トヨタ自動車、株価転落 最高値から3割安 キオクシアと主役交代?
トヨタ自動車の株価の3カ月前の最高値からの下落が進んでいる。中東情勢悪化に伴う業績不振が要因で、半導体不足という課題もちらつく。
トヨタ自動車の株価の転落が止まらない。トヨタの株価の9日の終値は約1か月前の2026年3月期決算発表から5%安の水準で、同じ期間の日経平均株価の成績を下回る冴えない成績。約3か月前の最高値からは28%安にあたり、株価浮上のきっかけをつかめないでいる。トヨタは中東情勢の悪化が経営の重荷となる中、2027年3月期の大幅減益を見込んでおり、経営環境の厳しさが株価不振に直結している形だ。一方、トヨタはハイブリッド車などの電動車の販売は好調で、地力の強さを発揮している面もある。ただ、半導体の重要性を高める自動車の電動化は、人工知能(AI)ブームを背景とした半導体需要の急拡大と同時に起きており、自動車向け半導体の品薄が進む恐れも指摘され始めた。日本の株式市場ではトヨタの時価総額がメモリ半導体のキオクシアホールディングスに逆転される可能性も膨らんでいて、日本の製造業の主役交代という筋書きが、トヨタの株価への期待をますます後退させるきっかけになるとも考えられる。
トヨタの株価は3カ月前の最高値から28.25%安 反発の機会つかめず
トヨタの株価(7203)の9日の終値は前日比0.27%高の2830円。決算発表前日にあたる5月7日終値との比較では4.97%安となり、同じ期間の日経平均(N225)の4.11%高とは対照的な不振だ。9日終値は米国とイランの戦争が始まったばかりだった3月2日につけた最高値(3944円)との比較では28.25%安にあたる。日経平均はイラン和平への期待が高まった4月以降、上昇基調となり、6月3日には6万8402.13円の最高値をつけたが、トヨタの株価はこの間も下落が続き、反発の動きがみられない。10日午前の取引でも一時、2808.50円まで下落している。
2027年3月期の営業利益は20%減の見通し 中東情勢は6700億円の減益要因
トヨタの株価不振の要因は成長力の不足だ。トヨタの2026年1-3月期決算は総収入が前年同期比1.9%増の12兆5973億円、営業利益が49.0%減の5694億円という結果だった。また2027年3月期の業績見通しについては、総収入が前期比0.6%増の51兆円、営業利益は20.3%減の3兆円という数字を提示。ブルームバーグがまとめた事前予想では総収入53兆2000億円程度、営業利益4兆6000億円程度が見込まれていただけに、投資家の期待を裏切る内容だったといえる。
東崇徳経理本部長は決算説明会で2027年3月期の業績について、値上げやコスト削減などの努力を進めるものの、「中東情勢の影響による6700億円の減益要因を補うには至らない」と言及。中東情勢がもたらす悪影響の規模については、物流の混乱や3月中旬段階での資材価格が1年続くケースを想定して試算したといい、台数減少による影響が2700億円、資材価格の高騰による影響が4000億円だと説明した。
4月の販売台数は前年同月比3.7%減 電動車では好調を維持
実際、トヨタが5月28日に公表した4月の販売実績は不安を裏付ける内容だった。4月のグループ総販売台数は前年同月比3.7%減の90万2015台。トヨタが2027年3月期の目標として示した1118万台が前年比0.9%減にあたることを踏まえれば、低調なスタートになったといえる。トヨタ単体(レクサス含む)の地域別販売台数では、中東が33.66%減の3万1360台に留まっている。トヨタは2026年3月期のグループ総販売台数では、米国での高関税などの逆風を受けながらも、2.5%増の1128万3215台を確保していた。
一方、トヨタには得意とするハイブリッド車を含めた電動車の人気という追い風もある。4月の実績では、トヨタ単体の電動車の販売台数は前年同月比6.9%増の45万2533台となっており、世界全体での販売台数の53%を占めるに至っている。中東情勢の悪化に伴う原油価格の高止まりは世界的なガソリン価格の上昇を引き起こしており、電動車への注目を集める要因になっていそうだ。宮崎洋一CFOは決算会見で2026年3月期の販売増について「大半はハイブリッドが貢献している」と述べた。
AIブームで半導体不足の恐れ 時価総額でキオクシアと主役交代の可能性も
ただ、販売台数に占める電動車の存在感は半導体不足という課題の浮上も感じさせる。自動車産業では自動車の電動化に伴い電子機器の制御に不可欠な半導体の重要性が拡大。さらに自動運転支援などの先端機能の普及もやはり、半導体の需要を高める要因だ。半面、世界の半導体メーカーはAI向けの最先端半導体の生産に注力しており、半導体市場の需給バランスは混乱している。S&Pグローバルは4月に公表したレポートの中で、メモリ半導体メーカーがAI開発やサービス展開に用いられるHBM(高帯域幅メモリ)を重視する結果、全体としての半導体生産量が増える中でも、自動車向けのDRAMやNANDといったメモリ半導体は供給不足になると指摘している。
こうした中、日本の株式市場ではメモリ半導体の生産を手掛けるキオクシアの株価(285A)が急騰している。ブルームバーグによると、キオクシアの9日段階での時価総額は41兆7676億円で、2024年12月18日の上場当日の時価総額(8630億円)の48倍になっている。トヨタの時価総額は9日時点で44兆6998億円で、5日には両社の時価総額の差が2兆3000億円あまりに縮まる局面もあった。
トヨタの時価総額と純資産の比率を示す株価純資産倍率(PBR)は9日段階で0.92倍となっており、トヨタの成長性への期待が落ち込んでいることは明らか。PBRが30倍となっているキオクシアとの勢いの差が、日本の製造業の「顔」としての注目がトヨタからキオクシアに移るという筋書きを連想させれば、トヨタの株価への期待がさらに後退する恐れもありそうだ。
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