ドル円 今週の見通し7/7~11日:142.00-146.15レンジ予想、交錯するドル安と円安
7/7週のドル円も142.00-146.15レンジを予想。トランプ減税の成立と米政権の関税通知による悪い米金利の上昇を警戒。悪い金利の上昇はドル安の要因に。だが、円安がその影響を相殺しよう。今週の見通しと注目のチャート水準についてIG証券のアナリストが分かりやすく解説。

要点
・今週は米金利の動きを警戒、悪い金利の上昇は米ドル安の要因となろう
・だが5月以降、円安優勢の状況にある、ユーロ円は1年ぶりの高値水準へ上昇
・米ドル安が進行しても、円安が相殺要因となろう
・ドル円の週間予想レンジは142.00-146.15レベル
今週も142.00-146.15レンジ予想、悪い金利の上昇とドル安警戒
今週のドル円(USD/JPY)も142.00-146.15円レンジを予想する。「悪い米金利の上昇」によるドル安を警戒したい。
米連邦議会下院は3日、「大きく美しい1つの法案(OBBB)」と名付けられた減税・歳出法案を可決した。トランプ米大統領は4日、ホワイトハウスの式典で署名し成立した。
今回の「トランプ減税法案」は2025年末に期限を迎える大型減税の恒久化を柱とし、時限的にチップと残業代を非課税化する他、州・地方税(SALT)控除の上限も1万ドルから4万ドルに引き上げられる。後者の措置は5年後に終了し、その後は1万ドルに戻る。大規模減税はアメリカの個人消費と景気を下支えする要因である。その一方で財政悪化の要因でもある。米議会予算局(CBO)の試算では、今後10年間で財政赤字が約3.4兆ドル増加する見通しである。
米経済にとってプラスとマイナスの両面があるトランプ減税法案の成立について、今週の米債市場がどちらの面を重視するのか注目したい。10年債利回りは4.2%付近で底打ち感が出ており、現在は4.3%台へ反発している(4時間足、黒矢印を参照)。超長期の20年債と30年債の各利回りも4.7%台で同じく反発のムードが漂う。
米債市場がトランプ減税法案のプラス面を意識する場合は、労働市場の底堅さを示唆した6月雇用統計を意識した「良い金利」の上昇要因となろう。良い金利の上昇は米株高の要因でもある。この場合、外為市場では米ドル買いを想定したい。問題は、トランプ減税法案のマイナス面が意識される場合である。このケースでは、財政悪化を意識した「悪い米金利の上昇」が予想される。
また、トランプ米政権による関税政策の不透明感も悪い金利の上昇要因として警戒したい。上乗せ関税の一時停止期限である7月9日が迫る中、トランプ米大統領は12カ国に対して関税率を通知する書簡へ署名し、7日から順次送ると述べた。対象となる12か国の具体名には言及せず、関税率や文章の内容はそれぞれ異なると述べた。内容次第では、「インフレ再燃の懸念→悪い米金利の上昇」となる可能性がある。悪い米金利の上昇は米ドル安の要因として警戒したい。
米10年債利回りのチャート:4時間足 5月以降

出所:TradingView / 7月3日までの動向
米ドル売りを仕掛ける投機筋
トランプ米政権の主導でイスラエルとイランが停戦で合意して以降、外為市場では有事の米ドル買いから一転米ドル安へ転じている。米国商品先物取引委員会(CFTC)が公表しているデータでICEドル指数のポジション動向を確認すると、6月の下旬以降、非商業部門は売り越しへ転じている。悪い金利の上昇が確認される場合、投機筋は米ドル売りを仕掛けてくる可能性がある。
非商業部門のポジション動向:ICEドル指数

ブルームバーグのデータで筆者が作成
ユーロ円 1年ぶりユーロ高・円安水準、円安が米ドル安の相殺要因に
5月以降、外為市場では主要通貨で円安優勢の状況にある。悪い米金利の上昇で米ドル安が進行しても、円安がその影響を相殺することが予想される。
円相場の変動率:5月1日~7月4日

この円安を象徴している通貨ペアがユーロ円(EUR/JPY)である。先週3日の市場で170.61レベルまでユーロ高・円安が進行した。およそ1年ぶりの高値水準である。昨夏の上昇局面では、日銀が「レートチェック」を実施したとの一部報道があった。現在の外為市場では米ドル安が進行しており、昨年7月上旬のようにドル円(USD/JPY)が160円台まで急上昇する状況にはない。従って為替介入が主要なテーマに浮上することはないだろう。
だが、トランプ米政権の関税政策に対する不透明感が日銀の利上げの足かせとなる可能性が意識され、今週もクロス円を中心に円安優勢の状況が続くと思われる。円安は米ドル安の影響を相殺するだろう。今週、ドル円が下値をトライする局面では、以下で述べるサポートラインで反発する展開を想定したい。
ユーロ円のチャート:日足 2024年5月以降

出所:TradingView / 7月3日までの動向
ドル円の週間見通しとテクニカル分析
予想レンジの下限:142.00
冒頭で述べたとおり、今週もドル円(USD/JPY)の予想レンジの下限を142.00レベルと想定。この水準は5月の下旬以降、相場を下支えしている重要ラインである。
通貨オプション市場のリスクリバーサルを確認すると、先週と同じく1週間と1ヶ月のそれらに大きな変動は見られない。予想変動率は1週間のそれが8%台へ低下している。1ヶ月は10%前後の低い水準で安定的に推移している。上述のとおり米ドル安と円安が交錯している状況も考えるならば、ドル円が下落してもその幅は限定的となることが予想される。
ドル円のリスクリバーサルと予想変動率:日足 年初来

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 7月4日まで
ドル円は現在、50日線を挟んで方向感のない状況にある。今週、下値をトライする局面では、1時間足にある各サポート水準の攻防に注目したい。
144.20レベルはサポートラインへ転換する可能性がある。上の水準144.25レベルはフィボナッチ・リトレースメント38.2%にあたる。一方、144.00レベルは半値戻しの水準に当たる。これら2つのラインの攻防では、144円台を維持できるかどうかを確認したい。
ドル円が143円台へ下落する場合は、先週相場をサポートした143.40レベルの維持が焦点となろう(1時間足、黒矢印を参照)。この水準の下方ブレイクは、7月1日の安値142.68レベル、5月27日の安値142.11レベルのトライを意識したい。142.11のトライは、事実上142.00の攻防となる。
サポートライン
・144.20:サポート転換の可能性あり、38.2%戻し(1時間足)
・144.00:半値戻し(1時間足)
・143.40:先週のサポートライン(1時間足)
・142.68:7月1日の安値(日足)
・142.11:5月27日の安値(日足)
・142.00:予想レンジの下限(日足)
予想レンジの上限:146.15
一方、週間予想レンジの上限も先週の146.15レベルを維持する。このラインは5月の高値と安値のフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準にあたる。ドル円(USD/JPY)がこのテクニカルラインを目指すサインとして、以下にまとめたレジスタンスラインの攻防に注目したい。
最初のラインは、直近の高値と安値のフィボナッチ・エクステンション100%の水準145.00レベルとなろう(1時間足)。ドル円が145円台へしっかりと上昇する場合は、145円半ばの攻防を意識したい。89日線、3月28日の高値と4月22日の安値の半値戻し、そして日足の一目雲の上限が密集している145円半ばの突破は、146.15を目指すサインと想定したい。
レジスタンスライン
・146.15:フィボナッチ・リトレースメント61.8%、予想レンジの上限(日足)
・145.55:半値戻し、一目雲の上限(日足)
・145.44:89日線(日足)
・145.00:フィボナッチ・エクステンション100%(1時間足)
ドル円のチャート
日足:今年3月以降

出所:TradingView
1時間足:7月以降

出所:TradingView
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