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米国株、波乱リスク再燃の不安も S&P500週次反発 ハイテク株不振

S&P500は週次で反発。イラン和平実現には障害もあるほか、大手ハイテク株の勢い不足もあり、見通しには不安材料も多い。

米国株、波乱リスク再燃の不安も S&P500週次反発 ハイテク株不振 出所:ブルームバーグ

アメリカの株式市場の不安拡大にブレーキがかかった。S&P500種株価指数の12日の終値は1週間前比0.65%高。5月雇用統計の過熱感を受けた前週の急落から反発した。中東情勢をめぐり、米国のドナルド・トランプ大統領が週末にもイランとの和平合意の覚書が署名されるとの見方を示したことが好材料となっている。金融市場では原油価格が大幅に下落すると同時に、投資家心理も改善しており、見通しに明るさが増してきたといえそうだ。ただ、合意が近づいているとされる覚書の内容は5月下旬段階と大きな違いはないとみられ、緊張が再燃するリスクも残っている。また12日までの週次での値動きでは大手ハイテク株の不振も目立ち、新規株式公開(IPO)が関心を集めた宇宙開発企業スペースXや中小型株に資金が向かっている可能性もある。S&P500の週明け以降の値動きでは、米連邦準備制度理事会(FRB)のケビン・ウォーシュ新議長が初めての連邦公開市場委員会(FOMC)を開くというイベントも控えており、波乱を呼ぶ展開も考えられそうだ。

アメリカのS&P500は週次0.65%高 12日までの2日続伸で復調

S&P500(SPX)の12日の終値は前日比では0.50%高の7431.46。ブルームバーグによると、週次では0.65%高となり、前週(1-5日)の2.59%安の急落から小幅に反発した。10日にはトランプ氏がイラン攻撃再開を表明したことで前日比1.62%安となり、5月雇用統計の過熱感が嫌気された5日(2.64%安)以来の急落となっていたが、11日と12日の続伸で週次でのプラスを確保する値動きだった。

S&P500とアメリカの長期金利の推移のグラフ

イラン和平合意期待で原油価格が大幅安 投資家心理は改善

S&P500を復調させたのはイラン情勢の好転だ。トランプ氏は11日、自身のSNSトゥルースソーシャルへの投稿などで、イランとの和平協議の内容がイランの最高レベルの指導部に承認され、週末にも欧州で覚書への署名が行われるとの見通しを表明。イランのアッバス・アラグチ外相も12日、SNSのXへの投稿で、合意に「かつてなく近づいている」とした。12日の金融市場では和平合意がホルムズ海峡封鎖の解除につながるとの見方から原油価格が下落。ブルームバーグによると、原油先物市場の指標価格であるWTI(7月渡し、WTI原油)は12日の終値で前日比3.23%安の1バレル=84.88ドルとなり、イランがホルムズ海峡封鎖の解除を発表した4月17日(83.85ドル)以来、2カ月ぶりの安値となっている。

WTIの推移のグラフ

イラン和平の見通しが明るくなったことで投資家心理も改善した。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の12日の終値は17.68となり、10日段階の22.22から大きく低下している。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど、今後の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを示す。

VIXとS&P500の推移のグラフ

イラン和平の覚書署名には障害も 凍結資産の解除が焦点のひとつに

ただ、イラン和平合意の実現には不透明感もあり、S&P500が再び下落に見舞われるリスクは消えていない。米インターネットメディアのアクシオスの報道によると、覚書は60日間の停戦延長の間にイランの核開発に関する協議を続けると同時に、署名後30日かけてホルムズ海峡を戦争開始前の状態に戻す枠組み。同様の枠組みは5月下旬にもイランメディアなどによって報じられ、和平実現への期待が高まったが、その後、イランがレバノンでのイスラエルと親イラン組織ヒズボラとの交戦などに不満を示し、実現が遠のいた。

アクシオスによると、今回の覚書案をめぐっては、イランが保有する高濃縮ウランについてイラン国内での希釈化を認める選択肢が含まれているといい、トランプ氏がイラン国外への持ち出しを求める立場を軟化させたとみられる。またホルムズ海峡開放後、イランに対する経済制裁が一時的に緩和され、60日間は石油を売ることが認められる案も検討されているもようだ。一方、イラン側が覚書署名段階での実施を求めてきたイラン資産に対する凍結の解除の扱いは定かでないといい、合意に向けた障害になる可能性がある。

大手ハイテク株は不振継続 スペースXや中小型株が躍進

また、S&P500への影響度が大きい「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社の株価の12日までの週次での値動きには勢いがない。ブルームバーグによると、マイクロソフト(MSFT)の株価が週次6.22%安となるなど、7社中の5社が値下がりしている。値上がりした2社のうち、半導体大手NVIDIA(エヌビディア、NVDA)は週次0.04%高にすぎず、前週までの3週続落での8.97%安を取り戻すにはほど遠い。テスラ(TSLA)は週次3.95%高だったが、前週の10.28%安の後としては迫力不足だ。

アルファベット、エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・コム、マイクロソフト、アップル、テスラの株価の推移のグラフ

大手ハイテク株の不振には、12日に上場したスペースXの人気に注目を奪われた感もある。スペースX(SPCX)は12日の終値が160.95ドルとなり、IPO価格(135ドル)を19.22%上回った。また、このところの株式市場では中小型株の人気も高まっており、中小型株の代表的な株価指数であるラッセル2000(RUT)は12日終値で2943.99となり、週次では3.90%高。S&P500の週次0.65%高を大きく超える勢いで、5月28日以来の最高値更新を果たした。

ラッセル2000とS&P500の推移のグラフ

FRB新議長が示す金融政策の見通しは? S&P500に波乱の恐れ

S&P500の週明け15日以降の値動きをめぐっては、イラン情勢の展開に加え、FRBが16、17日に開くFOMCも焦点となる。今回のFOMCは5月22日に議長に就任したウォーシュ氏にとって初の会合。金融政策の現状維持が確実視されている中、記者会見などで示される今後の金融政策の方向性に注目が集まりそうだ。ウォーシュ氏には景気や物価上昇の過熱への警戒に軸足を置く「タカ派」の側面もあるとされ、17日の情報発信から年内利上げの可能性がにじめば、S&P500をめぐる投資家心理が冷え込む恐れもありそうだ。


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