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AIトレードを5つの層で読み解く:半導体から巨大テクノロジー企業まで

米国株は、人工知能(AI)を追い風に過去最高値圏にあります。いま問うべきは「AIはまだ有望なトレードか」ではなく、「AIのどの部分か」です。

Wall street Source: Getty

なぜ今「層」で考えるのか

AIトレードが、米国株を再び最高値圏に押し上げています。S&P500種株価指数(米国500)は最近7,700台半ばで取引を終えており、その上昇はほぼすべてAI関連株によるものです。同指数は2026年に入って13%超上昇し、ナスダック総合指数は17%上昇しています。

ただ、「AIトレード」とひとくくりにすると、多くのことが見えなくなります。巨大テクノロジー企業が投じる1ドルは、チャットボットの回答になるまでに、いくつもの企業を通過します。それぞれの層には、固有の原動力、利益率、そして弱点があります。以下、土台から順に見ていきます。

第1層:シリコン(頭脳)

重い処理を担う、画像処理半導体(GPU)、独自設計のAI半導体、ネットワーク用半導体の層です。市場が最初に注目するのはこの層で、これまでのところ期待を裏切っていません。エヌビディア(NVDA)は10月6日(火)に1株=243.37ドルの取引時間中の上場来高値を更新し、マーベル・テクノロジー(MRVL)は目標を大きく引き上げました。マーベルは2031年度の売上高目標を700億〜900億ドルとしており、2026年度の82億ドルから大幅な拡大を見込んでいます。

原動力:巨大テクノロジー企業からの受注、新しい半導体の投入、半導体の輸出規制。

リスク:顧客が追加発注をせず、手元の半導体の消化を進めている兆候。

第2層:メモリーと配管(神経系)

高速メモリー、データストレージ、そして数千の半導体同士をつなぐ光ファイバーの層です。この層は、目立たないうちに最も注目される層の一つになりました。代表例がマイクロン・テクノロジー(MU)です。同社は、AI半導体の隣に配置される高速メモリー「広帯域メモリー(HBM)」を製造する唯一の米国企業です。9月30日に発表した2026年度第4四半期(9月3日までの3か月)の売上高は542億ドルで前年同期比379%増、非GAAP(調整後)の売上総利益率は45.7%から87%に上昇しました。次の四半期の売上高見通しは約615億ドルです。

10月5日(月)には、ウエスタンデジタル(WDC)とシーゲイト・テクノロジー(STX)がそれぞれ6%と4%上昇し、複数の層にまたがるエヌビディアとブロードコム(AVGO)もそれぞれ2%上昇しました。ストレージ株の反発は、東芝がデータセンター向けハードディスクの生産能力を倍増させる計画だとの報道を受けて、前営業日の10月2日(金)に約10%下落した後のことでした。翌6日(火)には、AIインフラ関連株への期待が戻り、シエナ(CIEN)、ネビウス・グループ(NBIS)、アステラ・ラボ(ALAB)が大きく上昇しました。ただ、シーゲイトとウエスタンデジタルは同じ日にそれぞれ9%、7%下落しています。

原動力:価格決定力。メモリーのコストは、巨大テクノロジー企業の投資計画を左右するほど大きくなっています。メタ・プラットフォームズ(META)は4月、部品価格の上昇、とりわけメモリーを理由に、2026年の設備投資見通しを1,150億〜1,350億ドルから1,250億〜1,450億ドルに引き上げました。マイクロソフト(MSFT)の最高財務責任者(CFO)も、予算のうち250億ドルがメモリーと半導体のコスト上昇によるものだと説明しています。

リスク:メモリーは好不況を繰り返してきた歴史があり、品不足はたいてい供給過剰で終わります。東芝の計画は、新たな供給がいかに素早く打ち出されうるかを示しています。

第3層:データセンターとAIクラウド事業者(身体)

データセンターの貸し手、建設会社、冷却の専門企業、AI半導体を貸し出す企業の層です。コアウィーブ(CRWV)、ネビウス、バーティブ・ホールディングス(VRT)、エクイニクス(EQIX)などが該当します。

原動力:契約済みで納入を待つ受注残と、新たな能力をどれだけ早く提供できるか。

リスク:資金調達コスト。この層は借り入れへの依存度が高く、米10年債利回りは10月7日に一時5.365%と、2002年以来の高水準まで上昇しました。

第4層:電力(心臓)

ここまでのどの層も、電力なしには動きません。そして今、電力がボトルネック(制約)になっています。電力価格の上昇は、ハイパースケーラー(大規模なクラウド事業者)など巨大テクノロジー企業の判断にも跳ね返り、いずれ第5層の投資意欲に影響する可能性があります。詳しくは関連記事をご覧ください。

【関連記事】エネルギー大国・米国の2つの顔:AIの電力需要と原油・天然ガスの優位性

 

第5層:プラットフォーム(財布)

マイクロソフト、アルファベット(GOOGL)、アマゾン・ドット・コム(AMZN)、メタは、最大級の買い手です。4社は合わせて、2026年に約7,250億ドルを投じる計画です。アルファベットだけでも、2025年の914億ドルに対し1,950億〜2,050億ドルを見込んでおり、この計画はすでに2回引き上げられています。

問題はタイミングです。マイクロソフト、アルファベット、メタが上半期に使ったのは計画の35〜42%にとどまり、下半期の支出は膨らまざるを得ません。キャッシュフローにも余裕がありません。メタの4〜6月期の設備投資は311億ドルで、本業で稼いだ現金(営業キャッシュフロー)の319億ドルとほぼ同じ規模でした。

5つの層をつなぐもの

すべての層は、第5層が投資を続けることを前提にしています。そのため、10月下旬の決算が最大のイベントになります。4大テクノロジー企業は10月下旬に7〜9月期の決算を発表する予定で、投資計画が削られれば、その影響は層全体に波及する可能性があります。最も大きな影響を受けそうなのは、売上高のわずかな変化で利益が大きく振れる層です。AIサービスの需要の弱まりや利益率への圧力の兆しが出れば、優先順位の見直しを迫られる可能性もあります。

もう一つ意識しておきたいリスクは、集中です。モーニングスター(豪州版)への寄稿でキャピタル・グループのレイノルズ氏が指摘するように、米国市場ではごく少数の企業が大きな比重を占めており、市場の行方はAIが成果を出し続けるかどうかに大きく依存しています。

注目ポイント

  • 巨大テクノロジー企業の7〜9月期決算で示される投資計画(10月下旬)

  • マイクロンの615億ドルの売上高見通しを受けてメモリー価格が上がり続けるか、新たなハードディスクの生産能力がどれだけ早く立ち上がるか

  • 米国債利回り:5%を超える水準では、借り入れに頼る層が最初に影響を受けます 

AIを構成する各層の動きから、引き続き目が離せません。

※数値は2026年10月8日時点のものです。過去の実績は、将来の成果を示すものではありません。

本記事はIGグループが作成した英文記事をもとに、IG証券が日本の読者向けに再構成したものです。

原文: The 5 layers of the AI trade

日本語版編集: IG証券

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