2026年3月期について成長を描いている背景には、中国市場が伸び悩んだとしても、半導体企業がAI関連投資を進める効果が徐々に出てくるとの読みがある。2026年3月期の総収入見通しを上期(2025年4-9月)と下期(10月-2026年3月)に分けてみれば、上期は前年同期比2.5%増の1兆1500億円、下期は10.7%増の1兆4500億円となっており、下期に成長が加速する筋書きだ。
河合氏は決算説明会で上期の業績に一服感が出ることを認めつつも、下期に向けては好調なAI向けサーバー関連需要に加え、パソコンやスマーフォン向けの需要が「追加として入ってくる」と説明。パソコンやスマホは10月に予定されているウィンドウズ10のサポート終了やバッテリー寿命に関連した買い替え需要もあって販売台数増加が見込まれると同時に、各端末のAI機能強化で搭載される半導体の数が増えることが想定され、半導体各社が生産能力を強化することが考えられるとの見方を示した。東京エレクトロンは2026年のWFE市場は2桁成長になると予想している。
このため、東京エレクトロンの株価の今後の見通しは下期の成長加速が実現するかどうかにかかってくる。トランプ氏を震源とする世界経済の不安が株価の重荷となる中でも、秋以降の決算発表で想定通りの成長の道筋が示されれば、株価が本格回復する可能性がありそうだ。
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