ドル円週間見通し(11/24~28):154-158円予想、円高警戒も下値は限定的か、米PPIに注目
ドル円の週間見通し。今週の注目材料と重要チャート水準についてIG証券のアナリストが解説。
今週の見通しと注目材料
- 今週の予想レンジは154.00~158.00
- 調整の円高継続を警戒も下値は限定的か。米ドル高と日銀の利上げ不透明感がドル円の下支え要因に
- 注目材料は米経済指標。25日に発表予定の9月PPIが米金利と利下げ観測の変動要因に。同じく発表予定の9月小売売上高と週間の新規失業保険申請件数も材料視される可能性がある
12月利下げ観測再燃も米ドル高継続
片山さつき財務相の為替に関する発言の頻度が増している。先週18日、足元の為替について非常に一方的で、急激な動きも見られて「憂慮している」と述べた。また、21日の閣議後の記者会見でも、過度な変動や無秩序な動きに対し適切な対応を取ると述べた。為替介入の可能性にも言及した。
21日の外為市場では介入警戒による円買いを受け、ドル円(USD/JPY)は前日の高値157.89から156.20まで下落した。今週も円安の局面では、けん制発言を想定したい。為替介入の可能性を意識させる強い表現でけん制すれば、突発的な円高の要因となろう。しかし、ドル円の下落幅は限定的と予想する。そう考える理由の一つが、米ドルの動向にある。
21日のOIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)市場では、12月の利下げ確率が70%台へ跳ね上がり、来年1月の利下げ確率と逆転した。前日までの利下げ確率は40%台だった。米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が、近い将来の利下げについて言及したことが材料視された。
米利下げ確率の推移:12月 / 来年1月
ブルームバーグのOIS市場データで作成 / 11月21日時点
注目は米ドルの反応だ。本来であれば、利下げ期待の高まりは米ドル安の要因である。しかし、21日の外為市場で米ドルは、強弱まちまちの展開となった。利下げ期待の高まりで米金利が低下しても米ドル安が限定的となった動きは、米ドルの地合いの強さを示唆した。
米ドルの動向 対G10通貨 :11月21日
ブルームバーグの為替データで作成
米ドルのトレンドを示す指数(DXY)は200日線を突破した後、8月1日の高値水準100.25レベルで高止まりしている(下のチャート、緑矢印を参照)。現在の米ドル高トレンドの強さを示唆する動きである。
ドル指数の日足チャート:今年3月以降
TradingView提供のチャート
9月PPI、米金利と米ドルの変動要因に
今週、米ドルを左右する材料として注目したいのが経済指標だ。特に、25日発表予定の9月生産者物価指数(PPI)が材料視される可能性がある。
10月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で、多くの参加者がインフレリスクを警戒していることが判明した。9月のPPIがインフレの粘着性を示唆すれば、12月の利下げ期待は再び後退することが予想される。21日の外為市場では、利下げ期待が高まっても米ドル安の反応は限定的だった。ゆえに利下げ期待が再び後退すれば、米ドル高が予想される。
一方、9月PPIが予想外に低下する場合は、米金利の低下と12月利下げ期待を高める要因となろう。だが、21日と同じく米ドル安の反応が限定的ならば、市場参加者に地合いの強さを印象付けるだろう。米ドル高が続けば、ドル円(USD/JPY)は後述する上値水準の攻防に注目したい。
米生産者物価指数(PPI)の動向:直近1年間
ブルームバーグのデータで作成 / 赤の棒グラフとドット:9月予想
日銀利上げに不透明感、円高は限定的か
ドル円(USD/JPY)の下値が限定的と予想するもう一つの理由が、日銀の利上げ不透明感である。
先週18日に高市早苗首相と植田和男日銀総裁が初めて会談した。高市首相から金融政策への要請や要望は「特になかった」という(植田総裁)。また、先週は小枝淳子審議委員と増一行審議委員から利上げについての前向きな発言が聞かれた。しかし、OIS市場では12月の利上げ確率が20%台へ低下している。一方、来年1月の利上げ確率は50%台へ上昇している。
市場は、次回の利上げが年明けにずれ込むと予想している。しかし、米景気と対中関係で国内経済の先行き懸念が強まれば、植田総裁が注視する国内の持続的な賃上げに不透明感が強まるだろう。現時点での1月利上げの確率が50%台にあり、市場も見極め切れていない。利上げが確実とは言えない状況にあることを考えるならば、今週円高へ振れる局面が見られても、その動きは限定的となることが予想される。
日銀 利上げ確率の推移:12月 / 来年1月
ブルームバーグのOIS市場データで作成 / 11月21日時点
ドル円の週間見通しとテクニカル分析
週間見通し
今週のドル円(USD/JPY)は、下値水準の見極めが焦点の一つとなろう。今週、円高の要因として注目したいのが、為替介入を示唆する強い円安けん制発言と日米の株安だ。ドル円の下落局面では、以下にまとめた下値水準の攻防に注目したい。
下限:154.00
目先の焦点は155円の維持となろう。まずは、4時間足チャートのフィボナッチ・リトレースメント38.2%と半値戻し攻防に注目したい。155.60付近で推移している10日線の下方ブレイクは、155.00をトライするサインとなろう。この水準はサポート転換の可能性がある。
ドル円が154円台へ下落する場合は、同じくサポート転換の可能性がある154.50レベルの攻防を意識したい。直下の154.47付近には21日線が上昇している。154.50とともにドル円を下支えする可能性がある。
調整の円高と米ドル安が重なる場合は、ドル円の下落拡大を警戒したい。ドル円が21日線をも下方ブレイクする場合は、154.00まで下落する可能性が出てくる。この水準は10月29日の安値と11月20日高値の61.8%戻しにあたる(日足チャート参照)。23.6%戻し156.39レベルは、日足ローソク足の実体ベースで21日の下落相場を止めた経緯がある。節目水準の154.00と重なる61.8%戻しもサポートラインとして意識される可能性がある。154.00を今週の下限と予想する。
今週の下値水準
・156.25:38.2%戻し(4時間足)
・155.75:半値戻し(4時間足)
・155.60:10日線(日足)
・155.00:サポート転換の可能性あり(4時間足、日足)
・154.50:サポート転換の可能性あり(4時間足)、直下に21日線(日足)
・154.00:今週の下限(予想)、61.8%戻し(日足)
上限:158.00
4時間足のストキャスティクスRSIは売られ過ぎの水準にある。今週は9月生産者物価指数(PPI)の他、同月の小売売上高と週間の新規失業保険申請件数も発表される予定にある。いずれの経済指標も米ドル買いの要因となる場合、ドル円(USD/JPY)は以下にまとめた上値水準の攻防に注目したい。
注目は、先週の高値157.89レベルの再トライとなろう。この水準はフィボナッチ・エクステンション100%にあたり、20日の市場で見事にドル円の上昇を止めた(日足チャート参照)。
157.89レベルをトライするサインとして、157.00と157.50の攻防に注目したい(4時間足チャート参照)。いずれの水準もレジスタンスラインに転換する可能性がある。ドル円が157.89を突破する場合は、158.00をトライするサインとなろう。この水準を今週の上限と予想する。
想定を超える上昇でドル円が158円台へしっかりと上昇する場合は、159.00を視野に上昇拡大を想定したい。21日の終値156.40レベルから2円上の水準158.40レベルの突破は、159.00をトライするサインの一つとなろう。円安進行の局面では、介入警戒感による突発的な円高を警戒したい。
今週の上値水準
・158.40:レジスタンスライン
・158.00:今週の上限(予想)
・157.89:11月20日高値
・157.50:レジスタンス転換の可能性あり
・157.00:レジスタンス転換の可能性あり
ドル円の日足チャート:10月以降
TradingView提供のチャート
ドル円の4時間足チャート:11月以降
TradingView提供のチャート
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