【ドル円の見通し】米経済指標と日銀会合にらみ、くすぶる米ドル安再燃の可能性 荒れ相場を警戒
さえない経済指標による米ドル安再燃の可能性がくすぶっている。一方、日銀イベントは円安の要因となる可能性がある。ドル円は日米のイベントで上下に振れる荒れ相場を警戒したい。

記事のサマリー
トランプ米政権は硬軟織り交ぜた関税外交を展開している。アジアの貿易相手国を中心に通商交渉が進んでいるという。交渉進展の期待を受け、外為市場では米ドル売りが一服している。しかし、市場参加者が最も注視する米中の通商交渉には不透明感が漂う。米経済指標では景気減速の可能性を示唆する内容が続いている。米ドル安再燃の可能性がくすぶり続けている。円相場は日銀会合待ちのムードにある。追加利上げ期待の後退で円安再燃となれば、ドル円は日米のイベントで上下に振れる荒れ相場を警戒したい。
トランプ米政権、硬軟織り交ぜた関税外交を展開、「米国売り」一服
トランプ米政権は29日、自動車と部品に対する追加関税の負担を軽減する措置を発表した。米国内で生産した自動車メーカーを対象に車両価値の最大15%相当額を関税の控除として適用する。1年目に3.75%、2年目に2.5%相当が還付され、その後段階的に終了するという。また、ベッセント米財務長官は関税を巡る交渉で日本、インド、韓国などアジアの貿易相手国が合意に前向きな姿勢にあると述べた。
硬軟織り交ぜたトランプ米政権の関税外交が功を奏するかは予断を許さないが、米株式市場は交渉進展の期待から今週も反発地合いを維持している。米債市場では10年債利回りが低下基調へ転じている(米国債が買われている)。米ドル安も一服し、関税リスクによる「米国売り」は一服している。
しかし筆者は、外為市場での米ドル安再燃を警戒する状況が続いていると考えている。その理由は米経済指標にある。
米経済指標にらみ、景気懸念は米ドル安再燃の要因に
3月のJOLTS求人件数は719.2万件と、ブルームバーグがまとめた予想750 .0万件を下回った。4月の消費者信頼感指数は86.0とブルームバーグ予想の88.0を下回り、トランプ関税による消費者マインドの悪化が止まらない。期待指数は、景気後退入りを示唆する「80」を大きく下回る54.4と、2011年10月以来(50.0)の水準へ落ち込んだ。
予想を下回る経済指標が続き、米10年債利回り(以下では米金利)は4.2%割れの状況にある。米金利の低下に連動し、ドル指数(DXY)は節目の100ポイントがレジスタンスラインとして意識され、米ドル安再燃のムードが漂っている(下のチャート、赤矢印を参照)。
米国10年債利回りとドル指数:1時間足 4月以降

出所:TradingView
今日は4月のADP雇用統計と3月の個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)が発表される。
JOLTS求人件数に続き、ADP雇用統計が市場予想の11.5万人を下回る場合は、市場参加者に労働市場の軟化を意識させよう。消費者マインドが低下するなかで予想を下回る雇用指標が続けば,、市場参加者の景気懸念を強める要因となろう。
より注視したいのがPCEデフレーターである。ブルームバーグがまとめた予想では、インフレが鈍化する見通しにある。トランプ関税による景気の減速が意識されるなかでも、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長はインフレ再燃を警戒し、追加の利下げに慎重な姿勢を示している。ゆえに、米FRBが物価指数として注視するPCEデフレーターがインフレ鈍化の傾向を示す場合は、利下げ期待を高める要因になり得る。景気懸念と利下げ期待の高まりは、外為市場で短期的な米ドル安を促す要因となろう。
米国 PCEデフレーター:直近1年間

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤の棒グラフとドット:3月の予想
円相場は日銀会合にらみ、ドル円は短期的な荒れ相場を警戒
今日から明日にかけて日銀金融政策決定会合が開かれる。週間のIG為替レポートで述べたとおり、焦点は展望レポートにある。新たに示される2027年度のコア消費者物価指数(CPI)の見通しも含めて、全般的に市場の追加利上げ期待を後退させる内容となれば、円安を想定したい。
日銀イベント後は、再び米経済指標にらみの展開となろう。1日に4月のISM製造業景気指数、2日に同月の雇用統計が発表される。今日の経済指標も含めて市場予想を下回る内容が続けば、景気懸念を意識した米ドル安の再燃を警戒したい。円安と米ドル安がぶつかり合う展開となれば、ドル円(USD/JPY)は日米のイベントごとに上下に振れる荒れ相場が予想される。
一方、米経済指標で予想以上に強い内容が続けば、米ドルの買い戻しを促す要因となろう。日銀イベントが円安の要因となれば、ドル円の上振れを警戒したい。だが、トランプ関税によるスタグフレーションの懸念が単月の経済指標で後退することはないだろう。よって、ドル円の上昇局面では「急反落」を警戒したい。
ドル円の見通しとテクニカルライン
米ドル安再燃なら140円の再トライを警戒
27日に週間のIG為替レポートを掲載した。その後の通貨オプション市場の動きを確認すると、1週間と1ヶ月のリスクリバーサルが再び低下へ転じつつある。一方、1週間の予想変動率は再び上昇ムードにある。上で述べた米経済指標で景気懸念を意識させる内容が続けば、ドル円(USD/JPY)は節目の140.00を再びトライする展開を警戒したい。
ドル円のリスクリバーサルと予想変動率:日足 年初来

ブルームバーグのデータで筆者が作成
ドル円のトレンドを日足チャートで確認すると、今は144.00レベルがレジスタンスのラインとして意識されている(日足チャート、赤矢印を参照)。MACDはゴールデンクロスへ転じているが、ゼロラインを下回る状況が続いている。DMIとADXのトレンドも考えるならば、ドル円の地合いは弱い。
今日以降、ドル円が一目転換線を下方ブレイクする場合は、先週23日の安値141.53レベルのトライを想定したい。141.53レベルをも下方ブレイクすれば、週間のIG為替レポートで取り上げた予想レンジの下限140.00のトライを想定したい。
新たな報道で米中通商交渉の不透明感が意識され、かつ弱い米経済指標が重なることで筆者の想定を超えてドル円が下落すれば(140.00を下方ブレイクすれば)、週足チャートで示した2つの139円台のサポートポイントを瞬間的にトライする展開を想定したい。
サポートライン
・141.96:一目転換線(日足)
・141.53:4月23日の安値
・140.00:予想レンジの下限(日足)
・139.88:4月22日の安値(週足)
・139.58:昨年9月16日の安値(週足)
144.00レベルを突破すれば146円台が視野に
今のドル円(USD/JPY)は、変動幅が拡大しやすい状況にある。経済指標が米ドルの買い戻し要因となり、かつ日銀イベントが円安の要因となればドル円の上振れリスクを警戒したい。しかし、144.00レベルがレジスタンスラインとして意識されている状況を考えるならば、週間のIG為替レポートで取り上げた50日線(今日現在147.00レベル)をトライする可能性は低下している。1円下の146.00レベルを目先の上限と想定したい。テクニカルの面では、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準146.44レベルのトライが焦点となろう。
ドル円が146円台を目指すサインとして、まずはレジスタンスラインとして意識されている144.00レベルの突破を確認したい。今日現在、21日線が144.00レベルまで低下している。このラインで反発が止められる場合は、地合いの弱さを市場参加者に印象付けよう。
一方、ドル円がしっかりと144円台へ上昇すれば、145円のトライが視野に入ろう。テクニカルの面では、半値戻しの水準145.19の攻防に注目したい。このテクニカルラインの上方ブレイクは、146円を目指すサインと考えたい。
レジスタンスライン:日足
・147.00:50日線(4/30時点)
・146.44:61.8%戻し
・146.00:レジスタンスライン
・145.19:半値戻し
・144.00:レジスタンスライン、21日線(4/30時点)
ドル円のチャート
日足:3月下旬以降

出所:TradingView
週足:2022年11月以降

出所:TradingView
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