アドバンテスト、株価乱高下 業績見通し強気 割高感は異例の水準
アドバンテストの株価は最高値から11%安の水準。強気な業績見通しでも割高感は鮮明で、最高値更新のハードルは高い。
半導体検査装置のアドバンテストの株価が乱高下している。10日午前の終値は前週末比3%超の上昇ながら、10月31日につけた最高値からは11%安。アメリカの株式市場で人工知能(AI)ブームの継続性への不安が強まったことが株価に影を落としている。アドバンテストは28日に発表した2025年7-9月期の業績が市場予想を大きく超え、株価が20%超の急騰をみせていただけに、投資家の期待が膨らみすぎていた側面もありそうだ。一方、アドバンテストは業績見通しにあくまでも強気で、ダグラス・ラフィーバCEOは2027年3月期までの中期経営計画について目標範囲の上限での着地に言及している。ただ、アドバンテストの株価は急騰による割高感が鮮明であることに変わりはなく、最高値更新の難易度は上がっていそうだ。
アドバンテストの株価は最高値から11%安 7-9月期の好決算発表後の勢い失速
アドバンテストの株価(6857)は10日午前の終値で前週末比3.16%高の2万0590円。10月31日につけた最高値(2万3135円)との比較では11.00%安だ。米国の株式市場では巨額のAI関連投資を続ける大手ハイテク企業の利益が圧迫されることへの懸念などを背景に、NVIDIA(エヌビディア)などの半導体株が大きく下落しており、日本の株式市場でのAI関連株の代表格であるアドバンテストにも不安が広がっている。
アドバンテストの株価が最高値から転落した背景には、10月28日に行った7-9月期決算発表後、投資家の期待が急激に膨らんでいたという事情がある。アドバンテストの7-9月期決算は、総収入が前年同期比38.0%増の2629億円、営業利益が70.6%増の1084億円だった。ブルームバーグがまとめた直前の市場予想は、総収入が2386億円、営業利益が949億円。発表された結果はいずれも予想を1割以上も上回る好決算で、翌29日の株価は前日比22.08%高となり、さらに2日後には最高値に到達した。
アドバンテストの予想PERは一時62.2倍に 異例の高水準
こうしたアドバンテストの株価の値動きは期待先行とみることができる。ブルームバーグによると、アドバンテストの株価の水準と今後12か月の予想1株当たり利益(EPS)から算出される株価収益率は、最高値をつけた31日の終値段階で62.2倍まで上昇。AIブームが本格化した2023年以降の平均値(36.6倍)を大きく上回り、日経平均株価が34年ぶりの最高値更新を果たして株式市場が沸き立った2024年2月中旬から3月上旬にかけて以外では見られなかった水準だ。アドバンテストの予想株価収益率は11月10日の株価でも53倍程度で、引き続き高水準だとみることができる。
アドバンテストは業績見通しに強気 中期経営計画は目標範囲の上限で着地か
一方、アドバンテストの経営陣は業績見通しにあくまでも強気だ。アドバンテストが示した2026年3月通期の業績見通しでは、総収入は前期比21.8%増の9500億円、営業利益は63.9%増の3740億円へと上方修正された。ブルームバーグがまとめた市場予想の総収入8800億円程度、営業利益3200億円程度という水準を超えている。さらに2027年3月期までの3年間の中期経営計画の目標値についても、総収入と利益の両面で上方修正された。
ラフィーバ氏は28日の決算説明会で、中期経営計画の目標値について「レンジの上限寄りになると想定している」と言及し、AI関連の半導体需要の強さを繰り返し強調した。ラフィーバ氏は、アドバンテストが過去2年間で生産能力を3倍近くに拡大させたと述べたうえで、今後についても「同じぐらいのレベルでの生産能力拡大を再び行わなければならないと見込まれるだろう」とした。
株価の割高感は依然として鮮明 最高値更新へのハードルに高さ
ただ、こうした強気の業績見通しをもってしても、アドバンテストの割高感は異例の水準だ。アドバンテストの上方修正後の中期経営計画の目標値では、2025年3月期から2027年3月期の1株当たり利益の平均値は284-341円とされた。ラフィーバ氏の期待通り、平均値がレンジの上限の341円に落ち着けば、2027年3月期の1株当たり利益は426円に達することも想定される。とはいえ、予想株価収益率が足元の53倍程度のままであった場合、想定される株価は2万3000円程度で、31日の最高値と同水準にとどまる。ラフィーバ氏は総収入の成長実現のためには研究開発費の積み増しが必要だとし、営業利益を圧迫する要因であることを認めている。
アドバンテストの株価をめぐっては足元の円安傾向が追い風になる可能性や、AIブーム継続への不安が逆風になる可能性など、不確定要素も多い。しかし株価の急騰が割高感を強めていることは確かといえ、最高値更新に向けたハードルは高いといえそうだ。
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