ユーロ円、史上最高値更新も 一時175円台 日銀利上げ見通しは逆風
ユーロ円相場ではECBの利下げ打ち止め見通しがユーロ高材料。10月1日の9月CPIで上昇が加速する可能性もある。

ユーロ円相場のユーロ高が記録的な水準に達している。ユーロ円相場は日本時間29日には一時、175円台を記録。欧州中央銀行(ECB)の利下げ打ち止めが濃厚になっていることがユーロ高圧力として働いており、1年2か月ぶりの史上最高値更新が視野に入る水準だ。10月1日に発表される9月のユーロ圏の消費者物価指数(CPI)で物価上昇率に強さがみられれば、ユーロ高が記録更新に向けて加速する展開も考えられる。一方、日本経済をめぐっては日本銀行が10月の金融政策決定会合で利上げに踏み切るとの観測が拡大。30日のユーロ円相場ではユーロ高にブレーキがかかり、円高方向の動きが意識されている。また10月4日投開票の自民党総裁選挙の情勢次第では、円高圧力が一段と強まる可能性もあり、ユーロ円相場での史上最高値が遠のく展開も考えられそうだ。
ユーロ円相場は29日に175.13円を記録 1年2か月ぶりの史上最高値までわずか
ユーロ円相場(EUR/JPY)は日本時間29日に1ユーロ=175.13円を記録した。ブルームバーグによると、2024年7月11日につけた史上最高値(175.43円)以来のユーロ高水準だ。ユーロ円相場は8月末段階では171円台で取引されていたことを踏まえれば、約1か月で1.9%程度のユーロ高が進んだことになる。フランスでフランソワ・バイル内閣の信任が否決されたことを受け、エマニュエル・マクロン大統領がセバスチャン・ルコルニュ氏を次期首相に指名した9日には約0.52%のユーロ安が進んだが、影響は長続きしなかった。

ECBの利下げは打ち止めの公算 ラガルド総裁は物価上昇率に満足感
ユーロ高を後押ししてきたのはECBの利下げが打ち止めになるとの見通しだ。ECBは11日の理事会で、2会合連続で政策金利の据え置きを決定。政策金利の下限にあたる中銀預金金利を2.00%で維持した。クリスティーヌ・ラガルド総裁は11日の記者会見で、「物価上昇率は望ましい水準にある」と言及。今後の金融政策の見通しについては「経済指標次第」との立場を繰り返し強調したが、現段階ではこれ以上の金融政策の修正は必要ないとの見方を示唆した形だ。
ECBが11日に示した経済見通しでは、2025年の物価上昇率はECBが目標とする2%に近い2.1%で、2026年に1.7%まで低下した後、2027年には1.9%まで戻るとされた。ECBは2024年6月6日に4年9か月ぶりの利下げを決め、2025年6月5日までの1年間で政策金利を合計2.00%幅で引き下げている。ブルームバーグによると、日本時間30日午後4時13分の金融市場では、ECBの12月理事会後の中銀預金金利は1.923%と見込まれており、年内追加利下げの確率は11%程度にとどまっている。

9月CPIで物価上昇上振れならユーロ高の進行も
こうした中、金融市場では日本時間10月1日午後6時に発表されるユーロ圏の9月CPIに注目が集まる。ブルームバーグがまとめた市場予想では、総合指数の伸び率は前年同月比2.2%、食品とエネルギー、酒類、タバコを除いたコア指数の伸び率は2.3%と見込まれている。実際の結果が予想よりも上振れれば、ECBの追加利下げはさらに遠のき、ユーロ高圧力として働くことも考えられそうだ。この場合、ユーロ円相場でユーロ高が進み、2024年7月以来の史上最高値に近づくこともありえる。

日銀の10月利上げ確率が上昇 野口審議員「上方リスクの重み増している」
一方、日本経済をめぐっては円高圧力も強まっている。日本銀行の野口旭審議委員は29日の札幌市内での講演で、「政策金利調整の必要性がこれまで以上に高まりつつある」と言及。日本の経済や物価の動向については「下方リスクはありつつも、政策判断における上方リスクの重みがより増している」と述べた。野口氏は5月の講演では今後の金融政策の基本スタンスとして、「上下リスクを含む経済状況の進展を注意深く確認しつつ、慎重に政策調整を進めていく」との立場をとっていた。ブルームバーグによると、金融市場で見込まれている10月下旬の金融政策決定会合後の政策金利の水準は、30日午後4時13分段階で0.648%で、前週末から0.034%ポイント上昇。10月利上げ確率は68%程度まで高まってきた。

こうした中、FX市場では円高が進行。30日午後4時13分段階の円の対ドル相場は26日のニューヨーク市場の終値との比較で、0.97%の円高水準となった。一方、ユーロの対ドル相場(EUR/USD)は0.34%のユーロ高に留まっている。ユーロ円相場は1ユーロ=174.00円を挟んだ値動きで、史上最高値からは遠のいた。

自民党総裁選挙は円相場に影響 高市氏の勢い戻ればユーロ高か
また円相場に関しては10月4日投開票の自民党総裁選挙への関心が高い。30日までのメディアによる情勢分析では、小泉進次郎氏が優勢に選挙戦を進める一方、2番手を自民党支持層での支持が厚い高市早苗氏と国会議員票が集まっている林芳正氏が争う構図のもようだ。トップを走る小泉氏も過半数を固めているわけではなく、高市氏か林氏との決選投票になれば、形勢をひっくり返される可能性がある。
金融市場では高市氏は積極財政主義と受け止められてきた。自民党総裁選での勝利が近づけば円安材料として意識され、ユーロ円相場でのユーロ高が史上最高値に向けて改めて動き出すことも想定される。逆に高市氏が劣勢となれば、石破茂内閣で閣僚を務めてきた小泉氏や林氏の勝利の可能性が高まり、ユーロ円相場でも円高・ユーロ安の材料ととらえられるシナリオが考えられそうだ。
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