米国株、イラン停戦延長に期待 S&P500最高値 見通しにリスク
S&P500は1月下旬以来の最高値。イラン和平への期待が高まった。ただ、戦争の行方に加え、企業業績や次期FRB議長承認の混乱といったリスク要因は多い。
アメリカの株式市場で楽観が続いている。S&P500種株価指数の15日の終値は前日比0.80%高で1月下旬以来の最高値更新を達成。半導体大手NVIDIA(エヌビディア)が11営業日続伸となるなど、大手ハイテク株が牽引役となった。アメリカとイランがともに停戦期間の延長を検討していると報じられる中、投資家の強気姿勢への回帰が本格化しているといえそうだ。ただ、停戦が延長されたとしても石油の重要通商ルートであるホルムズ海峡の封鎖が解除されなければ、世界経済への逆風が吹き続けることは確か。実際、オランダの半導体製造装置大手ASMLホールディングが15日に行った決算発表は2026年4-6月期の業績見通しが市場予想を下回り、短期的には半導体メーカーが投資に慎重になっている可能性も感じられる。さらに米国の金融市場では今後、米連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長の承認をめぐる混乱が投資家心理を冷やす恐れもあり、S&P500の今後の見通しには多くのリスクが潜んでいる。
アメリカのS&P500は0.80%高で最高値更新 3月末から10%超上昇
S&P500(SPX)の15日の終値は7022.95で、3営業日続伸の間に3.02%高となった。1月27日につけた6978.60を超える最高値だ。ブルームバーグによると、S&P500はイラン側からの終戦に向けた情報発信が報じられた3月31日以降の11営業日のうち10営業日で値上がりし、合計で10.71%高となっている。
エヌビディアは11営業日続伸で20%超上昇 テスラは15日に7.62%高
S&P500への影響度が大きい大手ハイテク株の中では、エヌビディア(NVDA)が15日に前日比1.20%高となって11営業日続伸。この間、20.40%高となって、上昇が勢いづいている。また、22日に2026年1-3月期決算を発表するテスラ(TSLA)は15日、7.62%高となり、5営業日続伸の間に14.19%高となった。15日の取引では、「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社の中で、0.21%安だったアマゾン・コム(AMZN)を除く6社が値上がりしている。
米国とイランの停戦延長検討報道で期待 VIX指数は6営業日連続で低下
S&P500の上昇が続いている背景には、米国とイランが和平に前向きだとの期待がある。ブルームバーグによると、米国とイランは7日に合意した2週間の停戦について延長を検討しているもよう。ドナルド・トランプ大統領は15日のFOXビジネスでのインタビューで、イランでの戦争について「終わりに近づいていると思う」と述べた。両国は11日から12日にかけてパキスタンで行われた和平協議で合意に失敗したものの、焦点のひとつであるイランの核開発をめぐってはお互いが条件を提示しているとも報じられており、前向きなムードも感じられる。
こうした中、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)は低下が続き、投資家心理の改善が進んでいる。シカゴ・オプション取引所によると、VIX指数の15日の終値は18.17。6営業日連続で前日よりも低くなり、イラン戦争開戦前の2月25日(17.93)以来の水準となった。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど、今後の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを示す。
イラン和平協議の行方は不透明 ASMLの業績見通し下振れは投資抑制の現れか?
ただ、イランの核開発をめぐる両国の対立は根深く、和平協議が再開されたとしても、合意が実現するかは不透明。トランプ氏は14日の米紙ニューヨーク・ポストとのインタビューで、あくまでイランが核兵器を保有することを認めない立場を維持していた。また米国とイランの停戦が延長された場合でも、ホルムズ海峡の封鎖が解消されなければ、中東からの原油供給の途絶や原油価格の上昇が世界経済の成長の足を引っ張る恐れが膨らみ、S&P500にとっての逆風になりかねない。ブルームバーグによると、原油先物市場の指標価格であるWTI(5月渡し、WTI原油)の15日の終値は前日比0.22%安の1バレル=91.08ドルで、高止まりが続く可能性がありそうだ。
またすでに本格化している1-3月期の企業決算発表で、ホルムズ海峡封鎖の実害が感じられれば、世界の株式市場にとっての悪材料といえ、S&P500の見通しを暗くすることは避けられない。ASMLは15日の決算発表に際し、4-6月の総収入が84億-90億ユーロ(中間値87億ユーロ)になるとの見通しを提示。ブルームバーグがまとめた市場予想の90.70億ドルを下回り、ASMLのユーロネクスト・アムステルダムでの株価(ASML)は15日終値で前日比4.22%安となった。ASMLは高性能半導体の製造に不可欠なEUV露光装置を手掛ける世界の半導体産業における重要企業。ASMLの業績予想の下振れは、半導体メーカーがイラン戦争に伴う先行きの不透明感の中で、短期的には投資にブレーキをかけている可能性も感じさせる。日本時間16日午後3時からは、ASMLの顧客である半導体受託製造大手の台湾積体電路製造(TSMC、TSM)が1-3月期決算会見を行う。
次期FRB議長の議会承認は混迷見通し S&P500をめぐる投資家心理の悪化も
さらに米国の金融市場では、5月15日に任期が切れるFRBのジェローム・パウエル議長の後任人事をめぐる混乱も想定される。トランプ氏は1月30日に元FRB理事のケビン・ウォーシュ氏を次期議長に指名したものの、人事を承認する米議会上院では、21日の銀行・住宅・都市問題委員会でのウォーシュ氏の公聴会が荒れ模様になる見通し。共和党のトム・ティリス上院議員が、米司法省がパウエル氏を刑事捜査していることを中央銀行の独立性を侵害する行為として問題視し、捜査が取り下げられるまではウォーシュ氏の承認に反対するとしているからだ。上院銀行委員会は共和党13人と民主党11人の構成で、ティリス氏が反対票を投じれば、共和党だけでは過半数の賛成が得られず、承認手続きが進まなくなる。
ウォーシュ氏の承認が進まない場合は、パウエル氏が暫定的に議長職に留まるとみられる。ただ、FRBの次期議長が決まらないという事態は米国の金融政策の見通し不透明感を強め、S&P500をめぐる投資家心理を冷やす可能性も考えられる。イラン戦争の行方や、企業業績の見通しとあわせて、株式市場の楽観ムードを後退させるリスク要因とみることができそうだ。
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