米国株、中東懸念重荷 S&P500週次続落 エヌビディアには規制不安
S&P500は2週続落。中東懸念悪化が重荷だ。また米国の半導体輸出規制が米中対立の火種になる可能性も再燃しており、株価の不安要素となっている。

アメリカの株式市場が中東情勢悪化懸念で抑え込まれた。S&P500種株価指数の20日の終値は1週間前比で0.15%安。小幅ながら2週続落となり、最高値更新に向けた勢い不足を感じさせた。イスラエルによるイラン核施設への攻撃が火をつけた中東情勢悪化は、事態改善に向けた動きがみられず、投資家の警戒モードが続いている。一方、米中関係をめぐっては20日、米国が中国に対する半導体輸出規制の厳格化を検討していると報じられ、半導体大手NVIDIA(エヌビディア)などの株価が下落。今後の値動きへの不安が出ている。S&P500の見通しをめぐっては、中東情勢の進展が最大の焦点。さらに27日に発表される5月の個人消費支出(PCE)物価指数で米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ見通しがどう変化するかもS&P500の値動きを左右する可能性がありそうだ。
アメリカのS&P500は週次続落 最高値が近づき勢い鈍る
S&P500(SPX)の休日明け20日の終値は前営業日比では0.22%安の5967.84。3営業日続落で、週次でのマイナスに沈んだ。週次での続落はドナルド・トランプ大統領が相互関税を発表した3月31日-4月4日週までの2週続落以来、約2か月半ぶりとなる。S&P500はトランプ氏が4月9日に相互関税を一部停止してから上昇基調が続いてきたが、2月19日につけた最高値(6144.15)に迫る水準となり、勢いが鈍った形だ。

イランはイスラエルによる攻撃停止を要求 米国のイラン攻撃には時間的な猶予
S&P500の不安要素となっているのは中東情勢の悪化だ。13日のイスラエルによるイランの核施設攻撃後、戦局はイスラエルに有利に傾いているもよう。しかし20日にスイスで行われたイランと、イギリス、ドイツ、フランスとの外相協議は結論に至らなかった。欧米メディアによると、イランのアッバス・アラグチ外相は会談後、記者団に対して「イランは外交的解決を再び考慮する用意がある。ただしイランに対する攻撃が止み、攻撃側が犯した罪の責任を問われる場合にだ」と述べた。
イスラエルはイランの核開発の阻止を目指しており、イランが地下に建設した核施設の破壊には米国の地下貫通弾(バンカーバスター)が必要だとされる。しかし米国がイラン攻撃に参加すれば、イランから米国への報復攻撃が中東情勢をさらに悪化させるおそれが大きい。トランプ氏は19日にイランに対する攻撃を行うかどうかを2週間以内に判断するとの態度を表明し、イランに対する圧力を強めた。
VIX指数は20日は低下 20の大台は上回り、投資家の警戒モードは継続
シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)は20日の終値で20.62となり、前日よりも6.99%低くなった。トランプ氏がイラン攻撃を決断していないことは中東情勢改善へのわずかな希望を抱かせるが、外交的解決の道は険しいとみられ、VIX指数は4日連続で20の大台を上回っている。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど今後の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを示す。

米国は半導体関連製品の輸出規制厳格化を検討か エヌビディアが1.12%安に
一方、20日の株式市場では米中対立再燃の可能性も意識された。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は20日、関係者の話として、台湾や韓国の半導体企業が中国の工場に製造装置などを輸出する際の米国政府からの認可取得を厳格化することを検討していると報じた。WSJは、米中は9、10日のロンドンでの協議で新たな輸出規制を行わないことで合意していたとし、規制厳格化が実施されれば中国側が「ロンドン合意に対する裏切り」ととらえる可能性があると指摘している。中国はロンドンでの協議前、米国の人工知能(AI)向け半導体の輸出規制などに不満を表明し、中国産のレアアースや磁石などの輸出が滞る背景となっていた。
こうした中、20日の株式市場ではエヌビディアの株価(NVDA)が前営業日比1.12%安となったほか、半導体製造装置のアプライド・マテリアルズの株価(AMAT)も1.96%安、クアルコム(QCOM)も1.50%安となった。またS&P500構成銘柄ではないものの英半導体大手アーム・ホールディングス(ARM)の株価も0.69%安となっている。半導体株の値動きを週次でみると、エヌビディアが4週続伸の1.32%高となるなど、上昇基調は崩れていないが、米中対立再燃の可能性は投資家心理を冷やす結果となった。


米国のイラン攻撃やホルムズ海峡封鎖が焦点 PCE物価もFRBの利下げ見通しを左右
S&P500の今後の見通しをめぐっては引き続き、中東情勢の進展が焦点となる。トランプ氏からの情報発信で米国のイラン攻撃の可能性が高まったり、石油貿易の重要ルートであるホルムズ海峡がイランにより封鎖されるとの懸念が高まったりした場合には、S&P500に強い下落圧力がかかることも想定される。
また、27日に発表される5月のPCE物価指数もFRBの利下げの確度を左右する重要経済指標として注目されそうだ。ブルームバーグによると、20日の金融市場では9月の連邦公開市場委員会(FOMC)後の政策金利の水準は4.124%になると見込まれており、9月までには現状の4.25-4.50%(中間値4.375%)から0.25%幅の利下げが行われると見込まれている形。12月のFOMC後までにはさらに0.25%幅の利下げが行われるとみられている。5月PCE物価指数の伸び率が想定よりも高くなれば、利上げ見通しの後退がS&P500の下押し圧力となる一方、想定よりも低い伸び率となれば株式市場で安心材料としてとらえられ、S&P500を下支えする可能性がありそうだ。

本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。

こんなに豊富?IG証券のCFD銘柄は17,000以上
外国為替、日本株・外国株、株価指数、債券先物、商品(エネルギー、農産物、貴金属)など多彩な資産クラスをFX取引、CFD、バイナリーオプション、ノックアウト・オプションで提供
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。