米国株、追い風続かず S&P500反発失速 トランプ関税は一転継続
S&P500は29日に反発したものの、朝方の上げ幅を縮める値動きだった。実体経済の想定以上の悪さを示す経済指標も重荷といえそうだ。

アメリカの株式市場への追い風は続かなかった。S&P500種株価指数の29日の終値は前日比0.40%高。朝方はドナルド・トランプ大統領の高関税政策に裁判所が差し止めを命じたことが好感されたものの、上昇幅が徐々に縮まっていく値動きだった。前日の決算発表が好感された半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の株価も前日の時間外取引ほどの上昇にはならず。さらにトランプ関税への差し止め命令は、控訴裁判所の判断で効力を失っており、高関税が当面は継続する見通しとなっている。株式市場のムードが明るくならない背景には、改めて米国の実体経済への不安が強まっていることがある。29日発表の2025年1-3月期GDP改定値では個人消費が下方修正され、失業保険関連統計も市場予想より悪い結果だった。30日発表の4月の個人消費支出(PCE)物価指数が上振れた場合には、S&P500の今後の見通しが悪くなる可能性もありそうだ。
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アメリカのS&P500は0.40%高 朝方の上げ幅を縮めていく値動き
S&P500(SPX)の29日の終値は5912.17。ブルームバーグによると、29日は前日終値比0.8%ほど高い水準で取引が始まったが、上げ幅は縮まっていき、正午ごろにはマイナス圏に沈む場面もあった。朝方の上昇は前日の取引時間終了後に、米国の国際貿易裁判所がトランプ氏の高関税の多くについて停止命令を出したと伝わったことや、エヌビディアの2025年2-4月期決算が好材料視されたことが要因だが、勢いは続かなかったことになる。


さらに朝方のS&P500の上昇のきっかけとなったトランプ氏の高関税に対する停止命令は早くも効力が失われた。トランプ政権からの控訴を受けた連邦巡回区控訴裁判所が29日、国際貿易裁判所の決定の一時停止を決めたためだ。トランプ関税をめぐる司法判断は混迷しており、投資家の楽観ムードに冷や水がかかった。
1-3月期GDP改定値で個人消費が下方修正 失業保険申請件数は想定以上の高さ
また、S&P500の失速の背景には、実体経済への不安が改めて浮上したこともある。29日の取引開始前に発表された1-3月期GDP改定値では、個人消費の伸び率が前期比年率1.2%とされ、速報値での1.8%から大きく低下した。一方では民間在庫の寄与度の上積みもあって、改定値での実質成長率はマイナス0.2%という速報値(マイナス0.3%)より良い結果だったものの、米国経済の脆さを感じさせている。

GDP改定値と同時刻に発表された週次の失業保険関連統計もやはり、実体経済の悪化を予感させた。18-24日週の新規失業保険申請件数は24.0万件で、ブルームバーグがまとめた市場予想の23.0万件を上回っている。

実体経済の悪さはS&P500を下支え? 4月PCE物価指数の結果次第で下落圧力にも
一方、こうした経済活動の弱さや雇用への不安は米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げへの期待を強める要因でもある。ブルームバーグによると、29日のニューヨーク債券市場での長期金利(10年物国債利回り)の終値は4.420%で、9日(4.380%)以来の低さとなった。長期金利の低下は株式の投資先としての魅力を相対的に高める効果があり、S&P500を下支えした可能性もありそうだ。
ただ、30日午前8時30分(日本時間30日午後9時30分)に発表される4月のPCE物価指数で物価上昇の根強さが感じられた場合には、FRBが利下げに動きにくくなるとの見方から、実体経済の想定以上の弱さが悪材料として意識されることもありえる。ブルームバーグがまとめた市場予想では、4月PCE物価指数の伸び率は総合指数が前年月比2.2%、食品とエネルギーを除いたコア指数が2.5%となる見通し。発表される結果が予想よりも上振れれれば、S&P500に下落圧力がかかる展開も考えられる。

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