原油価格、上昇　WTIが63ドル台　トランプ政権が対イラン圧力強化

原油価格が上昇に転じている。原油先物市場の指標価格であるWTI（翌月渡し）は日本時間17日午前の取引で一時、1バレル＝63ドル台まで値上がり。5営業日ぶりの高値をつけた。アメリカのドナルド・トランプ政権がイラン産原油の市場からの締め出し策を強化したためで、原油供給が抑えられるとの見方が影響した。また16日発表の米国の原油在庫は需要の強さを示す結果で、やはり価格上昇要因になっている。しかしトランプ氏の高関税政策が世界経済を混乱させる中、2025年の石油需要は下押しされるとの見方が支配的。原油価格はトランプ氏の相互関税発表前からは13％近い安値となっており、原油市場への下落圧力は今後も続いていきそうだ。

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WTIは一時63.05ドルで5営業日ぶり高値　トランプ政権がイランの原油輸出に圧力

WTI（翌月渡し、WTI原油）は日本時間17日午前7時44分ごろに1バレル＝63.05ドルをつけた。ブルームバーグによると、7日の高値（63.90ドル）以来の63ドル台で、9日につけた直近の安値（55.12ドル）との比較では14.40％高となっている。

原油価格に上昇圧力をかけたのはトランプ政権のイランに対する強硬姿勢だ。米財務省は16日、イラン産原油を輸入していた中国の石油精製施設を新たに経済制裁の対象に追加。スコット・ベッセント財務長官はXへの投稿で「イランに対して最大限の圧力をかけ、イランの原油供給網や輸出を破壊する」と強調した。トランプ政権は3月20日にも同様の措置をとっており、WTIを上昇させている。

米国の原油在庫は想定よりも下振れ　原油需要の根強さを示唆

また16日には米国の原油需要の根強さも示された。米エネルギー情報局（EIA）が発表した11日時点での原油在庫量（戦略備蓄除く）は1週間前比で51.5万バレルの増加。ブルームバーグがまとめた市場予想の94.5万バレル増を下回った。原油在庫の積み上がりが少なかったことは、需要が想定以上に強かったことを示唆する結果だ。

2025年の石油需要見通しの下方修正相次ぐ　原油価格下落圧力に根強さ

ただし2025年の世界の石油需要をめぐっては見通しの下方修正が相次いでいる。国際エネルギー機関（IEA）は15日に発表した4月月報で、2025年の石油需要の前年比での増加幅は日量73万バレルになるとの見通しを提示。3月月報での100万バレル強から大幅に引き下げられた。IEAは見通しの下方修正の理由として、「貿易面での対立の激化が経済見通しにマイナス影響を与えている」ことを挙げた。

また、石油輸出国機構（OPEC）が14日に発表した4月月報でも、2025年の石油需要は日量1億0505万バレルとされ、3月月報から日量15万バレル引き下げられた。さらに10日にはEIAも短期エネルギー見通し（STEO）の中で2025年の石油需要の見通しを引き下げており、原油市場での供給過多が原油価格を下押しするとの見方が浸透している。

原油価格は足元では反発したとはいえ、依然として安値水準であることに変わりはない。WTIは2日、トランプ氏が相互関税の内容を発表する前の取引では、一時、1バレル＝72.28ドルを記録。また、トランプ氏の就任前にあたる1月15日には80.77ドルをつけていた。足元の水準は相互関税発表前との比較では12.76％安、トランプ氏就任前との比較では21.93％安で、トランプ氏がもたらした原油価格への強い下落圧力は今後も続いていくことが想定されそうだ。