ドル円予想(10/29):FOMCと日銀会合にらみ、153.30突破なら154円が視野に
米FOMCと日銀会合を受けたドル円の見通し。短期的な変動拡大を警戒するも、底堅さ維持か。注目のチャート水準についてIG証券のアナリストが詳細解説。
要点
高市政権発足による早期利上げ観測の後退と実質金利のマイナス圏推移が円安要因に。今日以降のドル円は、米FOMCと日銀会合で瞬間的に上下する可能性がある。しかし、米利下げと日銀の利上げ見送りは織り込み済み。米中首脳会談での関係改善期待が米ドル高の材料となる可能性も考慮すれば、ドル円は底堅さを維持すると予想する。上昇の局面では10日と27日の市場で突破に失敗した153.30の攻防が焦点に。突破なら154.00が視野に入る。一方、下値は151.00の維持が注目される。
2つの円安要因
10月の外為市場は円安優勢で推移している。特に10月4日の自民党総裁選後と先週の高市内閣発足後に円安へ振れた。
円相場の動向:10月6日以降
ブルームバーグの為替データを基に作成 / 10月28日までの動向
高市首相はデマンドプル型のインフレを志向している。4日の会見では、現在のインフレをコストプッシュ型と認識していることを示唆した。日銀との協調姿勢を示す一方で「金融政策の責任は政府が負う」と発言しており、早期利上げには慎重な姿勢を取ると見られる。OIS市場では10月の日銀金融政策決定会合での利上げ見送りを織り込み済み。12月会合の利上げ確率も40%台に留まっており、年内利上げの観測が後退している。
円相場の反応と利上げ観測の後退は、市場参加者が高市政権の発足により日銀の利上げ判断に影響を与えることを織り込んでいることを示している。
筆者が注目しているもう一つの円安要因が実質金利である。名目金利から期待インフレ率を引いて計算される実質金利の動きを確認すると、未だマイナス圏にあることが分かる。
円安要因は他にも存在するが、筆者は現在、早期利上げ観測の後退とマイナス圏で推移している実質金利という2つの点に注目している。これらは、ドル円(USD/JPY)の下値を支える大きな要因になっていると考えられる。
日本のインフレ率と実質金利の動向:2000年以降
ブルームバーグのデータを基に作成 / 月次ベース
※国内のブレークイーブンインフレ率(BEI)はインフレ期待を反映していない可能性があるため、期待インフレ率にはコアCPIを使用
FOMCと日銀会合、短期の変動拡大を警戒
今日以降のドル円(USD/JPY)は、米連邦公開市場委員会(FOMC)と日銀金融政策決定会合で上下に振れる展開が予想される。
米FOMCでは0.25%の追加利下げが確実視されている。利下げは織り込み済みだが、量的引き締め(QT)の終了も決定すれば、「緩和的」と市場で捉えられ短期の米ドル売りが予想される。しかし、マレーシアで行われた貿易協議で米中の対立緩和の期待が高まっている。30日に予定されている米中首脳会談で関係改善が進めば、米ドル高の要因となろう。FOMC以降の米ドルは、瞬間的に上下に大きく振れる場面に直面する展開を想定しておきたい。
前述の通り、日銀金融政策決定会合では現行の政策維持の公算が大きい。よって市場参加者は、12月の利上げの可能性について、植田和男日銀総裁の会見からそのヒントを得ようとするだろう。
市場の期待が後退する中、植田総裁が12月利上げについて前向きな姿勢を示す場合は、投機的な円高を警戒したい。日銀会合前の米FOMCや米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の会見が米ドル安の要因となる場合は、ドル円の下落幅が拡大することが予想される。
しかし、前述の円安要因がドル円の下値を支えると筆者は考えている。ドル円の下落局面で米中首脳会談が米ドル買いの要因となれば、ドル円の急反発が予想される。一方、ドル円が底堅さを維持する局面では、上昇幅の拡大を想定したい。
いずれの展開となっても、目先の焦点は「高市トレード」の円安を2度止めた153.30レベルの突破となろう。
ドル円のチャート分析
153.30の突破と154.00のトライ
今日以降、ドル円(USD/JPY)の上昇局面では、10日と27日の市場で突破に失敗した153.30レベルの攻防に注目したい。レジスタンスラインに転換する兆しが見られる152.50レベルの上方ブレイクは、153.30をトライするサインと捉えたい。
ドル円が153.30を上方ブレイクすれば、27日のIG週間為替レポートで取り上げた週間予想レンジの上限154.00のトライが視野に入る。フィボナッチ・エクステンション100%の水準153.65の上方ブレイクは、154.00をトライするサインとなろう。
筆者の想定を超える上昇でドル円が154.00を上方ブレイクする場合は、27日のIG週間為替レポートで取り上げたフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準154.40レベルのトライを意識したい。
関連レポート(10月27日)
・ドル円 週間見通し(10/27~31週):予想レンジ151~154円、米FOMC・日銀会合・米中首脳会談に注目
上値の注目水準
・154.40:フィボナッチ・リトレースメント76.4%
・154.00:予想レンジの上限
・153.65:フィボナッチ・エクステンション100%
・153.30:レジスタンスライン
・152.50:レジスタンスラインに転換する可能性あり
151円の維持
一方、ドル円(USD/JPY)の下落局面では、27日のIG週間為替レポートで取り上げた週間予想レンジの下限151.00レベルの維持が焦点となろう。
今日の東京時間に28日の下落を止めた10日線と直近高安のフィボナッチ・リトレースメント38.2%戻し151.77レベルを下方ブレイクしている。21日から22日にかけて相場を支えた151.50レベルの攻防に注目したい。この水準の下方ブレイクは、151円台へ上昇している21日線のトライを想定したい。この移動平均線の下方ブレイクは、151.00をトライするサインとなろう。
筆者の想定を超える下落でドル円が150円台へ下落する場合は、サポート転換が確認された150.50レベル、そして日足の一目転換線が推移している150.00レベルのトライを意識したい。
下値の注目水準
・151.50:サポートライン
・151.08:21日線
・151.00:予想レンジの下限
・150.50:サポート転換の水準
・150.00:直下に一目基準線
ドル円の日足チャート:2025年4月以降
TradingView提供のチャート
ドル円の4時間足チャート:10月以降
TradingView提供のチャート
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