議会の勢力が分かれれば、トランプ大統領の1.5兆ドル規模の国防予算が阻まれる可能性があり、ドローンメーカー、半導体メーカー、サイバーセキュリティ企業、衛星関連企業への影響は大きくなりえます。2026年の米中間選挙が、防衛テック関連のトレーダーや投資家にとって重要な転換点となる理由を解説します。
2026年の米中間選挙は、ドナルド・トランプ大統領が掲げる2027会計年度の国防予算案、総額1.5兆ドルの行方を左右する節目になります。この予算要求は現在の国防予算を42%上回るもので、ホワイトハウスは、増額の規模がレーガン政権期の軍備増強を上回り、第2次世界大戦直前の歴史的な増額に迫ると説明しています。中間選挙で共和党が多数派を確保すれば、この予算の実現に近づく可能性があります。
中間選挙の結果が重要なのは、2026年12月11日までのつなぎ予算(暫定予算)が成立しており、トランプ大統領の予算要求がそれまで事実上棚上げされているためです。
一方、米戦争省(旧国防総省)が2025年12月に開始した2年間・11億ドル規模の「ドローン・ドミナンス・プログラム」も、中間選挙の結果に左右されます。
ヘグセス戦争長官が主導するこの計画は、2028年1月までの2年間に、武装した小型の自律型無人航空機(ドローン)を4段階で合計約34万機調達することを想定しています。この調達規模は、現代戦の費用対効果の計算を大きく変えうるものです。
この計画は、無人システムへのかつてない規模の取り組みを示しています。戦争省の予算資料によると、同省の2027会計年度の予算要求には、ドローンと対ドローン技術に740億ドル超が盛り込まれており、2026会計年度の3倍で、過去最大の投資となります。
戦争省の防衛テック関連の支出計画は、ドローンにとどまりません。2027会計年度の予算要求では、予算の半分を超える7,568億ドルが新たな能力への投資に充てられ、サイバー能力に200億ドル超、宇宙軍に750億ドル超が配分されています。
しかし、この構想は投票によって揺らぐおそれがあります。米ピュー・リサーチ・センターが2026年10月に公表した世論調査では、下院選の投票先として民主党を支持する登録有権者が44%、共和党が36%と、民主党が8ポイントリードしています。
さらに、豪シドニー大学米国研究センター(USSC)は、民主党が下院の多数派を奪還するとの見方が広がっていると指摘しています。そうなれば、民主党は、財政調整法案(リコンシリエーション)をその後の予算確保の手段として使えないよう阻止できるようになります。リコンシリエーションとは、予算関連の法案を上院の単純過半数で可決できる手続きです。
ただUSSCは、そうした選挙結果がかえって、国防支出で自らの裁量を最大限に確保しようとするトランプ政権の動機を強めるだけかもしれないとも分析しています。選挙後も、予算案をめぐる問題は各党の戦略や駆け引きに影響し続ける可能性があります。
国防支出の優先順位をめぐっては、党派による大きな違いもあります。米紙USAトゥデイが報じた5月上旬の世論調査では、米国人の約6割が、戦争省の過去最大の予算案は費用がかかりすぎると回答しました。予算が多すぎると答えた割合は民主党支持者で87%、無党派層でも54%にのぼります。民主党が下院を握った場合、トランプ政権の国防計画のうち最も積極的な部分を抑えるよう、有権者から圧力を受ける可能性があります。
米ブラウン大学の研究プロジェクト「戦争のコスト」の研究者ジェニファー・グリーンバーグ氏は、USAトゥデイに対し、「世論調査のデータは、軍事費の規模に対して一般市民の違和感が強まっていることを示している」と語りました。さらに、「支出を増やしても実際には安全にならないことを、市民が今まさに体感しているのだと思う」と述べています。
11月の投票日を前に、防衛テックをめぐるいくつかの政策分野が争点になっています。これらの転換点を押さえておくことは、選挙後の相場、特に防衛セクターの動きを理解するうえで役立つ可能性があります。
➤ 防衛株とドローン・ドミナンス・プログラム
ドローン・ドミナンス・プログラムは「ガントレット(試練)」と呼ばれる4つの段階で進められ、段階ごとに調達量を増やしながら、競争を通じて単価を引き下げる仕組みです。戦争省の資料によると、公開のランキング表を通じて企業間の競争を促し、段階ごとの生産量を3万機から15万機に拡大し、目標単価を5,000ドルから約3,000ドルまで引き下げることを目指しています。
第1段階と第2段階は、それぞれ2026年2月と8月に実施されました。残りの段階は2027年に予定されています。
前述のとおり、民主党が下院を握れば、トランプ政権が民主党の支持なしに国防費の増額を賄うための手段である財政調整法案が阻まれ、第3段階以降の資金にも影響が及ぶ可能性があります。
関連する防衛株:クレイトス・ディフェンス・アンド・セキュリティ・ソリューションズ(KTOS)、エアロバイロメント(AVAV)、レッド・キャット・ホールディングス(RCAT)、AEVEX(AVEX)、アンユージュアル・マシーンズ(UMAC)、パランティア・テクノロジーズ(PLTR)、ボーイング(BA)
➤ 半導体株とCHIPS法の期限
2022年のCHIPS・科学法(CHIPS法)は、国内の半導体製造を支援する390億ドルの補助金プログラムを設けたもので、兵器システムに使われる半導体の国内生産の確保も狙いの一つとされています。ただ、重要な期限が迫っています。米商務省が国内の半導体生産を促すためのCHIPS法の資金を受け取るのは、2026会計年度が最後です。
さらに、半導体生産に関わる設備投資への35%の投資税額控除は、2026年12月31日までに工場の建設を始めたプロジェクトだけが対象です。
関連する大手防衛企業の株:BAEシステムズ(英ロンドン:BA.)、RTX(RTX)、ロッキード・マーチン(LMT)
関連する半導体サプライヤーの株:インテル(INTC)、ウルフスピード(WOLF)、グローバルファウンドリーズ(GFS)、スカイウォーター・テクノロジー(SKYT)
➤ サイバーセキュリティ株と防衛AIの統合
戦争省の2026会計年度のサイバー空間関連の予算要求額は143.2億ドルで、2025会計年度の確定額から7.24%増えました。
さらに注目されるのは、サイバー防衛がAIと一体化した防衛へと進化しつつある点です。調査会社アクシス・インテリジェンスによると、2027会計年度の予算要求では、戦争省の予算100ドルのうち7.76ドルがAIと自律化技術に充てられています。同社はこれを「防衛AI投資強度(DAII)」の合算値と呼んでいます。
同社は、「自律化技術の項目だけでも、2026会計年度の要求額134億ドルから2027会計年度には540億ドルへと303.0%増加した。585億ドルのAI関連予算のうち78.63%は、『ソブリンAIアーセナル』という1つの項目に集中している」としています。
関連する防衛関連のサイバーセキュリティ株:クラウドストライク(CRWD)、ゼットスケーラー(ZS)、パロアルトネットワークス(PANW)、フォーティネット(FTNT)、センチネルワン(S)
関連するサイバーセキュリティETF:ファースト・トラスト・ナスダック・サイバーセキュリティETF(CIBR)、グローバルX サイバーセキュリティETF(BUG)
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➤ 宇宙防衛と衛星関連株
2027会計年度の予算には、宇宙軍向けの750億ドル超も盛り込まれており、宇宙配備型のミサイル防衛用センサーや迎撃システムにも重点的に配分されています。これは、従来の航空機中心の体制から、宇宙を基盤とする体制への転換を示すものとみられます。
関連する宇宙防衛・衛星関連株:スペースX(SPCX)、ロッキード・マーチン、ノースロップ・グラマン(NOC)、RTX、L3ハリス・テクノロジーズ(LHX)、ASTスペースモバイル(ASTS)
関連する防衛・宇宙ETF:iシェアーズ米国航空宇宙・防衛ETF(ITA)、SPDR S&P航空宇宙・防衛ETF(XAR)、ARK宇宙探査・イノベーションETF(ARKX)、プロキュア・スペースETF(UFO)
2026年の米中間選挙は、トランプ政権の2027会計年度の国防予算1.5兆ドル(現行比42%増)にとって重要な分岐点です。共和党が議会の主導権を確保すれば、ホワイトハウスが第2次世界大戦直前の増額に迫るとする、この大規模な予算の実現に近づく可能性があります。
2028年1月までに自律型ドローン合計約34万機の調達を計画する11億ドル規模のドローン・ドミナンス・プログラムは、特に影響を受けやすいとみられます。民主党が下院を握れば、第3段階以降の資金を賄う財政調整法案が阻まれる可能性があります。
また、CHIPS法の資金が出る最後の年度は2026会計年度で、35%の投資税額控除の期限は2026年12月31日です。
戦争省のサイバー・AI関連の支出計画も急拡大しています。2027会計年度の予算要求では、予算100ドルのうち7.76ドルがAIと自律化技術に充てられ、自律化技術の項目は540億ドル(303%増)にのぼります。
宇宙軍の予算は750億ドルを超える可能性があり、宇宙配備型のミサイル防衛にも重点が置かれています。ピュー・リサーチ・センターの調査では下院選の投票先で民主党が8ポイントリードしており、共和党の多数派維持と民主党の躍進のどちらが、ドローン、半導体、サイバーセキュリティ、宇宙システムといった防衛テック分野の行方を変えうるのかが注目されます。
本記事はIGグループが作成した英文記事をもとに、IG証券が日本の読者向けに再構成したものです。
原文: Trump's US$1.5 trillion defence budget: dream or nightmare for traders and investors?
日本語版編集: IG証券
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