円安進行どこまで 日銀決定会合で145円台 米国経済不安は円高要因
ドル円相場は2日、145円台で推移。日銀の利上げへの慎重姿勢を機に3円の円安が進んだ。一方、米国経済への不安が円高要因になる可能性もある。

ドル円相場が円安に振れている。ドル円相場は日本時間2日午後2時までの取引で1ドル=145円台で推移。前日に日本銀行が利上げへの慎重姿勢を示したことで、一気に3円以上の円安が進んだ。日銀はアメリカのドナルド・トランプ大統領が打ち出す高関税政策が日本経済に悪影響を及ぼすことを警戒しており、利上げが遠のいたとの見方が広がっている。同時に米国経済に関しては米中関係改善への期待も出ており、FX市場では円以外に対してもドルが買われる動きがみられる。ただ、米国の実体経済面には悪い指標も出てきており、今後のドル円相場の見通しをめぐっては、2日発表の4月雇用統計がきっかけとなって円高が進む可能性もありそうだ。
ドル円相場は一時、145.92円 3週間ぶりの円高水準に
ドル円相場(USD/JPY)は日本時間2日午前9時30分ごろに1ドル=145.92円をつける場面があった。ブルームバーグによると、4月10日につけた147.87円以来、3週間ぶりの円安水準だ。ドル円相場は前日午前の段階では142.88円をつけていたことを踏まえれば、24時間で3円の円安が進んだことになる。

日銀は追加利上げから距離 植田総裁は見通し変更「かなりの確率」
円安の引き金を引いたのは日銀の利上げへの慎重姿勢だ。日銀は1日までの金融政策決定会合で政策金利を0.5%で据え置くことを決定。会合後に発表した経済見通しでは、消費者物価指数(CPI)について、生鮮食品を除いたコア指数の2025年度の上昇率は前年度比2.2%になるとし、1月時点の見通し(2.4%)から引き下げた。2026年度の伸び率についても1.7%とされ、これまでの2.0%から下振れしている。
植田和男総裁は1日の記者会見で、トランプ氏の高関税政策の結果、日本経済の「不確実性は極めて高い」状況にあると強調。物価や経済が見通し通りに進展すれば、政策金利を引き上げるとの立場を維持しつつ、「見通しの変更を迫られるケースもかなりの確率である」と述べた。今回発表した経済見通しは、米国と各国の交渉によってある程度は関税が引き下げられると同時に、無視できない程度の関税が残ることを前提に作成されたとも説明している。
日銀の7月利上げ確率は14%まで低下 米中対立緩和への期待も円安要因に
こうした日銀からの情報発信を受け、金融市場では日銀の利上げ見通しが低下。ブルームバーグによると、投資家の動向から算出される7月の決定会合で利上げが行われる確率は、日本時間2日午後2時段階で14%程度。経済見通しが発表される前にあたる1日午前段階での32%程度から大きく低下している。日銀の利上げが遠のいたとみなされたことは、FX市場で円を売られやすくする円安要因だ。
同時に米国経済に関しては過度な不安が後退している。トランプ氏は4月22日に米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長の解任を否定。中国製品への関税引き下げの可能性についても度々言及している。さらに5月2日には中国側の融和姿勢も感じられた。ブルームバーグによると、中国商務省は2日、米国との通商協議の可能性を検討しているとの報道官談話を発表した。トランプ氏が中国製品に145%もの高関税をかけていることは、米国の企業や消費者の経済活動を下押しする要因なだけに、交渉開始に向けた進展は米国経済への懸念を和らげる材料だといえそうだ。
このため、FX市場ではドルは円以外の通貨に対しても買われている。ブルームバーグによると、ポンドの対ドル相場(GBP/USD)の1日の終値は4月28日との比較では、1.21%のポンド安。同様に、ユーロの対ドル相場(EUR/USD)は1.14%のユーロ安、豪ドルの対ドル相場(AUD/USD)は0.75%の豪ドル安だ。円の対ドル相場での2.32%の円安も含め、ドルに対する信頼が復活しているとみることができる。

米国の新規失業保険申請研修が急騰 雇用統計も円高材料の可能性
ただし米国の経済指標をめぐっては悪い材料も目立つ。米労働省が1日に発表した4月20-26日週の新規失業保険申請件数は24.1万件で、ブルームバーグがまとめた市場予想の22.3万件を大きく上回った。また、4月30日に発表された2025年1-3月期GDP速報値は高関税発動前の駆け込み輸入が急増した結果、実質成長率が3年ぶりのマイナスに転落。個人消費の伸びも2024年10-12月期から大きく減速した。

米国経済の見通しは2日午前8時30分(日本時間2日午後9時30分)に発表される4月雇用統計でも揺れ動く可能性がある。金融市場では堅調な結果が予想されているが、発表内容が下振れた場合にはFRBが利下げで経済を下支えする必要に迫られるとの筋書きが意識されそうだ。ブルームバーグによると、ドル円相場の背景となる日米の長期金利(10年物国債利回り)の差は4月25日以降は3%ポイントを割り込む水準で推移しており、雇用統計を機に日米金利差がさらに縮小し、円高の材料となることも想定されそうだ。

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