ドル円、円安再加速の可能性 154円台 為替介入への警戒も
ドル円相場は154円台まで円安が進行。為替介入への警戒もあるが、週明けの米国の民間経済指標が円安材料になる可能性もある。
 
 ドル円相場で円安が急伸した。ドル円相場は日本時間31日の取引で1ドル=154円を挟んだ値動き。8か月半ぶりの円安水準となっている。日本銀行が30日までの金融政策決定会合で政策金利を維持し、植田和男総裁の記者会見も12月利上げの可能性を高める内容にはならなかったためだ。決定会合前日には、米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長が12月利下げから距離を取っており、日米から円安材料が提供された形だ。一方、ドル円相場をめぐっては、日本政府が急激な円安に警戒感を示したことで為替介入の可能性も浮上。また日銀の利上げの可能性が完全には消えていないこともあり、一気に155円台をうかがう値動きにはなっていない。ただ、週明け以降の金融市場では、米国経済をめぐる注目度の高い民間経済指標が発表される予定で、米国経済の底堅さが円安を改めて加速させる可能性もありそうだ。
ドル円相場は154円台を挟んだ値動き 8か月半ぶりの円安水準
ドル円相場(SPX)は日本時間31日午後3時54分段階で1ドル=154.19円で取引されている。ブルームバーグによると、30日夜には154.45円をつけ、2月13日(154.67円)以来の円安水準となった。ドル円相場は1日には146.59円をつけていたことを踏まえれば、1か月で7.86円の円安が進んだことになる。
 
 日銀は様子見継続で利上げを見送り FRBのパウエル議長は12月利下げから距離
30日の円安進行のきっかけは日銀の利上げ期待が高まらなかったことだ。日銀は30日までの金融政策決定会合で政策金利を0.5%で据え置き。会合後に公表した経済見通しも7月段階から大きな変更は加えられなかった。金融市場の一部では米国のスコット・ベッセント財務長官が29日のXヘの投稿で、日銀の自由な意思決定が「為替変動の過度な変動を防ぐためのカギとなる」と指摘したことを背景として、日銀が利上げに踏み切るとの観測もあったが、肩透かしに終わった。植田氏は記者会見で利上げを決断するまでには、2026年の春闘での賃金交渉に向けた労使双方の動きといった「データをもう少しみたい」と述べた。
また、日銀の政策決定の前に伝わった、FRBの金融政策をめぐる動向も円安材料となっていた。FRBは29日までの連邦公開市場委員会(FOMC)で2会合連続となる利下げを決め、政策金利を3.75-4.00%に設定。しかしパウエル氏は29日の記者会見で、12月の利下げについては「既定路線とは程遠い」と述べ、12月利下げを確実視していた金融市場の期待に冷や水をかけた。ブルームバーグによると、30日の金融市場では12月FOMC後の政策金利の水準は3.701%と見込まれ、利下げ確率は71%まで下がっている。
 
 片山財務相が円安急進を牽制 日米金利差は半年ぶりの小ささにも
一方、足元のドル円相場には日本政府による為替介入への警戒も出てきた。片山さつき財務相は31日の記者会見で、為替相場について「投機的な動向を含め、為替市場の過度な変動や無秩序な動きについて高い緊張感をもって見極めている」と述べた。
為替介入の可能性は、ドル円相場の背景となる日米長期金利(10年物国債利回り)の動向からも浮かび上がる。10月に入ってからの「高市トレード」で円安が急伸する中でも、日米の長期金利の差はむしろ縮小傾向だったからだ。ブルームバーグによると、日米金利差は21日には2.309%ポイントとなり、2022年4月4日(2.188%ポイント)以来の小ささを記録。日米の金融政策決定後には金利差は2.4%ポイント台に広がっているが、それでも自民党総裁選前日(3日)と同水準となっている。ドル円相場では2024年7月初めに為替介入とみられる値動きで円高が急進する前も、金利差縮小と円安進行が目立つ局面となっていた。
 
 日銀の12月利上げの可能性は消えず 週明けの米国民間経済統計は円安材料か
さらに、日銀の12月利上げの可能性が消えたわけではないことも円安進行にブレーキをかける要因だ。植田氏は30日の記者会見で、春闘に向けた動きを注視するとしつつも、春闘の結果が確定するまで待つわけではないことも強調。「初動のモーメンタムがどういう感じになるか」を見極める考えを示した。米国の関税政策の影響を受けている自動車各社が11月に行う中間決算発表で、積極的に賃上げする余裕が感じられるかも判断材料になるとしている。ブルームバーグによると、31日午後3時54分段階の金融市場で見込まれている12月決定会合後の政策金利の水準は0.592%で、利上げ確率は46%程度とみられている。
 
 
ただ、週明け11月3日以降の金融市場では、米国の経済指標が材料視されて円安が進む可能性がある。3日には米サプライマネジメント協会(ISM)が10月の製造業の景況感指数(PMI)を発表する予定。また5日には民間雇用サービス会社ADPが10月の全米雇用リポートを発表する。FRBのパウエル氏は29日の記者会見で米国経済の堅調さを強調しており、これらの民間経済指標でも米国経済の強さが確認されれば、改めてFRBの利下げ観測が遠のく形で円安圧力が強まる展開も考えられそうだ。
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