東京エレクトロン、株価6割上昇 総収入3兆円に期待 AI需要を確信
東京エレクトロンの株価は9月以降で64%高。2027年3月期の総収入3兆円にも期待をつないでいるが、AIブームの継続性をめぐる不安も残る。
半導体製造装置の東京エレクトロンの株価が浮上している。東京エレクトロンの株価の13日の終値は3万3910円で、9月に入ってから64%高。10月末の2025年7-9月期決算発表では、人工知能(AI)ブームを背景とした需要拡大に強い自信を示し、中期経営計画で掲げた2027年3月期での総収入3兆円以上という目標の達成に期待をつないでいる。一方、東京エレクトロンは総収入の4割を占める中国市場の伸びが見込めない状態で、AI頼みの成長には不安もくすぶる。今後、AIブームの持続可能性に対する疑問が強まるなどした場合には、投資家心理の悪化が東京エレクトロンの株価に下落圧力をかける可能性もありそうだ。
東京エレクトロンの株価は9月以降で64.09%高 1年3か月ぶり高値
東京エレクトロンの株価(8035)の13日の終値は前日比0.74%高。対話型AIサービスChatGPTで知られるオープンAIが相次いで大規模AIインフラ投資構想を発表した9月に入ってからの上昇率は64.09%高となっている。11月4日につけた3万4790円は、2024年7月16日(3万6080円)以来の高値だった。
東京エレクトロンの7-9月期決算は予想を超える内容 通期見通しを上方修正
東京エレクトロンの株価上昇の背景には今後の業績の見通しの明るさが増したことがある。10月31日に発表された7-9月期決算は総収入が前年同期比11.2%増の6300億円、営業利益が6.9%増の1584億円だった。ブルームバーグがまとめた直前の市場予想は総収入が5945億円、営業利益が1482億円。発表された結果はいずれも市場予想を超える好決算だった。
また東京エレクトロンは決算発表にあわせて、2026年3月通期の業績見通しを上方修正。総収入は前年同期比2.1%減の2兆3800億円、営業利益は16.0%減の5860億円とした。3か月前の4-6月期決算発表では、先端ロジック半導体を手掛ける一部顧客の設備投資計画の見直しや中国市場の期待縮小を理由に業績見通しを下方修正していたが、オープンAIの投資構想などが明らかになる中、業績をめぐる環境が急変したようだ。
河合CEOが強気発言連発 2027年3月期の総収入3兆円も「目指せる」
こうした中、河合利樹CEOは31日の決算会見で「まさにAI時代の到来だ」と強調。さらにAIサーバー関連の需要については「かなり強い引き合いがある」といった前向きな言葉を連発した。東京エレクトロンの株価は決算発表後の最初の取引となった11月4日に3連休前比1.78%高となった。
東京エレクトロンの強気さは5年間の中期経営計画の最終年度である2027年3月期の急成長も視野に入れているようだ。東京エレクトロンは2026年のWFE(半導体前工程製造装置)の市場規模が過去最高を更新すると見込んでおり、河合氏は中計で打ち出した総収入の目標値(3兆円以上)について、「WFEが所望の数字に達すれば、中期経営計画のところも目指せるのではないか」と述べた。2026年3月期の業績予想の水準と比べれば26%増にもあたる水準だが、あくまで可能性を追求する姿勢を示している。
中国市場は停滞継続か AIブームの継続性への疑念も不安材料
ただ、東京エレクトロンが目指す急成長には中国市場の伸び悩みが重荷となる。7-9月期の中国市場での収入は前年同期比8.6%増の2541億円で、3四半期ぶりの増収。しかし東京エレクトロンは一部で前倒し需要があったことが理由だと説明しており、河合氏は汎用半導体向けの製造装置が主である中国市場について「明るいニュースはあまり聞こえてこない」とした。中国市場は2025年3月通期の総収入の4割を占めていただけに、伸び悩みは業績全体の足を引っ張ることになる。
さらに株式市場におけるAIブームをめぐっては実現可能性への不安もくすぶり続けている。オープンAIはこれまでに30ギガワット(3000万キロワット)規模のAIインフラ投資構想を発表し、1兆4000億ドルの資金が必要だとしているが、資金の出どころは明らかではない。今後、株式市場でAIブームの継続性への疑念が強まれば、東京エレクトロンが見込む需要の強まりが一転して先送りになる恐れもある。
東京エレクトロンの足元の株価は2024年4月3日につけた最高値(3万9620円)からは距離があり、投資家は東京エレクトロンが示した強気な姿勢に半信半疑という側面もある。投資家は今後の決算発表や業績見通しで東京エレクトロンが結果を示すことができるかどうかを見極めている最中ともいえそうだ。
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