原油価格は下落基調 WTIは68ドル台 OPECプラス増産ペース加速
WTIは中東情勢への懸念を背景に68ドル台で推移。しかしOPECプラスの想定以上の増産は原油価格の下落要因で、10月以降の動向に注目が集まる。

原油価格への下落圧力が強まっている。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し)は日本時間9日午前の取引で1バレル=68ドル台で推移。イエメンの親イラン武装組織フーシをめぐる中東情勢への懸念が出ているものの、急激な値上がりには至っていない。サウジアラビアやロシアを含むOPECプラス加盟8か国が5日に8月の原油生産量を市場の想定以上に引き上げたことが、原油価格の下落要因として働いている。8か国は4月に着手した段階的増産計画の目標に9月にも到達する可能性があり、10月以降も増産を続けるとの見方が強まれば、原油価格がいっそう下押しされることも考えられそうだ。また、アメリカのドナルド・トランプ大統領が繰り出す高関税政策は世界経済の見通しを不透明にしており、原油価格は今後も値下がり基調が続くことが想定される。
WTIは78ドル台で推移 フーシの民間船舶攻撃で中東情勢に懸念
WTI(翌月渡し、WTI原油)は日本時間9日午前11時38分段階で1バレル=68.16ドルで取引されている。ブルームバーグによると、フーシはアラビア半島の南側に位置する紅海を航行する民間貨物船を攻撃し、少なくとも2人が死亡。WTIは週明け7日の取引では65.40ドルをつける場面もあったが、イスラエルとイランの停戦合意の発表にも関わらず中東の不安定化が続くとの懸念が、原油価格を押し上げる要因となっている。

OPECプラスの予想以上の増産は原油価格の下落要因 計画を大きく超えるペース
ただ、原油市場ではOPECプラスの増産加速という下落圧力の強さも意識されている。サウジアラビアなどOPECプラス8か国は5日、8月の生産量を7月との比較で日量54.8万バレル引き上げると発表。5月から7月まで3か月続いた増産幅(日量約41万バレル)を上回るサプライズとなった。
8か国は2024年12月5日に、2025年4月から2026年9月までの18か月かけて合計日量246.4万バレルの増産を行う計画を打ち出していたが、5月以降の生産量については計画を上回る増産を相次いで決定してきた。9月も8月と同じ日量54.8万バレルの増産が行われれば、18か月かけて行うはずだった増産幅を6か月で達成することになる。

OPECプラスが10月以降も増産継続なら原油価格は下落加速の見通し
こうした中、原油市場では10月以降も増産が続くかどうかに注目が集まっている。足元で進んでいる増産は、8か国が2023年11月30日までに決めた日量220万バレルの減産を段階的に解消したうえで、アラブ首長国連邦(UAE)については日量30万バレルの追加生産を認めるという構図。一方、2023年4月2日に発表された日量116万バレルの減産と、ロシアが2月に発表していた日量50万バレルの減産は2026年12月末まで続けられることが決まっている。今後、OPECプラスがこの合計日量165万バレルの減産の縮小にも手をつけることになれば、原油価格への下押し圧力が強まることも考えらえる。
また、原油市場ではトランプ氏の高関税政策が世界経済を混乱させ、原油需要を弱めるとの筋書きも意識されやすい状況だ。トランプ氏は8日、自身のSNSトゥルースソーシャルへの投稿で、7日に発表した相互関税一部停止の8月1日までの延長について、これ以上引き延ばすことはないとの立場を強調。閣議では欧州連合(EU)が8月以降に支払う関税を記した書簡を「2日後」に送るとし、EUに対する圧力を強めた。また米国が輸入する銅に50%の関税を課すとの方針にも言及しており、企業活動にとっては新たな不確定要素が加わった。
米国の原油需要をめぐっては、米エネルギー情報局(EIA)が9日午前10時30分(日本時間9日午後11時30分)に発表する原油在庫量(戦略備蓄除く)にも注目が集まる。ブルームバーグがまとめた市場予想では1週間前比で160.0万バレルの減少が見込まれており、実際の在庫の取り崩しが想定よりも少なかったり、在庫が積み増されたりしていた場合には原油価格の値下がり要因となると考えられそうだ。

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