AIによって電力需要が急増するなか、投資家はAIを支える産業への注目を強めています。2026年の米中間選挙は、米国のAI政策をめぐって有権者と投資家がそれぞれの選択肢を見極める、まさにその議論の中心にあります。
AIの拡大により、電力、データセンター、送電網への需要は、米国だけでなく世界中で急速に高まっています。一方で、地域のインフラや住民生活への負担を理由に、AIデータセンターへの反対も強まっています。この対立が、2026年の米中間選挙で政治家と有権者の間の主要な争点になっていると指摘する専門家もいます。
米ニューヨーク・タイムズは2026年8月、ワシントンの政策担当者はおおむねAIの経済的・戦略的な重要性を強調しているものの、いくつかの州では新たなデータセンター開発への反対が広がり始めていると報じました。懸念の中心は、電力需要の増加や電気料金、水の使用量、巨大テクノロジー企業の影響力の拡大などです。
同紙によると、二大政党の候補者はいずれもデータセンター開発を選挙戦の争点として取り上げており、民主党の多くと、増えつつある共和党の候補者が反対を訴えています。AIインフラが、エネルギー、地域経済の振興、生活の質をめぐる幅広い議論と結びついていることがうかがえます。AI関連の投資が拡大を続けるなか、データセンターの増加に政治がどう対応するかは、エネルギー政策や規制と並んで、トレーダーや投資家が注視する新たな視点になる可能性があります。
それでも、はっきりしていることが一つあります。AIの発展が続く限り、それを支える電力はさらに必要になるということです。このブームに必要なエネルギーを、どこで、何によって、誰が供給するのか。トレーダーや投資家は、この流れをどう読めばよいのでしょうか。
AIの急拡大は、電力需要の大幅な増加につながっています。国際エネルギー機関(IEA)によると、世界のデータセンターの電力需要は2024年から2030年にかけて2倍以上に増える見通しで、その最大の要因はAIです。
投資への影響は、いずれテクノロジー企業の枠を超えて広がるのでしょうか。その可能性は高そうです。ゴールドマン・サックスのアナリストは2024年、世界のデータセンターの電力需要が2030年までに約160%増える可能性があると試算しました。データセンターは、大量のAI処理に必要な膨大な計算能力とハードウェアを収容する施設です。
ゴールドマン・サックスの分析は、AIの発展が単独のテクノロジーの話題ではなく、複数の主要セクターにまたがる経済の大きな原動力であり、無視できない存在であることも示しています。
今回の中間選挙は、米国の有権者と市場参加者にとって、政府のAI政策の方向性を選ぶ機会でもあります。その判断は、世界に大きな波及効果をもたらす可能性があります。
AIの発展にとって発電の重要性は高まっていますが、それは幅広い政策課題の一部にすぎません。データセンターには、AIの成長を支えられる安定した電力供給、送電網、そして許認可が欠かせません。
2026年の中間選挙で、有権者や投資家が注目しそうな主な分野は次のとおりです。
① 半導体製造
米政府はこの数年、技術のサプライチェーン(供給網)を強化するため、国内の半導体生産を後押ししてきました。
バイデン前大統領が2022年に署名したCHIPS・科学法(CHIPS法)は、国内の半導体製造と研究開発の支援に約530億ドルを充てています。米商務省は2024年8月までに、15州・23件のプロジェクトを対象に、総額300億ドルを超える資金支援の提案を発表しました。
中間選挙でどちらの党が議会を握っても、半導体補助金、製造業への優遇措置、輸出規制をめぐる立法の動きは、有権者と政策担当者の双方にとって長期的な焦点であり続けるでしょう。
② AIの規制とガバナンス
AIのガバナンス(統治・管理の仕組み)も、有権者が注目しそうなテーマです。特に、データプライバシー、知的財産権、AIモデルの安全性、競争政策が焦点になります。
バイデン前政権下のホワイトハウスは2024年10月の国家安全保障覚書で、AI分野で世界をリードすることを国家安全保障と経済の重要な目標と位置づけました。二大政党の議員も、さまざまな規制の枠組みを提案しています。
連邦レベルでAIを全体的に規制する枠組みはまだできていませんが、今後の議会の動き次第では、ソフトウェア開発企業、クラウド事業者、企業向けテクノロジー企業に影響が及ぶ可能性があります。
③ インフラの許認可
許認可制度の改革も、業界団体、電力会社、政策担当者の間で重要なテーマになりそうです。
ゴールドマン・サックスのアナリストは、電力需要の増加が続けば、送電線や発電所などのエネルギーインフラに大規模な投資が必要になると指摘しています。
データセンターの開発が加速するなか、プロジェクトの承認にかかる期間やインフラの許認可は、政治・経済の両面でますます重要な論点になる可能性があります。
AIインフラをめぐる社会・経済・政治の議論は、中間選挙に向けた時期に限らずそれ以前から、AIに伴う電力・インフラ需要の増加をどのエネルギー源が支えるのかに集まってきました。主なエネルギー源は次の3つです。
① 天然ガス
米エネルギー情報局(EIA)によると、米国の発電量に占める割合が現在最も大きいのは、天然ガス(NY天然ガス)です。
ガス火力発電は、AI関連の新たな電力需要が次々と生まれるなかでも安定した電力を供給できます。そのため、天然ガスはデータセンターの重要な電源であり続けるとの見方が、複数のアナリストから出ています。
ロイターは、データセンターの急増する電力需要に応えるため、開発業者が天然ガス発電プロジェクトを相次いで進めていると報じています。
② 原子力
原子力も議論の中心に浮上しています。バンク・オブ・アメリカのアナリストは、データセンターが今後、再生可能エネルギーや原子力などの低炭素電源からの電力調達を増やしていくとの見方を示しています。
ここ数年、グーグル、マイクロソフト、アマゾンなどのテクノロジー企業は、将来のデータセンター運営に必要な電力を長期的に確保するため、原子力関連のプロジェクトとの提携や投資を相次いで発表してきました。
③ 再生可能エネルギー
一方、太陽光、風力、蓄電池などの再生可能エネルギーのプロジェクトも、アマゾンやグーグルをはじめとする大手テクノロジー企業のエネルギー戦略で、引き続き大きな位置を占めています。
AIやデータセンターの今後の電力需要を、単一のエネルギー源で賄えるとは考えにくいとみるアナリストもいます。バンク・オブ・アメリカの調査部門は、トランプ政権が発電について「オール・オブ・ザ・アバブ(あらゆるエネルギー源を活用する)」の方針をとっていると指摘しています。
有権者に関わる論点としては、許認可手続きの長期化がエネルギーインフラの整備を遅らせかねないと、業界団体が訴えています。
AI関連の投資はすでに大きく動き出しています。そのため2026年の中間選挙は、AIに賛成か反対かという結果がAI投資そのものを左右するかどうかよりも、AIの拡大に関する具体的な政策や姿勢を有権者が選ぶ選挙になるのかもしれません。
AIはソフトウェアや半導体企業の観点から語られることが多いものの、その拡大は、発電、送電インフラ、エネルギー安全保障、そして何より政府の政策と介入に、ますます左右されるようになっています。
トレーダーや投資家にとって、選挙後も問われるのは、どの企業がAI競争をリードし続けるかだけではないかもしれません。その成長を支えるのに最も有利な立場にあるのは、どの産業、どのエネルギー源、どのインフラ企業なのか。こうした問いが重みを増していきそうです。
本記事はIGグループが作成した英文記事をもとに、IG証券が日本の読者向けに再構成したものです。
原文: Who powers the AI boom? What the 2026 US Midterm Elections could mean for energy, utilities and AI stocks
日本語版編集: IG証券
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