日経平均株価 来週の見通し(7/21週):3万8,500~4万450円予想 参院選後の予想シナリオ
来週の日経平均株価の展望は?参院選の結果を受けた3つの予想シナリオについてIG証券のアナリストが分かりやすく解説。

要点
・7月第3週の日本株は上昇したが、政局不安が重石となった
・来週の日経平均株価は参議院選挙の結果に左右されるだろう
・来週の日経平均株価、3つのシナリオについて
・日本225の週間予想レンジは3万8,500~4万450円
7月第3週の日本株は上昇するも政局不安が重石に
7月第3週の日経平均株価は上昇して終えた。しかし、節目の4万円が上値抵抗線となり上昇率は前週比0.63%にとどまった。東証株価指数(TOPIX)も3週ぶりに上昇した。しかし上昇率は前週比0.4%で限定的だった。
日本株 週間変動率:4月以降

ブルームバーグのデータで作成
S&P500種株価指数を対象とするオプション取引の変動率をもとに算出されるVIX指数は16ポイント台と、低い水準にある。対照的に日経平均ボラティリティ・インデックス(日経VI)は18日、一時25ポイント台まで上昇する局面が見られた。VIX指数と対照的な動きを見せている日経VIの動きは、以下で詳述する参議院選挙後の不透明感を意識した動きと言える。
現在のところ、日経VIは4月のトランプ米政権が相互関税を発表した時のような急変動は見られない。しかし参院選の結果次第では、日本株のボラティリティが一時的に拡大する可能性がある。
日経VIとVIX指数のチャート:日足 年初来

ブルームバーグのデータで作成
来週の日経平均、選挙結果を受けた3つの予想シナリオ
シナリオ①:自公過半数割れかつ大敗で下落拡大
各報道機関の情勢調査によれば、7月第3週に入り「自公過半数割れの可能性」を伝える報道が一気に増えた。従って、来週の日経平均株価の予想シナリオも自公が改選50議席以下となり、参議院でも過半数割れの状況に陥ることを前提にしている。
参議院選挙で自公合わせて改選議席数が50を下回る場合は、政局不安が一気に高まろう。その不安の強さは議席数で決まるだろう。自公合わせて改選議席が40議席台前半、または40議席を下回る場合、石破内閣の総辞職は避けられないだろう。辞意表明のタイミングと日米通商交渉を考慮すると、自民党総裁選挙は早くても来月前半以降となることが予想される。なお自民党は18日、石破茂総裁(首相)が21日午後2時から党本部で記者会見を開く予定と明らかにした。参院選の結果次第では首相辞任を表明する可能性がある。
来週以降、自民党が次期総裁選に早くも動き出せば、減税と社会保険料の引き下げを主張する野党との協調を迫られることからも、財政拡大路線派の高市早苗氏などの候補者が新総裁に選出される可能性を市場は意識しよう。3年後の2028年には衆議院と参議院のダブル選挙となる可能性がある(衆議院には解散があるためダブル選挙をならない可能性もある)。財政規律を重んじる石破内閣の不人気を考慮すると、自民党は次回の選挙で是が非でも国民の支持を取り戻すために財政拡大路線へ舵を切る可能性がある。
国内市場が自公合わせて40議席前後の「大敗」を完全に織り込んでいるとは思えない。財政拡大路線の可能性も強く意識されよう。ゆえにシナリオ①となれば、来週の国内債券市場では金利に上昇の圧力が高まることが予想される。そのスピード次第では、日経平均株価の下落幅が拡大することを警戒したい。
シナリオ②:自公過半数割れで下落、鹿児島選挙区次第では下落拡大も
自公の過半数割れは避けられない情勢にある。連休明けの日経平均株価は下落スタートを警戒したい。しかし、18日の日経平均株価は一時4万円を回復する場面が見られた。冒頭で述べたとおり週次では上昇した。過半数割れについて市場がすでに織り込んでいることを示唆する動きである。改選議席数が40後半となる場合は、シナリオ①のような下落幅拡大の可能性は低下すると予想する。
しかし、シナリオ②でも日経平均株価の下落幅が拡大する可能性がある。鍵を握るのは、保守王国の鹿児島選挙区(1人区)の結果と石破政権を支える森山自民党幹事長の去就である。同選挙区では無所属新人の尾辻朋実候補が優勢で、自民党の園田修光候補が劣勢と見られている。鹿児島選挙区は森山氏のお膝元である。従って鹿児島選挙区で自民党が敗れる場合は、森山氏の責任を問う声が強まろう。
森山氏は石破政権を支える一方で、財政規律を重んじる立憲民主党の安住淳衆院予算委員長と良好な関係にあるとの見方がある。参議院選挙前に見られた大連立構想の観測報道は「森山-安住ライン」に基づいたものだろう。だが、鹿児島選挙区で自民敗北となればこのラインが崩れることが予想される。そして与野党協調の財政拡大路線の機運が高まるだろう。鹿児島選挙区で自民敗北の場合は、シナリオ①と同じく金利の上昇幅拡大に伴う日経平均株価の下落幅拡大を警戒したい。
シナリオ③:自公過半数割れで下落、その後反発
連休明けの日経平均株価は下落でスタートしても、その動きは短期で終息する可能性がある。そう考える理由の1つが、上述したとおり自公過半数割れを市場がすでに織り込んでいることである。
また、財政拡大は景気刺激策としての側面がある。昨年度の国の税収は75兆円余りと、5年連続で過去最高を更新した状況は、財政拡大に対する市場の懸念を和らげる要因になり得る。
さらに7月以降、国内の債券市場では自公苦戦の思惑先行で長期と超長期ゾーンの金利が上昇してきた。従って、選挙後は一度国債が買い戻される可能性がある。この場合、金利の上昇が抑制され日本株の下支え要因となろう。
来週の国内株式市場で財政拡大のメリットが意識され、金利の上昇も抑制される場合、日経平均株価は「急落→急反発」のシナリオもあり得る。このケースでは、4万円前半の攻防に注目したい。
米国株は強気相場を維持できるか?テスラとアルファベット決算に注目
7月第3週の米株式市場でS&P500とナスダック総合指数が最高値を更新した。米国株の強気地合いは日本株を下支えした。シナリオ③で述べた日経平均株価の上昇は、米国株の強気相場に依存しよう。
今週の米国株も企業決算にらみの展開が予想される。23日の引け後に電気自動車大手のテスラ(TSLA)と検索大手グーグルを傘下に持つアルファベット(GOOGL)が4-6月期(第2四半期)決算を発表する。7-9月期(第3四半期)の業績見通しでアナリスト予想を上回れば、大型株中心の強気相場が続く可能性が高まろう。
売上高と1株利益(EPS)のアナリスト予想

出所:ブルームバーグがまとめたアナリスト予想 / 7月18日時点
日本225の週間見通しとテクニカル分析
週間予想レンジの下限:3万8,500円
日足チャートで日経平均株価のトレンドを確認すると、5月22日の安値と6月30日高値のフィボナッチ・リトレースメント38.2%戻し3万9,326円がサポートラインとして意識されている。しかし、20日の参議院選挙で自公が過半数割れかつ大敗となれば、財政拡大路線を警戒した金利の上昇が予想される。「悪い金利の上昇」は日本株の重石となろう。連休明けの市場で日経平均株価の下落幅が拡大する展開を警戒したい(シナリオ①)。
日経平均株価の下落局面では3万9,000円割れと、18日時点で3万8,500円台まで上昇している50日線のトライを想定したい。すぐ下の水準3万8,478円は、4月7日の安値と6月30日高値のフィボナッチ・リトレースメント23.6%戻しにあたる。2つのテクニカルラインが上下に展開している3万8,500円を週間予想レンジの下限と想定したい。
日経平均株価のチャート:日足 3月以降

出所:TradingView
日経平均株価を原資産とする株価指数CFD「日本225」は、海の日で祝日となる21日も取引ができる。連休明けの日経平均株価の動向を予想する上で重要な指標となろう。
週間予想レンジの下限3万8,500円を目指すサインとして、以下にまとめたサポートラインの攻防に注目したい。特に、3万9,100円台では2つのフィボナッチ・リトレースメントのラインが密集している。先週17日の市場で日本225は3万9,126円で反発した経緯もある(4時間足、黒矢印を参照)。3万9,100円台を重要なサポート水準と想定したい。
日本225が3万9,000円を完全に下抜ける場合は、2つのフィボナッチ・リトレースメントが重なる3万8,660円の攻防が焦点に浮上しよう。このラインの下方ブレイクは、予想レンジの下限3万8,500円への下落を示唆するサインとして警戒したい。
なお、筆者の想定を超える株安となり、日本225が予想レンジの下限3万8,500円を一気に下方ブレイクする場合は、3万8,000円の維持が焦点に浮上するだろう。この水準は日本225の6月23日の安値水準であり、かつ日経平均株価のフィボナッチ・リトレースメント76.4%戻しに当たる(上の日足チャートを参照)。
サポートライン
・3万9,100円:38.2%戻し、61.8%戻し、17日の安値水準(4時間足)
・3万8,660円:半値戻し、76.4%戻し(4時間足)
・3万8,500円:予想レンジの下限(4時間足)
・3万8,000円:6/23安値(4時間足)、フィボナッチ・リトレースメント76.4%(日足)
週間予想レンジ上限:4万450円
来週、日本225の上昇局面では4万円前半の攻防が焦点となろう(シナリオ③)。以下に注目のレジスタンスラインをまとめた。
週間予想レンジの上限は、直近高安のフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準4万450円を想定したい。注目すべきは7月4日以降、レジスタンスラインとして相場の上昇を止めている4万115円である。このラインを上方ブレイクする場合は、100円刻みで新たな上値の水準を探りたい。4万300円台へしっかりと上昇すれば、4万450円のトライが視野に入ろう。
レジスタンスライン
・4万450円:76.4%戻し、予想レンジの上限(4時間足)
・4万300円:レジスタンスライン
・4万200円:レジスタンスライン
・4万115円:レジスタンスライン(4時間足)
・4万円:心理的節目の水準
日本225株価指数のチャート:4時間足 5月20日以降

出所:IGチャート
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